25.北の森
とりあえず気の向くままにきたの森に突入してみたけど、第一都市だとモンスターが獣系中心なのに第二都市の場合は虫系が出てくるのか?
殺虫剤とかねぇかな~鬱陶しい
「特にこのリトルビーとホワイトスパイダーの大群」
リトルビーは赤と黄色のストライプが特徴的な小さい蜂でそれが複数集まると脚の長いビックビーになって、細い針が太くなって面倒くさいし、速くなるし、ホワイトスパイダーは糸で絡み取って追い討ち掛けるように子グモ生むわで嫌がせかよ!内心、文句を言いつつもクロノはアーツで牽制しながら、大群から逃げの一択で森の奥へと突き進む
一時間後、イベント発生のために森をうろついてるが・・・起きない!
「そろそろ逃げるのに疲れてきた。イベント起きろ!!!」
振り返ると、モンスターの大群。この状況でほかのプレイヤーが巻き込まれた場合はMPKが成立する。その時は許せ、不可抗力だ。ただ、この森のモンスターが今の俺よりも強いことが悪いんだ!諦めかけた時、目の前に転移陣に飲み込まれる形で続きが始まる
【イベントが発生しました】
唐突なシステムアナウンスから目の前がイベントモードに切り替わる
イベントに変わっても森は森・・・まだ何もないってことはこのまま突き進めか。若干、行き当たりばったりな感じを覚えながらまっすぐ進んで草むらで身体が勝手にしゃがみこむ。そこから覗き見ると・・・
3m程の巨体に赤銅色の皮膚、二本の角を生やした大鬼たちが人を股裂きして殺して食べてたり、引っ掴んで頭からボリボリ食べたり、踏み潰したりして遊んでたりする世にも恐ろしい光景が広がっていた。ゲームとはいえここまで鉄の匂いと何とも言えない異臭が鼻腔を襲うのは困るな・・・それよりも“片腕の鬼”は大きい石に腰掛けている奴か。右腕無いし、大鬼と違って身体が細いっていうか引き締まってるし、体色が真っ黒で違うから分かりやすいな
「・・・我が眷属よ、それは旨かろうによく覚えておけ!食すモノの味だ。それよりも・・・草むらに潜む人間を引きずり出せ!」
草むらに隠れてる人間・・・・・・って俺か!
やや遅い状況理解をする頃には草むらの中から両腕を大鬼に掴まれ、黒鬼の前に突き出される
「人間、我らが何に見ゆる?」
黒鬼はぐっと顔を近づけ、探るように俺の眼を見て頷き、すぐに納得したように離れた
「鬼。んでアンタは俺の腕を掴んでる奴らよりは上位種の鬼・・・知性も力もある鬼人だな」
「いかにも鬼人であるが先のことを見ておったなら人間は我らに喰われる餌であることも承知しておろう。しかし、何故にここに踏み入れた?」
あっさり認めたな。俺を喰うから別に教えてもいい的な流れだ
「何だよ、ここには普通は入れないみたいな言い方しやがって結界でも張ってたのか?」
「カッカッカ!是だ。この領域は何人も踏み入れぬように我が力を用いて張っておったのだがそれをいとも容易くすり抜けて我らの食事を平然と覗き見る可笑しき人間・・・・我からの問いに答えよ、何者だ?」
黒鬼は笑い声を上げて愉しそうに話し始め、それが終わると冷たく殺気の籠った視線を向ける
「“力を渇望し魔族に魂を対価に魔を信仰し、人を棄てた人間”」
確か、ディーマンの基本設定だったな
「“魔”とは・・・異形の者、人ならぬ力を持つ者の総称であるがそのような者の一括りに我らをまとめるなど人とは勝手な生き物よ。我らの元は人間であるというのに」
「だとしても喰ってたらただの・・・・!!!」
突然の痛みに目線を下げると黒腕が身体を貫き、口から赤いエフェクトが噴き出す
「我らを・・・我らを化物と呼ぶのか紛い物!我らの何が分かる、望んだわけではない!」
