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親睦会


「さて、行こうか」


オーナーさんを筆頭にお迎えの黒塗りの高級車に乗り込む。運転手さんは見るからに緊張していた。…可哀想に。


それにしても長い車。テレビでしか見たこと無かったけど、本当にあるんだ。


「嬢ちゃん、今日も一日中抱っこして移動するからね」


昨日これを聞いた時、浮き輪に水を入れたら自分でも出来ると反論したのだけど、どうやら能力がバレるのは避けたいみたい。


「しっかし今日の嬢ちゃんは格別に可愛いな~」


そう言ってほっぺをツンツンされる。


今日のわたしの格好はやっぱりお姫様仕様のドレスだった。


空色の布地に真っ白なレースがたくさん使われてて、リボンもついてる。それにレース付きのニーハイソックスに編み上げブーツ。頭にはヘッドドレス、そしてフリフリのわたし用の傘。


ちなみに宵さんとオーナーさん(今日はアイマスクをしてない)は貴族が着ていそうな豪華な燕尾服、お姉ちゃんは体にぴったりしてセクシーな真っ赤なドレスを着ている。唯一まともなのはスーツ姿の赤い人だけだ。


そういえばオーナーさんは糸目でよくわからないけど、目の色が違うような…


「ああ、今日はカラーコンタクト使ってるんだよ」


そう言ってぱっちり開かれた眼は、明るい赤色をしていた。ちなみに本当の色は金色だった気がする。


あと勝手に心を視るな。


「お前…そこは黒か髪に合わせて白だろ?」


白は違うと思う。


「いや~、格好良かったからさ~」

「アリスと被ってるだろうが!」


赤い人を見ると、もう寝ちゃってる。この車はシートベルトも無いし、ふかふかのソファがあるから寝心地は良さそう。


固定されたテーブルには、赤い人が食べたチョコレートの残りがあった。


高級そうなチョコレートなのに、赤い人は一人で半分以上食べてた。ずるい。


「嬢ちゃん、チョコ食べる?」

「たべる」


その後車が止まるまで、わたしは宵さんにチョコを食べさせてもらってた。流石高級そうなだけあって、チョコレートは美味しかった。


「ついたの?」

「いや、車の故障を理由に僕たちを車から下ろす算段らしいよ~。それで会場まで歩かされて、反レヴィアン派の人間からの嫌がらせを受ける羽目になりそうなんだよね~」


とりあえずわかったのはさっさとチョコレートを食べちゃおうということ。


「あらら、実力行使は必要?」

「あ~、多分暴力は受けないと思うから大丈夫、かなぁ?」


少し心配だけど、赤い人がいるから大丈夫だろうな。


「すみません!車が故障致しましたのでございます!!」


運転手さんが飛び込んで来た。


うわ~…嘘が下手だなこの人。


「あらあら、私達はどうすればいいかしら?」

「会場まであと百メートルほどですので、ご足労頂けましたら…」

「ふふ、わかったわ」


お姉ちゃんはなんだか楽しそう。起こされた赤い人はすごく不機嫌で、眼を飛ばされた運転手さんを怯えさせてる。オーナーさんはわからない。


宵さんは…


「…オレの嬢ちゃんに手を出したら殺してやる殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す…」


クレイジーなお馬鹿さんになってた。


わたしはどうでもいいや。抱っこするのは宵さんだしね。


「じゃ、行くか~」


車を出た瞬間、たくさんの人が出てくる。だけどわたしたちが怖いのか、全く近寄ってこない。


「あらあら、今日は人がたくさんいるわね~」

「そうだね~、お祭りか何かあったかな~」


わたしたちが歩き始めると、ようやく何やら言い始める。


「化け物共め、出てけ!」

『出てけーっ!!』

「人間みたいなフリをしやがって!」

『そうだそうだ!!』

「この出来損ない共め!!」


って感じで罵倒しているような気がする。宵さんに耳を塞がれたがら唇の動きと憶測だけど、まあ大体そんな感じじゃないかな?


