20.改めての自己紹介
「到着~ゆっくりとお話していってね。ボクからのサプライズ!」
勝手に人を転移させ、フェリは霧のように消えてしまい、あとに残った俺達は呆然したままサプライズを見ることとなる
「何で会議室みたいなところ用意しやがった?」
ファンタジーとはかけ離れた冷たい無機質な床、木製の大きな円卓、それを囲むように黒革の肘つきチェア十脚並べられている。俺達に会議でもしてほしいのかよ?
「クロノの気持ちも分からなくないけど、席に座りなよ皆が待ってるよ」
ハクにそう言われて時計回りに開けてある4つ目の席に座る。そこには“剣鬼”と漢字でアルミっぽい板に刻まれている。他の奴も同じように通り名が刻まれている。ご丁寧に指定席とは面倒なことだ、よほど暇だったんだろうか?
「ただの顔合わせつもりが何か大掛かりなことになっちまった!連絡をしてくれるだけでいいって言ったのに余計な気を使いやがって」
額に手を当てて左右に軽く首を振ってみせる
「予定が狂った?でも君らしいとも言えるよ」
クロノの様子をくすくすと笑ってみせる
「それでも俺の目的は達成したからあとは任せたNo.1」
さっきの仕返しとばかりにニッと笑いかけて親指を立ててみせる
「この流れで言われると進行役丸投げ感がスッゴい伝わるんだけど・・・!」
なんてジト目で見られているけど目を会わせなければいい!
「いいだろ?元【鬼の宴】序列No.1なんだから」
「自分勝手だなぁ・・・それじゃあ自己紹介しようか。このゲームでの近況知りたいし・・・いいよね?」
ハクの笑顔から放たれる威圧感に全員が首肯にする
知らない仲じゃないのに自己紹介かよ
「皆、協力的で助かるよ。順番は僕から奇策師、死神、剣鬼っていう感じで内容は所属ギルド、昔の通り名と現状の通り名があるならそれもよろしく、今のキャラ名、言えるなら自分の武器くらいでよろしく」
話は矢継ぎ早に続き
「まずは僕から所属ギルド【白銀の刃】、昔は“白夜叉”今の通り名は“白騎士”、キャラ名ハク、武器は細剣。次の人は手早く!」
「俺っち今日、入ったばかりだからギルド名は覚えてな~い♪通り名は“全魔の奇策師”キャラ名は“イケてる”コウ、武器は札と倭刀」
ギルドの名前忘れるなよ!自称な通り名は昔と変わらねぇ、キャラ名くらいまともに言えよ!“イケメン”じゃなくて“ウザい”の間違いだろ?
「所属ギルド【漆黒の羽】、キャラ名ラーマ。昔、“死神”現状“悪魔”所持武器は大鎌、長銃。次は貴様だ」
死神の次は悪魔・・・ろくな通り名がない・・・絶対、斃し方のせいだ!
「所属ギルド【宴】コウも同じ、キャラ名クロノ、通り名“剣鬼”今はないけどギルメンから化物だの人害だの戦闘狂って呼ばれてる。武器は刀と銃」
俺って紹介する必要あるのか?大体はフェリのおかげで言うことないんだけど・・・
「所属ギルド【狂乱の棘華】キャラ名トウカ、前の通り名“両面”、今は“女帝”です。武器は鞭で嬲り、じわじわと拷問玩具で潰すという感じですの。次の方どうぞ」
攻撃手段がてめぇの趣味全開の変態プレイかよ!拷問玩具って武器なんだ・・・趣味悪いなぁ
「変態痴女の後って最悪よ!所属ギルド【宴】キャラ名エミル、昔の通り名“魔工”今はないわ。武器は大槌」
「所属ギルド【宴】キャラ名アオヒメ。通り名“蒼穹”現状なし!武器は双刀、双銃。ギルド【宴】最期締めなさいよ」
「所属ギルドはクロノと同じ。キャラ名は変わらずにエン、通り名は現状維持の炎鎗。武器は長槍と短槍だぜ!」
もう一本持ってたのかよ!次の手合わせ楽しみになる
「えらい同じギルドの人多いわとか言ってもハクさんと同じギルドやから何も言えへん。キャラ名はソウジ、通り名は昔の以外にあれへん。武器はこの糸で殺取しながら絞殺、切断、罠、何でもごされや。次で詰みやし締め宜しゅう」
糸って・・・武器は何でもありかよ!
