拷問部屋
すみません、すごく遅くなりました。
タグに不定期更新を追加させておきます。
もしかしたら一話一話を短くして、もう少しこまめに更新するかもです。
「着いたよ〜!」
わたしたちは今、ちょっと前に会合をしたオーナーさん所有の施設にいる。ちなみにこの部屋はあの時使った部屋じゃなくて、もっとこじんまりして色々なものが置かれたお部屋。
おうちに帰れると思ったのに、何をトチ狂ってここに来たんだろ。どうせわたしなんていてもいなくてもどうでもいいんだから、おうちでごろごろしてたかったのに。
ちなみにわたしは今現在、伊勢海老を食べながら拷問具を見ている最中。
「てつのしょじょにえくせたーこうのむすめに…ふぁらりすのおうし?」
「…兄さん、何でこの子拷問具の名前言い当ててるの?」
え?一般常識じゃないの?
「仕方無いじゃないか!…最初はおもちゃが擬人化する子供番組を嬢ちゃんに見せてただけだったんだ。でも659話ぐらいからネタが尽きたのか拷問具が擬人化し始めて…めっちゃ可愛い幼女だったんだからしょうがないじゃないか!あれは本気で萌えたんだぞ!!」
「うん、わかった……兄さんがハマったんだね…」
可哀想に、オーナーさんが遠い目をしてる。
でも何でこの部屋所狭しと拷問具が並んでるの?そして何で皆そっちに突っ込まないの?
鉄の処女とかファラリスの雄牛ってもはや処刑具だよね。特にファラリスの雄牛。
「ひっ…」
あ、スパイさん涙目。
「んー、どうする?拷問係の子にするか、この拷問具を使うか?それとも説明してから自分自身で決めてもらう?てかそれで良いよね、楽しいし」
(楽しいの?)
でも突っ込んだら負けだ。止めとこ。でも一言だけ…
「みずぜめならまかせて!」
「嬢ちゃん!親指グッとするの止めなさい!」
宵さんに怒られた。
「…ろりこんのくせに、ごうもんぐにまでこうふんするどへんたいのだめにんげんのくせに…けっ」
「いや俺拷問具には興奮してないから!幼女に対してだから!あと“けっ”とか汚い言葉使うのやめろって!!」
「宵さんきらい」
一瞬固まって、宵さんがファラリスの雄牛に入っていった。何か叫んでるみたいだけど、くぐもっててわかんない。
ちなみにわたしは今、赤い人に抱っこされてるの。
「じゃあこれの説明からしようか」
そう言ってオーナーさんがファラリスの雄牛に鍵を掛けた。
誰か突っ込んであげて?
「お嬢ちゃんが言ってた通り、これはファラリスの雄牛っていう拷問及び処刑の為の装置だよ。
古代ギリシア、シチリア島のアグリジェントを実質的に治めてたファラリスが死刑の新しい手法を取り入れたがってたんだけどね、その時真鍮鋳物師のペリロスによって献上されたものなんだ。もちろんこれはレプリカだけどね。
ペリロスは真鍮で雄牛を鋳造して中を空洞にして、脇に―ここにもあるでしょ?―扉を付けた。罪人はこの中に閉じ込められて火を焚かれ、炙り殺されるってわけ。
ファラリスは雄牛から芳香が雲みたいに立ち上るように設計させた。だからこの頭って複雑な筒と栓から出来ててさ、兄さんの声聞いて分かると思うけどくぐもってるでしょ?君がここに入ってわあわあ叫んだらこっちには雄牛のうなり声みたいに聞こえるんだ〜。
死体は宝石みたいに照る骨になってさ、ブレスレットに使われたらしいよ?
ああ、そうなったら有り難く僕たちの組織の資金になってもらうからね?」
にっこり笑うオーナーさんを見て、スパイさんの震えが酷くなった。
あとオーナーさん凄く生き生きしてる。流石宵さんの身内。
「…君ってさり気なく腹黒いよね」
心を読むな変態め。
「…じゃあ次はこれ、鉄の処女。この中に入って扉を閉めたら串刺しになるやつ。有名だから説明は省くよ?
