僕は僕
―ゴンザレスの部屋 夜―
「どうしたー? 急に俺の部屋になんか来ちゃってさ~。もしかして一人じゃ寂しいから一緒に寝たいとかか? アッハッハ!」
ゴンザレスは、ベットに寝転がりながら手を叩き大笑いをしながら言った。
「間違えてもお前とは寝ない。第一、寂しくなんてない」
「俺分かるんだよねぇ、寂しい奴の寂しい感じ? もうお前は見るからに寂しい! 上手く言えねぇんだけどさぁ」
「余計なお世話だ。話を戻すぞ」
「はいはい……で何?」
興味がなくなったようで、ゴンザレスは露骨に元気がなくなった。
「今日の夜中に、お前の大事な仲間の女性を解放する」
「ホントか!?」
ゴンザレスは、ベットから飛び起きる。
「嘘じゃない。あの空気の悪い場所に国を救いたい者を捕えておく理由なんてないからね。しかし、彼女は傍から見れば不審者であり要注意人物だ。牢獄から失踪したとなれば、それは武者達の失態になる。血眼になって探されると思った方がいい」
「それをあいつには言ったのか?」
僕は無言で首を振った。あの空間で長々と話をするわけにはいかない。
「……はぁ。なんでこうなる? どうして真実を言っても誰も信じようとはしないんだ? 国民性か?」
ゴンザレスは僕を見つめる。ゴンザレスの言う真実、それはきっと”僕が城に現れた化け物”であるということだろう。
「お前はどこまで知っている?」
「……へぇ、否定したりしねぇんだ」
「しないよ。あの摩訶不思議な開かず扉から現れた者達だ。しかも一人はかなり成長した、この世界にいる人物。僕をずっと昔から見て来ているはずだから……さ。しかも、彼女は僕も救いたいって言ってるんでしょ? だから、もう知ってたんだろうなって、だから今更否定して誤魔化したりなんてしないよ。諦める時は潔く諦めるから」
僕は、とりあえずゴンザレスに笑いかけた。
「俺はお前がよく分からなくなってきたよ」
「僕なのに?」
僕がそう言うと、ゴンザレスは目を吊り上げる。
「違う。全く同じ顔を持った全く違う人間だ。考えた方も性格も捉え方も違う」
「そうかな……僕が頼んでいた間、僕がいなかった間、お前は僕としてしっかりやってくれた。それに誰も気付いてなかったから、こうして平和なんでしょ。全く同じなんだよ、そこに内面とか必要ない。お前が、外側から見た僕を演じるだけで皆こうも騙されているんだから」
ゴンザレスから怒りの気が漂ってくるのを感じる。それほど、僕と一緒の扱いをされるのが嫌なんだろう。
(影武者にはすぐになるって言ったくせに……まぁあれは、若干煽りに乗ってしまっただけなんだろうけどさ)
「まぁ明日になれば大騒ぎになってるだろうから、その時を楽しみに待ってなよ」
僕はそうゴンザレスに言い捨てて、部屋の扉を開いた。すると、目の前には本の山があった。正確には、本を持っている何者かがゴンザレスの部屋の前にいたということだ。
「あれ? あれ? 扉がない……外したのかな? うぅ~真っ暗~ゴンザレスさん~頼まれてた本を持って来たんですけど~前が……」
この声には聞き覚えがあった。自信のない震えたその声の持ち主は、僕の知る限り一人しかいない。顔が完全に隠れていて見えないが、目の前にいるのは興津大臣だ。彼女は、フラフラと前に進んでくる。
「え……ちょっ!」
と僕が叫んだ頃には遅かった。本の山が僕めがけて降りかかって来たのだ。




