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僕は僕の影武者  作者: みなみ 陽
十章 この国を
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責任感

―書斎 昼―

 僕は、静かなこの書斎で小さな文字が羅列している文書を読んでいた。ここが、本来の僕の仕事部屋だ。外の音も聞こえないし、一番集中出来る。自室か書斎、気分によって場所を変えるのが僕の唯一の楽しみだ。


(少し前までは小さい文字が見えなくて、眼鏡を使ってたんだけど……視力上がったかな?)


 皆が一つの紙になるべく抑えようとするので、大体文書で使われる文字は小さい。米粒のような大きさだ。その為、昔は非常に苦労した。目もすぐに疲れた。だが、そんな文句を言う勇気は僕にはなく、眼鏡だけで耐え凌いだ。

 しかし、今日になってひさしぶりに書斎で文書を見ると、なんとスラスラと読むことが出来た。文字を見た瞬間、いつものうっとした感覚はなく、眼鏡をかけることを目が訴えることもなかった。

 今、僕読んでいる文書は例の化け物についての資料だ。数時間前に興津大臣から半泣きで渡された。どうして泣いているのかと聞くと、文書の作成を薬師寺大臣に教えて貰ったのだが、その際にかなり怒られたのだそうだ。僕は同情した。彼女は鬼そのものだ、恐ろしい。


(まぁ……薬師寺大臣に教えて貰ったからまとめ方は綺麗だな。読みやすい)


 この文書によると、最近は化け物の目撃情報はないらしい。そして、十六夜綴の姿も目撃されていない。十六夜綴の潜伏している可能性のある場所を見つける為、動き出したらしい。

 でも、要するに何も分かってないということなのではないかと、この文書を読む限り僕はそう感じた。


(これだけ何もわかっていなかったら暗殺も出来ないな……彼らは彼らの独自の方法で情報を見つけ出すみたいだけど、もしこれで彼らの方が先に足取りを掴んだら、諜報局はお役御免な気もする)


 あくまで、彼らは国外の情報を奪うなど外国での活動と僕の命令での仕事が基本だ。その国内の場合が諜報局なのに、国内の情報すらも掌握出来ないのであれば、かなりの問題がある。


「はぁ……頼むよ。色々と」


 思わず声が漏れた。どこかの機関が問題を起こせば、その責任を問われるのは僕なのだ。任命責任とかどうたらこうたらと言われる。朝比奈元大臣の時がそうだった。

 確かに僕には見る目がないし、任命式を行うのは僕だ。だけど、僕は任命するだけで選出する訳ではない。選出したのは、朝比奈家の者達だ。僕も責めるのなら、そちらも対等に責めて欲しいとも思う。でも、これを声に出して言えば僕の責任感まで問われ始めるだろう。だから、僕は耐える。


「ここに印を押して……よしっ、これを資料室に置きに行こう。次の仕事は外だからね……急ごう」


 僕は、扉を開けた。

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