12.ツンデレ?
次の日
目が覚めると時刻は12時を指している。これは寝過ぎだろうと思いながらもモソモソと布団から這い出て食事もそこそこにログインすると、目の前は噴水が噴き出る広場に立っていた
広場=噴水あるところってすっげぇテンプレだよな。まぁ分かりすくていいんだけど・・・とりあえず昨日、狩ったモンスターの素材をエミルに渡しに行くか。
レア素材みたいなものも混じってるし、“アーツ道場”とやらに行ってみたいし・・・
プルルル、プルルル
≪アオヒメさんからボイスチャットの申請が来ています≫
電話の呼び出しかよ。チャットでの呼び出し全般って大抵こんなカンジなのか?とりあえず了承っと
「何だ?アオヒメ」
(もしもし?クロノ君のお宅でしょうか。私はアオヒメと言います)
ゲームで“もしもし?クロノ君のお宅でしょうか。私はアオヒメと言います”って家にかけてるじゃないんだけど?
「はい。クロノですがアオヒメさん緊張してますか?」
(うっさい!きっ緊張なんかしてるわけないじゃにゃい!今、どこにいるのよ?)
あっ噛んだ。ウソつくの下手だな~
「広場だけど。どうしたんだ?」
(・・・・・すぐに向かうから待ってなさい)
ボイスチャットはそこで一方的に切られた。
待つこと5分・・・
「ちゃんと待ってたわね」
アオヒメは走ってこっちにやって来た。急ぎの用件なんだろう
「待ってやったんだよ。用件はなんだ?」
「もう、ギルド行った?」
昨日とは打って変わって顔に不安の色が見える・・・緊張か?
「今から行くところ。エミルに昨日手に入れた素材渡したいし・・・お前も行くか?」
「そう・・・ならいいのよ。みんなに私のことちゃんと紹介しなさいよ」
さっきまで不安そうな顔してたのに何か安心してる。大方、ギルドに一人で行くのが不安だったんだろう
「わかった。次からちゃんと頼めよ?」
「うっさい!額に穴開けるわよ!」
図星らしく顔を真っ赤にして額に遠慮なく銃が突きつけられる
ある意味、正直な奴だと内心、呆れつつも宥めて【宴】に向けて歩き始める
ギルドに向かう道中・・・
「アイツがあの“光波”を・・・」「例の黒コート」「“鬼の巣”出身プレイヤー」「西でモンスターを根絶やしにした黒ずくめと青髪・・・」「あの二人組は黒鬼と蒼鬼・・・目を合わせたら刈られる!」
チラチラと視線を向けながらひそひそと話をしているプレイヤー達がいる多数見かけたけど俺もアオヒメも突っ掛かって来ない限りは見ざる聞かざる言わざるで通した。中には豪奢な方も多数いたのでそれなりの対応をさせて頂いた。
おかげで、ギルドホームまで時間が少しかかった
「・・・バカな連中のおかげで10分くらいで着くところが30分掛かったわ!」
「そういうこともあるだろ」
アオヒメの小言を聞き流し、ギルド【宴】に入る
「こんにちは。そちらの方がエミルさんと話してた方ですか?」
入るなり、空のお盆片手に持ったミズキに出迎えられた。テーブルには何もないあたりは今から運ぶところだったのだろう
「そうだけど?コイツが昨日、話してたアオヒメだ」
「初めましてサブマスターのミズキです」
「お前ってサブマスターだったのか!」
コイツがサブマスターだと!先行きが不安になるなこのギルド。
「コラッ!ミズキ。入りたてのク~君をからかわない!」
下からギルドマスターの注意する声がどんどん近づいてくる。