まあでも皆我関せず。なんか慣れてるっぽい。


するとそれにキレたのか、いきなり生卵が飛んでき…


 ボンっ


「…へ?」


卵が燃え上がって灰になった。


火蜥蜴(サラマンダー)のお姉ちゃんかと思ったけど、なんか違う気がする。


「ひぃっ!」

「ばっ、化け物が本性を現しやがったっ!!」


そして今度は石を投げられ…


 パシッ


「……………」


今度は石が砕けてバラバラになった。


「…………………………………失せろ」


赤い人だ。赤い人も火を使うみたい。石はどうやったかわかんなかったけど。


だけど人間たちは石を投げるのを止めない。殺気と恐怖が()い交ぜになった顔でわたしたちを睨みつけながら。


「アリス、面倒だからお願い」

「……………………………………………チッ」


すごく嫌そうな舌打ちが聞こえた後、何か違う場所にいた。


「てれぽーと?」

「そんなとこ♪」


どうやらここが会場らしく、周りの人がびっくりしてる。


「やっほ、ソーリ」


どうやら内閣総理大臣も来ているらしい。うん、テレビでよく見る顔がたくさん。


「や、やあ」

「いや~、なんか車が故障してさ~、うるさい人達に絡まれたから瞬間移動してきたんだよね~」


 ビクッ


「あとあのチョコレートもさ~、あんまおいしくなかったんだよね~、結構お高いやつっぽかったのにさ~」


 ビクビクッ



チョコレートは赤い人とわたししか食べてないのに、オーナーさんは変なこと言ってる。


だけどお姉ちゃんに目配せされたから、オーナーさんに話を合わせることにした。


「そ、そういえばその子も君たちの仲間なのかね?」


いきなり話を振られた。とりあえず恥ずかしがり屋の振りをして宵さんにしがみつき顔を隠す。


とりあえず年相応に見えるようにしないと。


「こーら、(しずく)。ちゃんとご挨拶しなさい」


どうやらわたしの名前は雫になったらしい。


化け物に由来した名前とか言ってたけど、定まらないからわたしの属性に合わせた名前にしたのかな?


「は、はじめましておじしゃま、しずくです////」


すかさず上目遣いでニコッと笑う。…泣きたくなった。


何“おじしゃま”って。もうやだ死にたい。


…しかし不本意ながら効果は抜群だったようで、総理は相好を崩して笑う。


オーナーさんもお姉ちゃんも社交的に振る舞ってるけど、赤い人は会場にある食べ物を食べまくっている。


そして刺身やお魚料理を盛り合わせにして持ってきてくれた。もちろん伊勢海老もある。


それも十分意外だったけど、赤い人は宵さんたちにも料理をお皿に載せて持ってってあげてた。あとはずっと食べてたけど。


官僚さんと話はしなくていいのかなと思ったけど、赤い人が威圧感を振りまいてたから誰も話し掛けない。


赤い人は食いしん坊さんなのかな?


「はむ…むぐむぐ」


伊勢海老おいしい。


宵さんにおねだりしたら買ってくれそうだけど、それは流石に罪悪感が湧くから我慢する。


その代わり今日はいっぱい伊勢海老食べるの。


今は魚介以外のものも食べれるようになったから色々食べてみたけど、やっぱり魚介類が特においしかった。


「ほほう、ではこのお嬢ちゃんも突然」


いつの間にか、話はわたしのことになっていた。


お母さんに刺されてすぐの記憶はあんまり無いから恥ずかしいし嫌だな。


「ええ、私達が保護した時はもう酷いものでした…体中にあった傷の手当てはずさんなもので、今もほら、この子の両足は動きません。実の母親に刺されたことで彼女は心も強く痛めていました。今はこんなに明るい子なのですが当時はもう…」


(宵さん、少し話し過ぎ)


確かに同情を煽った方がいいのはわかるけど、お涙頂戴はあんまり好きじゃ無い。


あ、でも宵さん本当に泣いてるや。


「おにーちゃん、どうしたの?どこかいたいの?」

「雫…」

「おにーちゃん…なかないで…なかないで……」


こんな芝居をうたなきゃいけないわたしが泣きたいよ…


「…うん、お兄ちゃん、もう大丈夫だからな」


そう言って頭を撫でられる。


え?なんで“おにーちゃん”かって?…だって同情心が煽られそうでしょ?


「そういえばお嬢ちゃんは何の妖怪さんなのかな?」


近くにいたおじさんがいきなり視線を合わせて訊いてきた。


顔は笑ってるけど目が笑ってない気がする。…怪しい。


でもここは親レヴィアン派人の集いの筈なんだけど……う~ん…


「ごめんなさい…わかんないの」


精一杯悲しそうな顔を作って言う。


「そうかいそうかい、悪かったねぇ」


そう言ってわたしの頭を撫でてどっかに行っちゃった。


その後一時間は何の問題も無く、時間が過ぎていった。あのおじさんのことは考え過ぎだったと思って忘れることにした。

誤字・脱字がありましたらよろしくお願いします。

コメント頂けたら嬉しいです。

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