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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第八章:王城編
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第九十一話:デリック・ラン・フォーレ

 庭園を歩きラークを案内している庭師は、籠を抱えながら明るい声で喋った。


「庭園の庭師は代々ある一族が管理してるんだが、俺は特別に、庭園(ここ)の庭師になったんだよ。

 さて、何故でしょう?」


 庭師は振り返って試すような口調で聞き、それにラークは手を顎に当て思案した。


「ふむ…何か特別な功績でも立てたのか?」

「正解」


 庭師は詠唱を始めた。


(詠唱だと?!

 この庭師、まさか私を狙ってここまで誘導したのか!)


 ラークは身構え短縮詠唱を始めたが、その途中で庭師はラークの警戒に気づいたのか、籠を持ったまま振り返った。


「ああごめんね、驚かせたみたいで」

「今のはどういう意図あっての行動だ?

 場合によっては、貴様の人生にかかわることだ!」


 ラークの語気を強めた言葉など微塵も意に介さず、庭師は片手で頭を掻いた。

 庭師は片手を軽く空にかざした。すると、薄い緑の模様が見えてきた。

 模様は広がっていき、わずか数秒で女性の人型に変化した。


「さっきの詠唱は、俺の契約精霊を呼び出す魔術さ」

「精霊術か…では何故呼びだしたのだ?」

「ほら、俺が庭師になったのは特別な功績のおかげって話だったろ?

 この精霊がそれに関係するんだよ」


 どういうことだ─とラークが困惑していると、女性の人型の精霊が喋りだした。


「デリック様、本日はどのようなご要件でしょうか?」

「今日はあまり仕事をしない日だから、俺の後ろを付いてきてくれ」

「承知しました」


 庭師と精霊の会話に耳を傾けたラークは驚愕した。


「今、デリックと?」

「はい、そう言わせていただきました」


 ラークは再び驚愕し、ある仮説を思いそれを確認すると、青ざめた。

 庭師の籠の下の方には、よく見れば黒色で金銀の糸の刺繍が施されたローブが見えた。

 自分はもしや、彼にとんでもない非礼を行ったのではないか?─そんな疑問に包まれ、そしてすぐに庭師に頭を下げた。


 何故か?


「申し訳ありません、これまでの非礼、お詫びいたします─『黎明の魔術師』様」


 そう、庭園でこれからの植物への可能性を見出し、明るく大らかなこの庭師、彼こそが七賢者最後の一人、『黎明の魔術師』デリック・ラン・フォーレであったからだ。

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