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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第七章:学園祭編
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番外編:ニナとミリア

 ニナ・ミラージェという、一人の女子の話をしよう。

 これはまだ、ニナが七賢者になる前の、ゴードン在学時の話。

 

 ニナは普通の女の子だった。

 ニナは特に優秀というわけではなかった。

 魔力量は160程度で、そこまで多いわけではなかった。そして魔術も中級程度しか使えず、上級の魔術なんて1つも使えなかった。

 だが、そんなニナにも得意な魔術があった。

 それは、幻惑魔術、夢幻魔術だ。

 この2つの魔術は一般の魔術ではなく、特殊な魔術に分類される。特殊な魔術に分類される魔術というのは、どれも歴史で何かやらかしたを作り上げた魔術や禁忌とされる魔術が大半だ。

 だからこそ、そんな特殊な魔術を得意とし、逆に一般の魔術があまりできないニナは、ゴードンではかなり避けられたり、人によっては嫌われていた。

 ニナを嫌っていた人物の中には無視だけに留まらず、物を隠したり、机に落書きしたり、陰口を叩かれたり…そんな日々がが毎日続いていた。


 ある日の放課後、ニナがいつも通り寮に帰ろうと準備をしていた。


(明日は大切な提出物の提出日だから、早めに寮に戻って準備しないと…)


 明日は魔術試験の日だ。魔術試験の結果次第で、待遇が上がることもあるし、逆に下がることもある。

 ゴードンの生徒にとって、魔術試験とは自分のこれからの学園生活を左右する大事な試験なのだ。

 ニナは帰る準備を終え、教室から出ようとしたが、足を止めた。


「よぉ」


 その原因はこの生徒だ。

 この生徒は教室の扉の前にもたれかかり、いつにも増して気持ち悪い笑みを浮かべていた。


「明日、お前のクラスは魔術試験なんだってなぁ?」

「それがなんですか?」


 生徒は笑みを浮かべたまま、1枚の紙を取り出し、ニナに見せた。


「これ、な〜んだ?」

「!それ、私の!」


 それは魔術試験に必要な書類の中でも重要な1枚だった。

 魔術試験では、受ける前に重要な書類を提出する必要があり、その書類と共に審査を受けるのだ。


「どうやってその紙を…」

「なぁに。俺は交友が広いからな。

 女子の誰かに頼めば簡単に持ってきてくれる」


 生徒は笑みを崩さないまま、紙を皿回しをするかのように回し始めた。


「…何をするつもり?」

「ん?何そんな簡単なことを聞くんだ?

 決まってるだろ、燃やすんだ」


 燃やすんだ─その言葉に、ニナは一瞬思考が止まった。

 生徒は詠唱し、紙を回していないもう片手に小さい火の玉を発生させた。

 そうして火を髪に近づかせようとしたところで、ニナの頭が回り始めた。


「やめて!」


 ニナはやめさせようと走り紙を取ろうとしたが、生徒は身をかわして難なく避けた。


「んま、どうせお前なんか落ちるだけだ。

 だったら最初から受けさせないでやるよ」

「やめて…!」


 生徒が燃やそうと火に近づけ、ニナが半泣きで悲痛の声を出した。

 すると、突如紙が生徒の手から滑った。

 そして、ゆっくりとニナの方に近づき、止まった。

 ニナは何が起きたかわからず混乱していると、ニナとは反対の扉の方に何か見えた気がした。

 そこを見ると、自分と同じくらいの少年が立っていた


「さて、女の子を泣かせようとするなんて、礼儀がなってないんじゃないかな。

 知ってた?今の時代はレディファーストなんだよ」

「んなもん知ってるに決まってるだろ」

「だったら君は配慮の足りない人ってことだね」

「言わせておけばベラベラと言うな?」


 生徒が詠唱し火の魔術を少年に放つと、彼は片手を掲げた。

 すると、火球は見事に少年の片手に吸い寄せられていった。


「成功だね」

「な、何をした!」


 生徒が驚きの表情で少年を見ると、少年は一瞬不思議そうに首を傾げ、「あぁ」と相槌を打った。


「君の魔術の魔力を吸収したんだ」

「は?」

「分かんないならいいや」


 ニナ側の扉の逆側にいた少年は一瞬で生徒に距離を詰め、生徒の目の前に立った。


「なっ、おま─」


 ドゴッ、という鈍い音とともに、生徒が倒れた。

 少年がニナの方を振り向き、ニナが身構えると、少年は紙をニナに見せた。


「これ、魔術試験の書類でしょ?

 管理はちゃんとしなよ」


 少年は「えっへん」と笑顔で言いながら、ニナに手渡した。

 これが、ニナと彼…ミリア・アルトとの初めての出会いだった。

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