11.仲が悪い?
「やっぱりプレイヤーが多いな」
俺はとりあえず東の草原フィールドにいる。低レベル帯だけに初心者が多くて人口密度が高い。これだけ多いと出現する度に殺されて再出現するの待たなきゃならないし西に移動するか
東西南北のフィールドは通り抜けられる淡い光の壁で仕切られ、それは明確にレベル差を示してるみたいだ。
「そんなことはどうだっていいんだけど」
一人で呟くとクロノは壁沿いに進んで壁をアッサリと通り抜け西の草原に入った
「「全然プレイヤーいない!これで楽にレベリングできる!」」
「「え?」」
声がハモった
横に振り向くと青髪を後ろで一つ結びにした猫目の女の子がいた。その子は探そうと思っているプレイヤーだった
「私に何か付いてる?それとも惚れた?」
こちらに気づいてわざとらしく上目遣いで甘えるような声を出す
「そういう気が起きるならそう言ってやるよ“蒼鬼”」
前のゲーム仲間に遭遇した
「し、正直に言えばいいじゃない!だけど別にアンタなんかに言われたって全然嬉しくないんだからね!“黒鬼”」
相変わらずのツンデレだな
「“一応”久し振りだな」
「仮想世界じゃ一年振りね。現実は先週会ったからあんまり久し振りって感じしない」
「俺もそれは同感。話変わるけど・・・ここに行く前にエミルと話してたんだけどお前ウチのギルドに入らないか?」
「エミル?・・・“紫鬼”のことね」
「アイツも“色鬼”で呼ばれてたな。それでどうするんだ?」
“色鬼”は鬼の宴メンバー上位十名の装備品の色から命名され後に鬼を付けて呼ばれている渾名みたいなものだ。
「アンタが何するか分からないし、楽しそうだから入る」
「了解」
クロノはウィンドウからボイスチャットを開き、ミヤビを呼び出した
(ク~君?寂しくてアタシの声でも聞きたくなった?)
「そんなわけあるか!バカ野郎。さっきエミルと話してた奴がギルド入るから連絡入れたんだよ」
(なんだ。初めてのコールだからドキドキしたのに残念だよ~)
どこにドキドキ要素があるんだ!
「蒼鬼、ギルド名は【宴】入団申請飛ばせ」
「私のキャラ名は“蒼鬼”じゃなくて“アオヒメ”!そっちで呼ぶんじゃない!分かってんのクロノ?」
「申し訳ありませんアオヒメさん。さっさと申請してください」
(全然心が込もってないよ。もう少し込めないと怒られるよ?・・・とりあえず申請来たから了承しとくね)
≪ギルドマスターからアオヒメさんの入団が受理されました≫
こういう通知ってギルドメンバーに届くのか
「サンキュー、ミヤビ」
(これくらいなら御安いご要だよ。ク~君)
ミヤビとのボイスチャットは終わり当初の目的も完了したからエネミー狩りに興じますか!
