5.戦闘・実力
お待たせしました。戦闘シーンを書いたことがなかったので、時間が掛かってしまいました
「喰らいやがれぇぇぇええええええ!」
開始早々、先に仕掛けたのはクロノだった
スタートした瞬間、駆け出して刀を振り抜き、素早く斬りつける。
しかし、振り抜く途中で攻撃は横に弾かれ、そのまま突き飛ばされた
「ガハッ!!」
当てる瞬間に、タイミング合わせてカウンター喰らわせやがった!
「ふっふ~ん。ただ、突っ込むだけで倒せると思ったのかい?」
「横幅の広い寸胴な体型に身に余る両刃の斧だから遅いと思ったのによっ!」
立ち上がりHPを確認すると二割減っていた。攻撃の瞬間、赤いラインが見えてなかったらもっと削られてた。危機察知様々だよ
「動けるデブを舐めないほうがいいィィィ!」
そう言い、走るというより弾丸ような速さで接近し、頭目掛けて振り下ろした
確かに体型の割に速い!けど、それじゃあ
「簡単に受け止められる!」
その場で踏ん張り、刃と刃がかち合う
「その体勢で僕に競り勝つ気かい?」
相手は体重を掛ければ、押しきれる。こっちは受け止めたまま、逃げることもできない
スズキーンはジワジワと体重を掛けて斧を押し込んでいく
「・・・スキル使ってそんなもんかよ!」
「ハッ?」
その一言を皮切りに拮抗していた力関係を無理矢理クロノが斧を弾き、崩した
「ぐぬぬ!や、やるじゃないか。しかしハッタリはいけないなぁ」
弾かれた勢いのまま、スズキーンは少し、距離を空けた
「嘘じゃねぇ。使えばすぐにエフェクトが見えていたはずだ」
「ば、ばかな!何も使ってないのにスキル発動している僕が・・・」
そこには一切の余裕もなく、ただ口をパクパクさせていた
「基本性能の違いだろ?それだけは埋められない差ってヤツだ!」
VRMMO用器機の特性上・・・意識から肉体情報まで丸ごとこっちに持ってくから。ある意味、隠しスペック!ただハイスペック過ぎるとある程度のレベルまでダルさがあって困るけど・・・
「僕が・・・この僕が負けるわけ・・・ないんだぁぁぁ!!」
スズキーンはその場で斧を振り上げ、そのまま降り下ろした瞬間、発光し、そのまま直線の衝撃波となり襲ってきた
「ヤバイッ!」
気付いた時には、飲み込まれていた
「ハハハッ。見たか!これが僕の“アーツ”ショックウェーブだぁ」
ショックウェーブを使った際に生じた土煙で何も見えなっているのに一人勝ち誇るスズキーン
「さっきのは、避けられなかっただろう? まだ、生きてるのは分かってるんだ。返事くらいしなよクロノ氏」
パンッ!
返事の代わりに乾いた音が響く
「っ痛!少し頬が切れた。今のは銃弾・・・二つ武器を持っていたんだクロノ氏!」
ダメージを気にするよりもまだ、戦う意志があることに歓喜を現す
「うるせぇ。何、喜んでやがる!それに“さっきの”何だよ?」
刀で土煙を振り払い、中から姿を現すクロノ
「“さっきの”?アーツのことかい?これはアーツ道場で自ら想像し、創造する技さ。初めだけは運営から技が武器に一つだけある。ただ、僕らβテスターは特典として最初から鎧、金、アーツがβ時使用していたモノが任意で引き継ぎできるから新規プレイヤーより早くから強いんだよ。ちなみに僕はアーツと金しか引き継いでないよ」
てっきり元テスターの特典って武器や鎧、金くらいだと思ってたけどアーツと鎧と金だけか・・・
アーツを使えば倒せる!ただ、戦闘中にアーツを使えるようにするだけの時間を稼がないとな
「おい、スズキーン!今からアーツ使えるようにするから邪魔するな」
「分かったよ。なんて言うと思っているのかぁぁぁ」
スズキーンは激昂し弾丸ような速さでクロノの前に立ち、振り下ろした
「弱ぇよ」
振り下ろされた一撃は片手で持った刀に阻まれる
「な、何をした!」