「所属ギルドなし、キャラ名・・・ムイ・・・【鬼の宴】所属時の通り名から今は何も・・・ない。武器は手甲以外は己の身体のみ・・・以上だ・・・」
思ったより無形・・・ムイの奴スムーズに話したな
「皆、協力ありがとう!あと一つだけいい?」
ハクは有無を言わさない笑顔でもう一つ催促をする
「さっさと言え!まどろこっしいことするな」
「クロノはせっかちだな~ただの個人的な質問だよ?“君達はこのゲームでどんなことを何がしたくてプレイするの?”ってだけ」
何したいだろう・・・高月明のゲームをしたいだけなんだよなぁでも
「もう一回戦いたい」
お?案外、願望は口から出るらしい
「僕も負けっぱなしは主義じゃないから君に挑戦するよ」
その時の笑顔はいつもの笑顔と違い、ギラギラと目を輝かせて獰猛な笑みを見せてくれる
「あっそ」
俺は素っ気なく返事しながらも口角が上がるのが抑えられなかった
「クロノ!」
「何だよ、アオヒメ?」
「ハク君だけの権利じゃないからアンタに挑むの・・・この場にいる全員が、このゲームのプレイヤーが持ってるから!それ分かってるわよね?」
「上等、掛かってきやがれ。全員殺せばいい」
「うわ・・・狂ってる」
あれ?引かれた!
「戦うのが好きなんだからしょうがねぇだろ?」
「戦うの大好き民族みたい」
「知らねぇよ」
月、見たって大猿になるわけじゃないから!
「パンパカパーン、フェリちゃん登場!まだお話中~?」
変な爆発音とともに登場して空中を無意味に旋回する変な管理者が現れた
「大体は片付いたと思う。あと鬱陶しいから旋回するな」
「え~ボクはとても楽しいのに~」
不満そうにしながらも動くのを素直にやめてくれるのはいいが駄々っ子みたいに口を膨らませてブーイングしても誰の得にもならないからやめろよ
「で、何しに戻ってきた?」
「そろそろ元の場所に皆を戻そうと思ってるのだよ~」
「ということらしいけどもう終わりかハク?」
「終わりでいいんだけど・・・ね」
「なんだよ?」
「“黒鬼殺し”のあと、クロノは即ログアウトしてオーガバーサスのアカウントも消していなくなったよね?」
「そうだな」
「あの後、僕達も少ししてやめたから“鬼の宴”として“色鬼”として終われなかったからこの場で解散したい」
そういうことか
「分かった」
全員が神妙な顔つきで立ち上がり、円に集まると一斉に武器を抜き放ち、それで互いに傷つけた
『我等、腕がなくとも脚がなくとも首だけになろうとも、この刃を敵に突き刺し、切り刻み、駆逐する。己が敵が昨日の友であろうが駆逐する。それが鬼なり』
ダメージはないがそれは端から見ればおかしなものだと言えるかもしれない。
「今からオーガバーサスでの呼び名は禁止。ただのプレイヤーとしてこのゲームを楽しむ。これで“鬼の宴”解散」
今日、正式に“鬼の宴”は解散したと言ってもあまり変わらないんだけどな。
「え?そこは普通、円陣組んで剣を掲げる的なことして終わるんじゃない?」
軽く放置していたフェリが終わって俺に矢継ぎ早に質問を飛ばしてくる
「“鬼の宴”はギルドだけど“チーム”ってだけだ。もういいから元の場所に戻してくれ」
「ちょっと、それ答えになってないよ!」
「・・・」
ギルドは同じ目的を持って、目標のある団体だと思うがチームは同じ目的でいるだけで個としての意識の強い烏合の衆だと言えるだから“鬼の宴”はチームだたそれだけだ
「もういいよ。今度、教えてもらうから!転移」
元の場所に戻り、各自で一言、二言交わして唐突な集まりは終了を告げた