ギルドホームって地下あるんだ。昨日、ギルドホームの構造も聞かないままフィールドに出たから中がどういう構造なのかまだ知らない。分かっているとすれば真ん中に円卓的なテーブルがあること、端っこにはバーカウンターあること、謎の宝箱があること、何か地下があるらしい、あとは二階建てらしい。よく分からないよな~
「あぶねぇ。ミズキに騙されかけた」
「この子がサブマスターなわけないじゃない。貴方はバカなのかしら?」
二階からコツコツと音を立てて、ゴズロリ衣装のエミルが階段を下りてきた
「ならお前がサブマスターなのかエミル?」
「ええ、その通りよ。よろしくねアオヒメ?」
「アンタもいたの?小さくてみえなかった」
アオヒメは故意にエミルを見下した
「いるわよ。貴方の眼は節穴なのかしら?それとも別のモノを見つめていて気づかなかったの?」
お返しとばかりに目線を泳がせ、一瞬留まった後にアオヒメを鼻で笑う
さっき、エミルに見られた気がするけど気のせいか
「うっさい、ぶっ飛ばす!」
アオヒメは一足でエミルに近づいて首に小太刀を添え、エミルは動じることもなく次の手を打つべくハンマー構える
二人とも状況慣れ過ぎだろ。もう少し穏便に話をする気はないのか・・・
「ク~君、あの二人って仲悪いの?」
二人の様子を見て、体を震わせる弱虫マスター
「いわゆる犬猿の仲。昔からあんな感じだし、それでも二人とも戦闘はきっちりするから基本的に放任して問題ねぇよ。それよりも離れないと俺たちが巻き込まれるぞ」
クロノは慣れた様子で振り返りもせずにミヤビ、ミズキを連れて真ん中の円卓まで避難する
「避難はできたけど、状況は変わらないじゃないかい!」
離れただけだから二人が武器振り回すのは変わらないよな。事実、離れた途端に激しくぶつかり合う音が聞こえてるし・・・
「ミヤビ、PVP制限ってどうしてる?」
「解除したままだけど、何する気?」
「二人を戦わせる」
「え?」
「二人とも、PVPできるみたいだからそっちで戦え!めんどうだから初撃でケリ付けろ」
俺は素材渡して、アーツ道場行きたいんだよ!それに自分の欲望に忠実に生きたいんだ・・・
そんなクロノの自己中心的な思いを知るはずのない二人は薄い青色のフィールドを広げて初撃決着を始めている
「二人とも、PVP始めましたね」
「お互い慣れてるからな」
「オーガバーサスの時もよくあったのかい?」
三人は二人の戦いをほんの少し眺めながらテーブルで談笑を始めている
「日常茶飯事と化してたから止める奴も・・・止めれる奴も少なかったからなぁ」
「「どういうこと(ですか)?」」
二人の顔には一様に疑問が浮かんでいる
「同じレベルの奴にしか止められない」
二人を止めたいなら二人と同等の能力がないと無理だって話だ
「簡単に言えば弱い奴がいくら束になって掛かって来ようと無駄ってことだぜ?なぁクロノ」
唐突に現れた槍使いの言い方は正答に近い答であった
「確かにそれも間違いない。納得したか?お二人さん」
二人からは納得したようなしていない微妙な表情を示していた
「・・・それよりもエン、さっきギルドに着いたところか?」
「違うぜ。地下で人形相手にトレーニングしてた」
地下はトレーニングルームなってるのか
「どんなのがあるんだ?」
「人形の場合はそれ相手にアーツの試し撃ちや人形相手に模擬戦ができる。あとは射撃場があるくらいだな」
「いいことを聞いた。ありがとう」
今度、利用してみよう。いい実験になる!!
