27.毒を喰らわば皿まで
仕事と教習所通いで疲れて中々、書けませんでした
昨日も西でうろつきながらセキアントとニルキャタを刈りまくったけど銃に変化なし。赤蟻の甲殻と赤毛虫の毛ばっかり手に入ってエミルが喜ぶだけじゃねぇか!っていう俺の不満とは関係なく奴らは突然に現れた
「「ニンゲン旨イ・・・ニンゲン喰ウ、腹満タス・・・」」
地面にポッカリと開いた歪みから黒と紫の入り交じった煙のような邪気を洩らしてそれは足を、腰を、胴を、腕を形作って最後に二本の角を生やした頭を形成して食欲に溺れた声を発する
「全く、空気の読めない鬼がぶった斬るぞてめぇら!八つ当たりだ」
鞘から抜刀し、黒と赤の霧が身体から感情に呼応するように激しく立ち昇る
「「・・・ニク!・・・ニク!!!」」
「うるせぇ!欲しけりゃ、一発でもまともに当ててみやがれ」
大鬼たちが左右からそれぞれにタイミングをずらして襲い掛かってくる。左の鬼は近付くなり腰を落とし、突っ張りを繰り出し、右は前蹴りを繰り出すがそれらを半歩身体をずらすことでぎりぎり避け、即、懐に入り右の鬼を“一閃”で斬り上げ、振り返り様に左の鬼に弾丸を一発ついでに蹴り込み、“斬波”の青い斬撃が横一文字に飛び、首を傷つける。
スキル使用時のアーツ一発でHPが一割弱しか削れてない・・・火力重視のステ振りだけど大鬼は耐性持ちと思っていいのかもしれない。または部位を破壊したら弱まったりするパターンか。通常モンスターでも二、三割は削れるのにろくに削れてねぇ。
わき腹、胸、肩、首は一回は斬りつけたけど大して削れてない。首も同じくらいということは頭・・・より角を潰せば弱体化を狙えるかもしれない。
「揺らぎ・・・幻想・・・現の径」
フッと息を吐き、力を抜いて左右に身体を揺らし、徐々に距離を開け円を描き、二人、三人とブレ始めて右の大鬼を複数の幻影が囲む。
「ニク・・・?ニク・・・ニク!!!」
困惑してるってことは眼で追えないと思っていい。なら、試すか
「氣術・武器強化、アーツ・二刃壊」
白刃が獲物を見つけたように接近し、飛び上がり弧を描くように半円上に斬り上げ、落下速度を利用してもう一撃を渾身の想いで振り下ろし角は斬り落とされた
≪物理耐性、魔法耐性が低下しました≫
「ウガ?ウガガガガ!!!キエタ、ナイ、ナイ!!!」
大鬼はあった角を探すようにしきりに擦ってないことを確かめている。
大鬼の様子を観察しつつ、自身のHPと大鬼のHPを見比べて俺は危険領域ぎりぎりので片角大鬼は残り・・・七割強であるのを確認してHP、MPポーションを取りだして一気に煽り、首目掛けてアーツ・首刈を放つ。すると、少しずつしか削れなかったHPが目に見えて減っていきイエローゾーンに突入する
「ダメージ的には四割くらいは削ったか」
角が片方ないだけで通常モンスターよりも物理耐性が低いなんて弱体化しすぎだろ・・・火力自体は下がってないから脳筋モンスター的にはバランスいいけど。
「・・・このまま、問題がなけれりゃあ確実に殺れる!アーツ・断絶」
いつものように獰猛な笑みを作って、切っ先の峰を指の間で挟んで力いっぱいに引いて離すとその勢いで刃が股から頭に縦筋が走り、大鬼は真っ二つに斬り裂かれて光に消えた
「戦略上、相手の弱点を突くのはセオリーなんだが・・・分かると面白くねぇ。もっともっと俺にスリルを味あわせろよ雑魚どもっ!!!」
大見得を切る言葉に反応したのか?クロノを囲むようにいくつも歪みが生じてどんどん大鬼が形成されていく
「・・・ちょっ!出過ぎじゃねぇ?マジで周りが大鬼しかいねぇよ・・・」
言った途端に出てくる辺りは仕組まれてる気がするけど・・・まぁ、いいか
某所にて
「スリルが足りない?じゃあ私が黒利くんにプレゼントしよう・・・なぁに君ならこれくらいは造作もないだろう?」
2時間後
「この時間は誰もいない・・・・・・と思いたかったけど」
時間的にはすでに日をちょっと跨いでいるのでマトモな人は布団の中でぐっすりなんだが・・・
「クロノ君、おかえりなさいです」
「おっかえり、ク~君」
「潜り過ぎだぜクロノ」
「アンタの狩りでモンスターが絶滅危惧種に指定されたらどうするのよ!」
「私が言いたいことが分かるなら早く実行なさい」
「おお~同志よ!俺っちはとっても会いたかったぜ♪」
廃人の中にマトモな人間はいないのか?
