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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第八章:王城編
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第九十三話:ま、まさかあれはUFO?!

「モナカじゃんか!こっち来いよ!」


 デリックはそう言い、ローブを深くかぶった少女に向けて手を振り近づいた。


「モナカ…?」


 ラークはその場で立ち止まりながら、あの小柄でいつももじもじしている少女を思い浮かべたが、デリックの声によりそれは掻き消された。


「ほら、ラーク君もこっちに来なよ」


 デリックが手を上げて手招きした。

 ラークは固まっていた体を動かしデリックのそばに行った。

 七賢者の知り合いであるならば、その同僚である七賢者かその関係者、もしくは魔術の名家が浮かぶが、彼女はどのような人物なのだろう。


「失礼、貴方の名前をお聞きしてもよろしいでしょうか?」


 少女はラークの問いには答えず、左手を一瞬震わせた。そしてそれを隠すように右手を左手に重ね、フードを上げずに俯いたままだ。


「彼女は七賢者が一人『沈黙の魔女』モナカ・エルノート。彼女は論文では有名だけど、学会に出ないからあまり認知されていないんだ。

 どうか彼女の名前を覚えておくれ。

 それと、彼女はシャイでね。初対面の相手には全く喋れないから、そこは理解してくれると助かるな」

「そうでしたか」


 ラークは神妙な顔でモナカを見た。


(これがあの無詠唱魔術を扱う魔女…)


 ラークは『沈黙の魔女』を、もっと凛々しい女性と想像していたため、リアルとのギャップに苦しんだ。


「ん?あっちから誰か来るな」


 ラークが困惑していても関係なく、デリックは少し上の空を指差した。

 ラークも見ると、何か黒い何かがとんでもない速さで飛行魔術で飛んでいるのが見えた。


「早っ!」


 それは一瞬でラークの横を通過し、ラークはその衝撃に耐えかね吹っ飛んだ。

 そしてそれと同時に、ラークの少し奥あたりから、ドンッ!と大きな音が鳴り響いた。


「な、ナイスキャッチ…『黎明』『沈黙』」


 * * *


 ミリアとモナカはデリックを探すべく城から出た後、別れて敷地内を散策することになった。

 モナカは、植物について研究をしているデリックのいそうな庭園付近を歩きながら、ミリアは逆側を空から飛行魔術を使い探し始めていた。

 一応心配事としては、セレスティナの知り合いと出会うことだが、今ミリアは空にいるし、漆黒の仮面と いう厨二臭い正装なので大丈夫だとは思うが、もし会ったら声ぐらいは変えるよう意識して喋るつもりにした。


 * * *


 探し始めて15分ほど経過したところで庭園が見えた。

 そこから数秒進むと、三人の人影が見えた。

 1人は小柄でフードを深くかぶり、1人は長身大柄で籠を持っている。もう1人は銀髪で白い服を着ている。


(モナカは『黎明』と合流してたか。

 てかあれ、ラークじゃない?)


 まさか本当に知り合いがいるとは思わず少し驚いたミリアだったが、すぐに冷静になった。

 ラークと話すときは少し声を低くして喋ろう。

 取りあえずミリアは地面に降りようと飛行魔術を解除しようとした。

 だが─


(ちょっと待って!

 ちょ、これ止まんないんだけど!

 まずいって!ぶつかるって!)


 何故か飛行魔術が解除できず、ミリアは急ブレーキをかける作戦で止まることにした。


「と、止まれーー!」


 ミリアは絶叫しながら、ラークを吹き飛ばし、デリックに激突しデリックも吹き飛ばすかに思われた。

 しかし─


─ドンッ!


 強烈な音ともに、ミリアはデリックを吹き飛ばさずに受け止められた。

 恐らく、モナカが急ぎでデリックに防御結界を張り、デリックは風の上位精霊の力を行使して受け止めたのだろう。


「な、ナイスキャッチ…『黎明』『沈黙』」


 ミリアは生気の抜けた声で二人に喋りかける。

 ミリアが少しぐったりしていると、デリックはミリアを肩に抱えた。


「ラーク君、コイツは知ってるかな?」

「い、いえ…」

「そうか、コイツも七賢者『無情の魔術師』ミリア・アルトさ。彼は超短縮詠唱と魔力変質、そして数々の魔導具を開発した、七賢者に珍しい常識人さ」


 ラークは絶句していた。

 どうせ、さっきのミリアのやらかしを見て、「これが常識人…」とでも思っているのだろう。

 そうだ、ミリア(これ)が七賢者のなかでは常識人なのだ。

 七賢者はクセが強い上に、特殊な癖の持ち主も多いので、それを持たない人物であるミリアは七賢者のなかでは最もまともだと言える。

 少しずつ回復してきたミリアはデリックの肩を右腕で叩いた。


「ァ痛っ!」

「下ろして…」


 デリックはすぐさまミリアを下ろした。

 ミリアは先日右腕を怪我していて痛みもまだ続いてはいたが、痛覚を遮断する方法を使い、今は痛みは感じていないので、ラークに不自然には思われないだろう。

 正直痛覚遮断の術は常時発動させておきたいが、少し面倒なのでいつもはつけていない。


「…それで、どういう状況?」

「分かんない。わたしも途中で来て、少ししたらすぐにミリアが飛んできたから…」


 そっか、と返答しつつ、ミリアはデリックをどう連れ戻すかを考えていた。

 式典までには戻さないといけないのでそろそろ急ぐ必要はあるが、どう連れ戻すかを考えていた。


(普通に頼むか。

 ほかの七賢者みたいに聞き分けが悪いわけでもないし素直に聞いてくれるはず…!)


「『黎明』もう少しで式典が始まるので、準備の時間も含めてもう妖玉の間に戻られたらどうですか?」

「ん?ああ、もうそんな時間か…

 ありがとうミリア。

 さて、次代のヴァルトン侯爵よ、また元気に会おうではないか!」


 デリックは元気にラークに別れの挨拶をし、愉快に笑った。


 デリックは30代後半だ。

 ミリアは、年は取りたくないな、と思った。

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