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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十七章 迫る危機
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迷いない引き金

―城門前 昼―

 緊張感漂う城門前、目が眩みそうなくらいの強い光が僕らを襲う。これからのことを考えると本当に気分が重いのに、この暑さでますます気分が落ちていく。


(どうして、こんな時に限って寝坊なんてしちゃったんだろう? 揃いも揃ってなんて……こんなことってあるのか?)


「皆起きるの遅かったけど、なんで?」


 ゴンザレスが、意気揚々と話しかけてきた。


「お前……起きてたのか?」

「うん、まぁ」

「何故、起こそうと思わなかった?」


 僕がそう聞くと、ゴンザレスは目を見開いた。


「え~マジか、お前。じゃあ、いいや。起こさなかった理由? 起こせとか言われてないし、知らんしって感じだし。大事な日とか俺聞いてないし、今日はそんな日なのかと思ったぜ」


 確かにそうだ。このことを僕はゴンザレスに言っていないし、起こす理由は特にないだろう。でも、昼まで寝る日なんてどこの世界にも国にもなさそうだが。


「……そういえばそうだな。ごめん、この気持ちを誰にぶつけるべきなのか分からないんだ」

「いやいや、ぶつけようとしてくんなよ。怖いわ」

「慊人様がご到着です!」


 息を切らした使用人の声が響くと同時に城門が開く。周囲には多くの国民達や記者達がいた。あちらこちらの撮影機から、目が痛くなるほどの光が起こされる。


「巽様ー! ちょっとお話を伺いたいのですが! 十二時に何故港にいなかったんですかー!?」


 何も考えてなさそうな記者の男の声がした。その他にも同じような質問がいくつも飛んでくる。


(うるさいなぁ……帰ればいいのに)


 小さくため息を吐いた。その時だ、その騒めきを一気に切り裂く銃声が響いた。静まり返ったのも束の間、すぐに大きな混乱が起こった。


「な、何!?」

「怪我人の確認を!」


 僕には分かっていた。こんなことをする人なんて、一人くらいしかいない。


「その必要はないでー!」


 すると、記者や国民達がいる仕切りの向こう側から一人の男が銃を持ちながら、人の波を押しのけるように現れた。銃口が天を仰いでいる。


「あの方は……!」

「やっぱり慊人か……」

「慊人!?」


 隣のゴンザレスが、身を乗り出す。


「こっちも暑いのぉ~、余はクタクタじゃ~! ひさしぶりじゃのぉ、巽」


 坊主頭で洋服を着た慊人が、周囲の視線を浴びながら僕の所へやってくる。そして、天を仰いでいた銃口をゆっくりと僕へと向けていく。


「ひさしぶり……」

「この引き金を引いたら、巽はどうなるんかのぉ?」

「普通にしてたら死ぬよ」

「やっぱり、そうじゃろうのぉ」


 慊人が城門を越えて庭へと入る。その瞬間、ゆっくりと城門が閉まっていく。閉まっていく音で自我を取り戻したのか、記者達の持つ撮影機からの音が合奏のように聞こえ始める。騒めきもそれに便乗するかのように大きくなっていく。

 そして、城門が閉まると同時に慊人は目の前に来た。隣にいるゴンザレスや、周囲の人間など気にもとめずに。


「どうして、銃口を僕に向けているの?」

「お前の運を測るためじゃ、悪く思うなよ」


 額に銃口がつけられる。ひんやりとした感覚が伝わってくる。


「慊人様! ご冗談は――」

「余は冗談が大嫌いじゃ。いつだって本気なんじゃ!」


 周囲の人間が彼の動きをとめようと魔法を使おうとしたのも間に合わず、ゴンザレスが僕を押し飛ばそうとするのも間に合わなかった。


「じゃあの」


 瞬間、引き金が一切の迷いなく引かれた。

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