これは伝説に基づいてドイツのニュルンベルクで作られた模造品の、更に模造品だね。まあ“鉄の…”って言ってもニュルンベルクで作られたのは木製だから、これも木製だよ。木彫り人形を作って釘を刺しただけだから作るの楽だし。ちなみに鉄の処女はドイツ語でEiserne Jungfrau、英語ではIron Maidenって呼ばれてるんだけど、ニュルンベルクで作られた模造品が有名だから、Virgin of Nurembergって呼ばれることもあるんだよ?ちなみに意味は“ニュルンベルクの処女”ね。
閑話休題。ここにあるのは三種類でさ、急所を貫いて即死させるやつと、わざと急所を外して失血死…またはショック死させるやつと、徐々に針が伸びてじわじわ殺すやつね。ちなみに君がこれを選んだ場合、この三つからくじ引きにするから。
でも木製にしたのは失敗だったね。木だと強度とかの問題でどうしてもゴツくなるんだよ〜。
まあこれ防音出来るから悲鳴漏れないし、落とし扉付きで一目に触れることなく処理出来るから、汚いものをお嬢ちゃんに見せなくて済むしね。死体はファラリスの雄牛で焼いて骨にして売り払えば資金も獲得出来るしさ♪」
どっちも処刑具だよね?拷問する気無いよね?
「んー…じゃあ次はこれ、リッサの鉄棺。
名前の由来はイタリアのリッサで使用されていたとされている、だったかな。これもこれで結構エグいから、僕のお気に入りなんだ〜。見た目は地味だけどね。
これは名前通り鉄で出来た棺桶みたいでしょ?それでこの蓋についているネジを回すとね〜、中にある罪人が圧殺されるんだよ。じわじわプレスされるんだ。
中はほら、君が入れるぐらいのベストサイズ。…いや本当のやつは身を縮めてやっと入れるぐらいのやつなんだけどさ、こっちの設計ミス?でもその方がゆっくり死ねるから良いよね?
当然中は真っ暗だし、食事も一切出来ないから結構ツラいだろうね、自業自得だけど。
…でも残酷な死に方だよね。“狭い”“暗い”“痛い”の三拍子だから。“おなか減った”も入れたら四拍子かな?即死も出来ないから質が悪いよね。ファラリスの雄牛と良い勝負かな。
ある意味、ギロチンとは正反対の処刑具だよね」
もうこの人ダメだ。人の話聞かないド変態だ。
しかも知識が無駄に多いし…はぁ。
「あれ?不満?じゃあ“野兎”にする?それとも“苦悩の梨”…は裸に剥かないと駄目だからそんなん見たくないしダメで、“審問椅子”?“猫の足”?“魔女の針”?敢えての“拷問の車輪”か、“火責め椅子”にする?」
オーナーさんも飽きちゃったのか、拷問具の名前をぽんぽん出してる。後何で“敢えて”?
でも何でエクセター公の娘みたいな、関節を引き伸ばすだけの拷問具はこの部屋に無いんだろう。あれなら致死性も低いのに。
「ところでスパイ君…この拷問具に虐められるのと、可愛らしい拷問係の女の子に虐められるの、どっちが良い?女の子の場合、命だけは大丈夫だよ?」
スパイさんが必死に頷いてる。でも“命だけは”ってことは相当痛そうだけど、スパイさんは気付いて無さそうだね。
…他人ごとだと気楽でいいね。
「おねえちゃん、ごうもんがかりってどんな人?」
「んー…綺麗な子、かしら?色んな意味でお人形みたいな子よ。日本人形と西洋人形のハーフって感じかしら」
意味わかんない。
「いいよー、入ってきて」
オーナーさんが部屋の外に呼び掛けると、一人の女の人が入ってきた。
確かに日本人形と西洋人形のハーフみたいな人だ。顔は日本人で着物を着てるけど、体は西洋人みたい。それに赤い人以上に無表情。
でも髪真っ黒で長くていいなぁ…
「この子が拷問係だよ〜」
ですよねー。
あ、宵さん放置したまんまだけどいいのかな?
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