「アオヒメ、エネミー狩りに付き合え」
≪クロノさんがアオヒメさんにパーティーを申請しました≫
「久し振りだからアンタの実力がどれくらいかこの私が確かめてやろうじゃない!」
≪アオヒメさんがパーティー申請を受けました≫
フィールドを二人で彷徨いてると・・・
WARNING
赤字で警告ってモンスター出現するのって普通、エンカウントじゃないの?モンスター遭遇する度に出たら嫌だからあとで消そう。
出現早々に茶色い毛並みの痩せこけた狼みたいなウォールフと小さい猪リトルボアの“侵食核付き”12体に囲まれた。
スキルの効果とはいえ強化されてるし多くね?死ぬじゃん!西の草原自体が適正レベルが5~8っていうのも原因なんだけど・・・
愚痴りながらもウォールフの咬みつきもリトルボアの体当たりも一撃もかすりもしない。
それはアオヒメも同じで二人は囲まれている状況下で武器すら抜かずに会話を続ける
「お前、レベルどれくらい?」
「アンタと同じレベル1よ。文句ある?」
「ねぇよ!短気女」
負けじと言い返すが・・・
「うっさい!モンスターごとぶった斬られたい?」
それは脅しではなくそこにあることすら分からないくらい自然にスっと首元に小太刀が押し当てられる
「参った、参りました」
降参の意を示すように笑って諸手を上げてみせる
その態度に満足したのかアオヒメはくるりと背を向け、静かに双刀を構える
クロノも示し合わせたように抜刀する
「・・・背中は任せなさい。全部、私が倒してあげるから!」
「上等!!一匹も逃がすな」
二人は一気に襲い来るモンスターを避けずに身体からはスキル特有のオーラを立ち昇らせて対応する
「“アーツ”一閃、ファーストブレッド」
刀で前から迫る二体のウォールフを一閃で斬り飛ばし、その後ろから追撃するリトルボア一体の額を銃で撃ち抜き霧散させる
「ふぅん、腕は落ちてないみたいね・・・だったら遠慮なく!!!」
横目でクロノが敵を蹴散らすのを確認するとAGI任せに敵に踏み込みアーツを発動させる
「乱舞、ワイルドエリア!!!」
さらに一歩、踏み出しモンスターを巻き込むように回天して切り刻んで弾き飛ばし、追い討ちを掛けるよう双銃から広範囲に撃ち放って断末魔ともに穴の開いた死体を量産させる
「斬り刻んだ上で穴だらけなんて敵ながら同情するよ」
「同情するついでにアンタも殺られてみる?」
満面の笑みで俺を狙うようにわざとらしく顔面スレスレに銃弾を撃ち込む
「今、かすったぞ!!」
「別にいいじゃない。ちゃんと当てたんだから!」
「そんなことしなくても全範囲視えてるから問題ねぇんだよ」
“危機察知”って背後からの攻撃でも見えるし便利だよな
「そんなこと言って殺られる・・・後ろっ!!!」
「一発だけなら耐えれるから問題ねぇよ」
背後からリトルボアの体当たりがぶち当たりHPは一気に削り尽くされギリギリで生き残る。
当然ながら1しか残ってない。状態異常でも付加されてた攻撃なら死ぬだろうな
「本当に耐えるなんてろくでもないスキル持ってるわね異常者」
「そんなもん持ってなくて生き残ってるお前も十分異常者だよ」
「アンタと同類に扱われるなんて心外!」
「うるせぇ。残りモンスターごとてめぇも片すか?」
冷たい眼で首筋に切っ先を当てて静かに威圧感を放っている
「私は殺せるだろうけど・・・モンスターどうすんの?」
アオヒメは刀を一瞥するだけで顔色一つ変えない。
首に突きつけられた状態でも顔色一つ変えないなんて肝が座った奴だ
「逆だよ。プレイヤーの方が何するか分からないから厄介。モンスターの方がある程度のアルゴリズムが決まってるから楽なんだ」
「そういうなら証明してみなさいよ」
「分かった」
切っ先を首筋から離すとスッと消えて姿は消え失せ、次に見えた時にはアーツ特有の青い残滓と黒い影を残し、ゆらゆらと蜃気楼のように消えては現れて捉えられないスピードで翻弄し、なす術もなく問答無用に全て斬り捨てる
「何のスキル使ったの?」
さっきの光景は全てスキルによるものと思われたらしいがそれは半分合ってて半分間違ってる。同じスキルが有していようと性能には差があるから知ったところで意味はないが半分は教えてやろう
「ただの性能まかせのゴリ押しだよ」
「・・・意味わかんない。はっきり言いなさい、教えなさい!」
少し沈黙してから再度聞いてくる
「俺から一回でも勝てたら教えてやるよ」
そのまま同じ問答を繰り返しながらも二人でモンスターを狩り続けて出現も無くなりそこで打ち止めになった。レベルは狩り尽くした割に5までしか上がらなかった。あとで知ったことだけどパーティーを組んでいる場合だと得られる経験値が半分になるらしい
「ちょうど再出現待ちになったし、今日は落ちる」
ちなみにモンスターが完全に出なくなった場合、再出現までは一時間は掛かる
「了解。結局教えてくれなかったわね!」
ややご立腹の短気女を無視して、ギルドメンバーにメールを送りその場でログアウトをする。




