ペット(愛玩動物)
―自室 昼―
僕はいつもの通り食事をするフリをして、全部魔法で燃やし尽くしていた。見るだけで甘いと分かるふわふわの洋菓子が静かに勢い良く形を崩し、魚が真っ黒な炭へと姿を変える。
これが可能である理由は、食事中は基本的に部屋に人がいないからだ。しかし、食物を思いっ切り無駄にする行為は、正直どうにかしないといけない問題だ。僕が食べないこと前提で、上手く出来ないだろうか。
(食事をするのは生物……愛玩動物を飼うとかか?)
僕は、城で愛玩動物を飼っている人々が何人もいるのは知っているが、どの生物までがその扱いが出来るのかが分からない。飼えば、それはもう愛玩動物なのだろうか。
周囲で知る限りでは、狼を飼う人もれば、わざわざ海外から連れて来て頭が三つある犬を飼う人もいる。やたら大きな猫を飼う人もいれば、虎を飼ったり……挙げればキリがないが、とにかく多種多様である。
(飼うにしても、人間と全く同じ物を食べれる存在で忠実な動物がいいな……これからのことも考えると。そういえば、昔、お婆様がそんな生物を飼ってたような……でも、いまいち思い出せない。図書館になら事典があるから分かるかもしれないな。行ってみるか)
僕は、ようやく綺麗に食事を燃やし尽くした。もう慣れたものだ。後で、朝出されたステーキの残りを食べるとしよう。
僕にとって唯一の救いは、朝食と夕食では高確率で肉が出ることだった。昼食は肉は出ることもあるが、ほとんどない。だから、朝残しておいた肉を昼に食べるのだ。
こんな発見が出来たのは、普通の食事に僕の体が合わなくなってからである。出来れば、こんな発見は本当にしたくなかった。
「ご馳走様でした」
謝罪の意味も込めて、僕は綺麗さっぱりなくなった皿に手を合わせた。後は、しばらくしたら小鳥が部屋に皿を回収しに来るだろう。
しかし、今回は小鳥が来るのを待つ暇はない。短い昼休みの時間の間に、愛玩動物について調べるつもりだからだ。
僕は、机にあった白い小さな紙切れと鉛筆を手に取り、部屋の扉を開けた。そして、廊下に出て扉を閉め、小さな紙切れに小鳥に向けて「食べた」と言葉を記した。その紙切れ魔法で軽く張りつけた。剥がすことは簡単に出来るだろう。
本来はこんなことに使うような物ではないのだが、応用として使う人も多い。
(変に心配するからな……まぁ仕方ないか。こうしておけば安心だな)
僕は、廊下を駆け抜けた。
***
―図書館 昼―
図書館の扉を開けると、本独特の香りがした。受付の所には、ウトウトと何度も首が落ちそうになっているお婆さんがいる。
僕は彼女を起こさないように、ゆっくりと忍び足で進んだ。
(生物……生物ってどこら辺にあるんだろう?)
こんなことは、受付のあのお婆さんに聞けばいいのだろうが、起こすのが申し訳なくて聞けない。とりあえず、奥の方からしらみ潰し急いで探す他ないだろう。これだけ広い図書館にある莫大な量の本、頭が痛くなるが弱音を吐いている時間が勿体ない。
小走りで奥の本棚へと向った。すると、そこには真面目な表情で分厚い本を立ち読みしているゴンザレスがいた。