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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十二章 下を向いて前に進もう
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穢れで汚れた手

―実技室 夜中―

 強く、強く、ただ強くひたすらに体に力を込める。僕が持つ全ての力を体の一部分に集中させていく、そんな感じ。

 ここに来て魔法の鍛錬をするのはひさしぶりだ。何かと忙しくてこの時間にまで起きている気力もなかったし、余裕もなかった。今日やっと、眠たくもなく気力も余裕もあった。要するに気分の問題だ。


「はぁ……! ううぐっ……!」


 ゆっくりと集まってきた力は、僕の体を依り代に部屋全体へと広がっていく。この部屋は例えどんな優れた魔法であっても、どんなに禁忌の魔法であっても、ここで使った魔法は全て無効化される。そう、世界全てを滅ぼすほどの神秘的で魅力的な凶悪な魔法だったとしても――――。


「駄目だ……」


 僕の中の全ての力がこの一瞬で消えた。部屋全てを呑み込むことも出来ない、未熟なこの力をまたも証明されてしまった気分だ。

 それでも前やった時よりかは成長はしたと感じた。前は、僕の位置から歩幅一歩分くらいで完全に終わってしまったから。

 しかし、この程度とはと自分でも情けなくなる。


「こんなのじゃ駄目なんだ……こんなのじゃ……」


 僕は立っていられずその場に崩れ落ちた。自分の体が自分のものではないみたいな、フワフワと浮いた気持ちの悪い感覚。それは、ここで鍛錬を行う度になる。力が大きくなっているのか、僕の体が弱くなっているのか、出来れば前者であって欲しいものだ。

 

「もし僕が上手く出来なかったら……これで全てを消せない……」


 ゴンザレスが途中で亡くなるとか、十六夜の用意周到な悪意ある企みにはめられて逃れられなかったりしたら――歴史に不名誉を残す。永遠に消えない証拠となって嘲笑われ続ける。それをなくすために、乗り切ることが一番なのだが、もしも上手く出来なかったら恐らく世の中で最も危険視されている魔法を使う。ほとんどの人が忘れてしまった、許されざるこの魔法を。

 この魔法だけは、記憶の始まりから覚えていた。記憶以前の時に教えて貰ったのか偶然知ってしまったのか、不思議な所ではある。他のことは大体失ってしまっていたのに。


(神様からのお告げかな……なんて、神様なんて大した名前を貰った普通の人間達だけど)


 遥かの昔には、この世界を創った創造主がいたらしい。その者が人間の中から何人かを選んで天へと呼んだ。そして、その者を神とした。だからただの人間達なのに、どうして皆は神様とか言って信仰したり崇めたりするのか、正直理解不能である。

 神の使いもまた、この世界で言う愛玩動物みたいなものだと僕は勝手に思っている。ホヨが怒りそうだから言わないが。


「全て最初からなかったことにして下さい……そんな願いも神様達は叶えられないのに、ただ僕らを見下しているようなものなのに……」


 今まで抱えていた思いが全て口から溢れ出る。

 幸せになりたい、それすらも僕は許されない。周りの人達を可能な限り巻き込みたくない、それすらも出来ない。


「でも僕が僕自身の力でどうにかすれば……きっと……」


 僕はゆっくりと立ち上がる。


「美月が目覚めた時にちゃんと平穏な未来が訪れるようにするから……頑張るから……もう少しだけ犠牲になってよ」


 自身の手を見る、すると穢れで汚れていた。

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