「・・・受け止めただけだろ?驚くなよ」
クロノは振り向きもせず、受け止めたまましきりに指先を動かしていた
「よそ見をしたまま、失礼じゃないか!」
「うるせぇ。打ち込みたきゃいくらでも打ち込んで来い!全て防いでやる」
「ラアアアアァァァッ・・・!クソッ!、クソッ!、クソォォッ」
スズキーンはやけくそ気味に斧を振り回し叩き付けるが宣言通り、受け止め、いなし続けて全てを防いだ
「・・・終わりだ」
クロノの体が一瞬、激しく発光し消えた
「ほ、本当にアーツを登録するなんて・・・」
スズキーンの顔が驚愕に染まると同時に青ざめる
「いちいち、驚いてるとすぐに敗けるぜ?スキル発動、討刃、疾走」
体から黒い靄と赤い靄が立ち昇る
スズキーンはエフェクトが見えた瞬間、身構えて守りの態勢に入ったがそれはたったの一撃により徒労に終わる
「・・・“アーツ”一閃!」
クロノは、刀に青いエフェクトが灯った瞬間、逆手に持ち替え、左下から右上に斬り上げ、守り態勢を紙同然に斬り崩し、その一撃に耐えかねてスズキーンは武器を手離し、斧は遥か後方に弾き飛ばされてしまう
「なっ!・・・」
スズキーンは戦闘中だと言うのに弾き飛ばされた武器を反射的に目で追ってしまい、懐はガラ空き。
その決定的な隙を見逃すわけもなくクロノからの続けざまの連撃を為す術もなく受ける羽目になった。
逆袈裟斬り、袈裟斬り、逆風、兜割り、胴、逆胴、右斬り上げ。
スズキーンの鎧は斜めに斬りつけられたところを起点に、交差し、上下左右に切り刻まれて全体に罅が入り、斬られた中心部には小さな穴が空いている
「・・・ガフッ、グハ!・・・ハァ、ハァ・・・」
スズキーンは息も絶え絶え、その場に手を着き、両膝を着き、クロノを睨みつける
「どうだ?倒せると思っていた相手に負かされる気分は?」
膝を着いたままのスズキーンをバカにするように見下ろし、おもむろに銃を取り出した
「最悪だよ!・・・最悪に決まっているじゃないか!!」
「それは上々。最後に何か聞きたいことはあるか?」
クロノは銃をスズキーンの額にあてがい、撃鉄を起こし、引き金に指を添えた
「「するなら早くして」って言うのが本音だけど・・・二点だけ聞きたいことがある。なぜ、あのとき僕の“アーツ”で死ななかった?あれを受けて確実に死んでいたはずだ。もう一つ、僕もVRMMOプレイヤーの端くれだ!明らかに手加減されていること、実力的に見ても君は新規プレイヤーにしては強すぎることはよく分かる。だから、教えてくれないか?君は何者だ!」
スズキーンの表情は銃を突き付けられているのが分かった上で必死に命乞いをしてるように見える
「まず、一つ目から。確かにお前のアーツは今の俺にとって即死級の威力だというのは事実だ。けど、即死級のダメージでも生き残るスキルがあれば問題外になるってこと。それ以上は言わなくても分かるよな?」
「分かる。これ以上はマナー違反だから聞かない」
プレイヤーに対して、どのようなスキルを持っているかと聞くのは一般的にマナー違反、禁忌とされている
「二つ目、俺が何者であるか。
元オーガ・バーサス・オンラインプレイヤー、所属ギルド・鬼の宴、No.4“黒鬼”
キャラ名 黒利。現在、マテリアライズ・ワールド・オンラインプレイヤー、キャラ名 クロノ」
「そ、そういうことだったのか・・・君はあの“鬼の巣”出身だったのか!道理で敵わないわけだ。そして僕は鬼になる前の君にも敵わなかった・・・完敗だ」
「久しぶりのPvP楽しかった・・・礼を言う。これで終いだ“アーツ”ファースト・ブレット」
クロノは宣言ともに引き金を引き、幕を下ろした
【WIN:クロノ、LOSE:スズキーン。DUEL終了、DUELシステムを解除します】
システムアナウンスの後、PvP用の空間はすぐさまに消滅した