紛い物か・・・間違ってない言い方だ。しかし、餌に腹を立てるなら逆に
「喰ってやるからおとなしく首を差し出せ」
「人の身で我らを喰らうとは面白い・・・その狂言に我も付き合ってやろう。眷属よ、散れ!」
黒鬼の一言で周りにいた大鬼達は姿を消し、俺の拘束も解かれる
「大鬼を放つのはいいけど、アンタは何をするんだ?」
「狩場を変え、力を溜めておく。我を探し、喰える器となれ人間」
それだけを言って黒鬼も姿を消し、結界が崩壊して森から広場に強制的に移動させられて一時的に終わりを告げられる
【イベントを終了します。“神への善行”は発生しなくなりました】
これでしばらくは鬼関連のイベントは一時的に止まる。次は黒鬼と戦うことになるだろうな
≪イベントシステムからメールが送信されました≫
大方、予想がつくけど見るか。送られてきたメールを開くと・・・
【第一次:人間やめますか?イベントについて】
・イベントの仕様につき、通常モンスターに加え大鬼が複数体出現します
・イベント期間中、パーティ申請および参加できなくなります
・状態異常ポーションの使用不可
・スキル・・・喰奪を獲得しました
・イベントアイテム:鬼の角、鬼の肉、鬼の血が一定の確率で大鬼からドロップされます
「まぁ、予想できる範囲の内容・・・ただ、状態異常ポーションが使えないのが困るくらいだな。自然回復でのみっていうのもキツイ」
メールを閉じて、ギルドホームに向かう
「やぁ、ク~君。ずいぶん前にログインしていたはずなのにここに来るのが遅いじゃないか」
ギルドホームに入って早々、寛いでいるギルドマスターに挨拶される
「お前、暇でギルドメンバーのログインチェックしてたのか?」
「うん。あたしがログインしてとりあえずギルド行っても誰もいないし、いても何か連絡つかないから地下で人形相手に模擬戦ずっとしてたんだよ!」
「あっそ。少しは動きがよくなったらいいな」
寂しい奴め、レベル上げでもしたらいいのに
「さりげなく失礼なことを思われた気がするけど流してあげるよ。ク~君は何してたのさ?」
「北の森でイベント進めてた」
「ク~君って人をやめるんだ・・・」
「そうだよ。おかげでパーティ組んでモンスター狩りとかボス戦とか無理になったけど」
「単独戦!ボスまで?」
驚くミヤビをよそにエミルがごく当たり前に会話に参加する
「やっぱり鬼になるのね、貴方」
「当たり前だろ?その方が強くなれるからな」
「そう、相変わらず力を求めるのね」
「お前はイベントしないのか?」
「今回は種族を変えずにプレイするつもりよ。完全に生産職に生きるわ」
「オーガバーサスの時も同じこと言ってなかったか?」
「そうね。唯一、人で生産専門プレイヤーのまま鬼って言われたわ。それとミヤビ、私を恐いモノみたいに見ないでくれるかしら」
「だって本当は内に般若とか飼ってるような気がしてアタシは肩がガタガタ震えてきただけさ。これはク~君のせいだよ!」
エミルの指摘に肩を震わせて責任を丸投げするダメマスター
「いや、それはお前がビビりすぎなだけだから。それと自分の言葉には責任持てよ」
クロノは目を合わせないように慌てて視線を逸らす
「え、ちょ・・・?何でそんなに笑顔なの?後ろに般若が見えるのはアタシの気のせいだよね?ああああああ~離して~助けて~ク~君」
首を傾げるミヤビの襟首をエミルは天使のような笑みでガッチリと掴んで連行していく
「クロノ、邪魔しないわよね?」
「・・・はい」
すまん。いくら俺でも般若さんには勝てないんだ
クロノは連行されるギルドマスターの声が聞こえなくなるまでずっと合掌をし続けるのであった




