Ⅲ
僕は風呂場で目を覚ました
上半身裸で手には包丁が握られていた
そして、包丁を見た瞬間昨日の割腹ショーを思い出し、気持ちが悪くなった
「…僕は悪魔だ」
言葉にするとなんだかスッキリしていて、とても面白かった
もはや、僕は人間ではない
それでも、僕がおかしくなって消えるまでの時間は穏やかに過ごしたい
だから、いつも通り制服に着替えて学校に向かった
「リョウ、おはよう」
通学路の途中、雪羽が僕の背中を叩いた
「ああ、おはよう雪羽」
僕は適当に返した
「アレ?今日元気無い?」
「雪羽の元気な声が頭に響いてすっごく辛いかな」
「なにそれ、ひっどい」
僕の冗談が効いたらしく雪羽は呆れたように微笑んだ
「ねぇ、ホントに辛いのかな?」
雪羽はじっと僕の顔を覗きこんだ
「大丈夫だよ」
僕は大丈夫と言いながら昨日のことを思い出していた
だが、雪羽は心配そうに僕のことを心配してくれている。だが、そんな心遣いが無性に腹が立った
「ねえ、ほんとに……」
「うるさいんだよ!」
僕の口から生まれて初めてかもしれない怒鳴り声が出た。だけど、駄目だと思えば思うほどそれが溢れてくる
「僕のことを知らないくせに…僕のことを心配してんじゃねぇよ!」
僕はそれだけ言って堪えながら学校に向かった。本当はこんなこと言ってはいけないのだ。
だが、これで終わりだ
しかし、昼休み
「リョウ」
雪羽は今朝と変わらないように僕に声を掛けてきた
「お昼行かない?」
「行かない」
お腹もすいていないし
「とりあえず、行かない?」
「行かない」
僕はため息を吐きながら立ち上がった
「行くの?」
「帰る」
僕は適当なこと言って教室を出た
だが、雪羽は追ってくる
うっわ怖い
だから、僕は割とマジで走ってみたが雪羽もはやいはやい
「待ってよー」
息絶え絶えな僕を追いかけて来る雪羽は最早ホラーだ
顔涼しそうだなぁ。
「もう、やだーーー!」
叫びながら脱出口を探す
そして、運のいいことに換気用に開いている窓を発見
僕は開け放たれた窓から飛び降りた
三階くらいなら余裕で降りれる……と信じたい
僕は膝を曲げ、両手を着いて着地姿勢を取る
予想以上に重たい衝撃で膝の皿が割れたが、数秒程で回復した
全然余裕で着地できた
雪羽も驚いているだろう
どうせ、追ってこないだろうし
と、思いきや雪羽も身を乗り出し、なんの躊躇いもなく飛び降りた
そして、満面の笑みで差し出してきた
「お昼いこ?」
「うん、いく」
僕はポッキリと折れた