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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十六章 何度私を忘れても
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報恩謝徳

―ゴンザレス 宿屋 夜―

 俺は、宿屋の畳と木のいい匂いがする広い桜の間に降り立った。


「あ、ゴンザレスさん。すっかり瞬間移動がお得意ですね」


 急に現れた俺に驚く素振りも見せず、小鳥はお茶を湯のみで飲んでいた。


「まぁな、出来ねーことがあるとイライラすんだよ」

「少し前まではとんでもない所に飛んでいってましたし、かなりの成長ですよ」


 小鳥は湯のみを置き、嬉しそうに俺の顔を見て微笑んだ。子供の成長を喜ぶ母親のようだ。


「それは言わない約束だろ!」

「そんな約束してないですよ」

「いやしてないけどさ……冗談的なアレなんだって! マジでくんなよ!」


 たまに、小鳥には冗談が通じないことがある。真面目だからだろう。


「はぁ……」


 理解出来なかったのか、小鳥は苦笑いを浮かべながら小さく息を吐いた。


「……んなことはいいんだよ。俺がここに来た理由分かるか?」


 とりあえず、俺は座った。


「心当たりが多過ぎますが……どれが起こったんでしょうか?」


 小鳥は、俺を見つめる。


「実体を持った悪霊が巽にキスを……で、多分だがそれを見て琉歌が傷付いたんだろう。ちょうど俺が稽古しようと思った時に偶然、な」

「これが最後の食い止める機会……巽様のご家族が誰も死なずに……」


(最後の機会って……どうしてこうなるまで何も出来なかったんだ?)


「なぁ、別にお前を責める訳じゃねぇんだが……どうして――」

「言ってるじゃないですか。繰り返されるこの世界でも起こることは、それなりに変化しています。それに、ここまで大胆に露骨に私自身が命を狙われるようになるのは初めてです。屍となった忍者の皆さんに命を狙われてしまうのは……流石に厳しいです。私を殺さない程度の攻撃……何か企んでいるようです。ですから、いつまでもここにいてもいいものかと、それに睦月様も探さなくてはいけません。生きていることが分かったんです。しかし、私が上手く出来なかったのも事実。ここまで来てしまった……巽様を本当は今すぐにでも助けに向かいたいのです。ですが、忍者達の本拠地に私が乗り込むのは自殺行為です。今の私にはどうしても出来ない……」


 小鳥は、言葉の最後に唇を強く噛み締めた。


「そうネガネガすんなよ。それに俺だって悪ぃんだから。城を観察しまくってるけど、気配はない。でも、万が一ってこともある。直属の人もあの有様だし、確認も取れねぇ。それに、お前には夏の虫になって欲しくないからな。他人には、殺されることがないこの俺が代わりに全部やってやる」


 今までのことを思い返す。迷惑ばっかりこいつにはかけた。だけどその度に助けてくれた、手を差し伸べてくれた。昔からそういう運命だったのかもしれない。迷惑をかけられると決まっているのかもしれない、小鳥は。


「今度は俺の番だ。だから、お前は……何も心配しなくていい。だが、俺は未熟だ。だから教えてくれ、お前が知っている起こる予定のことを。出来ることなら、いや出来なくても全部やってやる。それに俺がやることで、もしかしたら――」

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