「出迎えありがと。ゲームで絶滅危惧種に指定されるわけねぇし、コウに会いたくなかったし、素材はすぐに入れるから待っといてくれ・・・つーか、何でこんな集まり良いんだよ・・・誰かの誕生日?」
クロノは素材を箱に入れて、うんざりした顔で問いかける
「違いますよ」
「ちっがうよ~」
「違うぜ」
こいつら、この件を続ける気か?全員、返事する的な流れ
「違うわよバッカ!」
「もちろん、違うわ」
「クロやん、俺っち寂しい。コウ、泣いちゃうぞ☆」
「用件を言え!コウはすぐに視界から消えてくれ」
「「「「「・・・」」」」」
「そんな、いけず~。クロやんと俺っちの仲じゃん☆」
コウってウザイなぁ~あとで殴るか
「んで?」
面倒なやり取りはやめろと言わんばかりに剣呑な目つきで全員を睨み付ける
「そんな怖い顔しなくても言うわよ。皆でアンタが苦しむ様を見に集まったの」
アオヒメが代表して質問に答える
「え、なんだって?」
聞き違いか?気のせいだな
「分かんなかった?もう一度言うわよ“皆でアンタが苦しむ様を見に集まったの”」
どうやら俺の聞き違いじゃなかったらしい。大方、企画の立案兼発案者はエミルなんだろうけど
「趣味悪いぞエミル」
「あら、私の性格を理解できるなら予想の範疇でしょ。それとも、貴方と私はそんなことも分からないくらい浅い仲なのかしら?」
「ハイハイ、参りました。人が苦しみながら喰う様を見て何が面白いんだか・・・」
「苦悶の表情は嗜虐心がそそられるから私は嬉しいわ。さぁ、早く喰らいなさい」
「このドS性悪女が」
ヤケクソ気味にテーブルに着き、アイテムからモノを取り出すと小さなざわめきが生まれる
「ひっ・・・この物体はなんですか?」
ミズキは手で眼を隠して指の隙間からチラチラと見てそれを指し示す
「イベント2限定のドロップアイテム“鬼の肉”これを一定数喰わないと鬼に成る条件を満たせないんだよ」
見た目はマンガ肉そのものなんだけど表面は生々しい赤銅色の光沢を放ち、断面は青紫色という何とも気持ち悪くて食欲湧かないだけなら良かったけど・・・ピクピク動くから尚のこと嫌になるけど喰うか
「いただきます・・・・・・不味!?」
一口、食べると腐った魚の腑と雑巾の混ざった臭いが口の中いっぱいに広がり、食感は牛の内臓みたいな弾力、味に至ってはザリガニが腐ったような味がして吐き捨てたくなるのを我慢して機械のように咀嚼し、腹に収める
「口に合わないみたいね」
「・・・合うわけねぇだろ!無駄に良い笑顔しやがってお前に喰わせてやろうか」
「イベント限定ドロップはその参加者以外には無用の長物。食べただけで状態異常が起きる毒物なんてお断りするわ」
冗談で言ったんだけど真顔で否定するなよ
「嘘だよ、嘘。不味いってデメリットより喰って状態異常耐性が手に入るメリットがあるから喰うんだ。だからやらねぇよ」
「そう。それはそれとして今、どんな状態?」
視線をHPバーの上に向けると
「鈍重、魅了、麻痺」
喰った瞬間に状態異常のアイコン点いたからな
「アイコン三つ・・・昔のイベントと中身は変わらないみたいね」
「あとは肉をどれくらい喰えばいいのか分からないってとこも同じだろうな・・・」
昔のイベントでも必要個数に既定が無くて多く喰わないといけない奴は耐性が手に入る代わりに終わりの見えない地獄を見るんだ・・・昔の俺みたいに
「まぁ、頑張りなさい」
「言われなくても喰う。じゃねぇと殺せない奴がいるからな」
そのためなら不味い肉だろうが少し面倒な大鬼だろうがいくらでも殺して喰らってやる!ただそれだけだ