「うわ!絶対、ろくでもないこと考えてるぜ」
エンは大袈裟なリアクションを取ってみせる
「別にいいじゃねぇか。お前らを実験動物にするわけじゃないんだから・・・」
クロノは不敵な笑みを浮かべるだけだった
「「「・・・」」」
皆、黙ったぞ?可怪しいなぁ~怪しい素振りは見せてないんだけど・・・
「アンタは思ったことが顔に出やすいだけよバカ!」
後ろからのバカ発言に振り向くと短気女が嬉しそうに意気揚々と歩いてきている。その少し後ろからエミルが何もなかったようにクールに歩いてくる。とりあえず、アオヒメから相手をしてやるか・・・
「うるせぇよ。戦った感想は?」
「初撃決着なのにほとんど避ける!防ぐ!で中々、一撃当てるまで苦労させられたし!アイツ、ハンマーなのに何であんなに動けるのよ!それで・・・・・・ねぇ、聞いてる?」
エミルも何かしらのモノを修めてる側の人間か・・・それはアオヒメも同じはずなんだけど・・・面白れぇな!
「まぁ、勝ったんだからいいじゃねぇか?」
適当に相槌を打っその場を取り繕う
「聞いてないわね。今は気分がいいから怒らないでおいてあげる」
「あっそ」
「近いうちに挑戦状叩きつけるから」
「あっそ。もう少し力つけてから掛かってこいよ!」
「・・・言われなくてもそうするわよ!」
鼻息荒くして言うと女子メンバーのところへ行ってしまった
やる気満々だな。こっちも力つけないと死ぬかもしれないなぁ
「貴方」
「何だ?エミル」
コイツ、敗けても顔に出ないよな。勝ち負けにあんまり興味ないからかもしれないけど・・・
「・・・あの子、少し強くなったわ。昔は弓で人を遠くから射殺すような性格の悪いやり方しかしない後方支援スタイルだったのに近接戦闘もできるのね」
「お前がアオヒメを褒めるなんて珍しいな。昔は少しも褒めなかったのに」
「そうだったかしら。もっともあの子は褒めるほど何ができてるわけでもなく、できないわけでもなかったから特筆していいところもなかっただけなんだけど・・・」
うわ!ボロカスに言ってやるなよ。でも、俺もそこは同じ意見だな
「今回は御眼鏡に敵ったわけか」
「そうよ。・・・それよりも昨日、狩ったモンスターの素材を見せない」
「ほらよ」
アイテムから素材を取り出してその場にすべて置いた
ウォールフの爪×55
ウォールフの牙×53
ウォールフの体毛×67
リトルボアの肉×44
リトルボアの牙×42
リトルボアの体毛×70
闇の欠片×3
魔魂×1
最後の“闇の欠片”と“魔魂”ってレア素材だと思うけどこのレベルで取れていいものなのか?
「あら?予想より早く“闇の欠片”と“魔魂”が手元に来たわ!貴方がギルドメンバーにいてくれて私はとてもうれしく思うわ」
エミルは愛おしそうに闇の欠片と魔魂を愛でて妖しく蠱惑の笑みを浮かべる
「・・・で、その二つの素材は何の意味があるんだ?」
「次の都市から属性持ちのモンスターが出現するからそれに必要なモノを作るのに今はそれに必要なだけ・・・よ」
何だそれ?ほかにも使用用途があるのか・・・?
「この都市には属性持ちのモンスターは出ないわけだ。そもそも属性ってどれだけあるんだ?」
「貴方は・・・そんなことも知らないのかしら?属性は炎、水、風、雷、土、光、闇。武器の攻撃属性は斬撃、貫通、破砕のいずれかに属するわ。状態異常は・・・ファンタジーありきだから分かるわね?」
エミルは大げさにリアクションを取りながらも説明文を読んでいるようにスラスラと話してくれる
「サンキュー」
エミルは人を馬鹿にした態度をとるけど親切だよな
生暖かい視線を向けると・・・
「な、何かしら!あまり見つめられると恥ずかしいのだけど・・・つ、次から素材は宝箱みたいなものに全部入れてくれてかまわないから!!!」
エミルはそれだけ言うと耐えられないとばかりに慌てて逃げるように二階に消え去ってしまった。顔が赤く見えたのは気のせいだろう
用事も済んだし、アーツ道場に行くか・・・
一応、円卓近くにいるギルドメンバーにその旨を伝えてクロノはギルドホームを出た




