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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第七章:学園祭編
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第八十八話:お兄ちゃん

 ミリアは星空を満足するまで見た後、両部屋に戻ってきた。寝るためだ。

 今日は色々やったから疲れているのだ。

 早く休まなければ。

 ミリアは簡単な寝る前の準備と着替えだけすると、すぐにベッドに横たわった。

 ミリアはこれまでの思い出を思い出すことにしてみた。そうすれば、少しずつ眠くなっていって、自然と寝れるだろう。


 * * *


 ミリアには大切な#がいた。

 ###はミリアの最愛の人物だ。

 #はミリアよりも魔術の才能も腕も知識も下で、ミリアに勝てるところなんて何もないような人物だった。

 でも、1つだけだ、ミリアにはないものをその人は持っていた。


 ミリアはその人との会話を思い出した。


「ねぇ、なんでそんなに頑張れるの?」

「###のためだよ」

「なんで?あたしのほうがつよいじゃん」

「強くてもどうしようもならない時だってあるんだ」

「ふーん。そんなもんなんだ」

「うん、そんなもの」


 その人との思い出は数え切れないほど多く、濃い。

 グレイシーとフラムやネロとメロ、ニナにモナカ…そんな、親しい人物たちよりとは比べ物にならないほどの記憶。

 ###はミリアより弱かった。そのくせ優しくて、見栄をはっていた。

 だから、あんな結末になった。


 * * *


「ん…」


 ミリアは頬に弱い感触を感じて起きた。


「どうした?うなされてたぞ〜」


 肩の上を見ると、そこにネロが乗っていた。

 眉を下げ、心配そうな鳴き声を出す。


「…なに言ってるの、ネロ。

 ぐっすり快眠だったよ」

「…嘘は良くないわよ」


 ミリアのお腹のうえに乗ったメロが「ミャ〜オ」と小さく鳴いてから言った。

 ミリアは2匹の頭をわしゃわしゃと撫でた。


「む〜、茶化さないでよ」

「そうだぜ、本当に大丈夫だったのか?」

「…うん、大丈夫大丈夫。

 だから2人は安心して寝てて」


 メロとネロは、しぶしぶ引き下がっていった。

 メロが寝、ミリアがその様子を見ていると、ネロが振り返った。


「本当にどうしようもない時は言えよ。ほぼ家族みたいなもんなんだから」

「ありがとう。そうするよ」


 ネロがすやすやと寝たのを見た後、ミリアも寝ようとした時、小さな足音が聞こえた。

 その足音はだんだんとミリアの方に近づき、止まった。

 そして、ミリアのプライベートゾーンとして区切られていたカーテンがゆっくりと開けられた。


「…ミリア、起きてる?」

「ニナ?どうしたの、何かあった?」

「そ、そうじゃなくて…」


 ニナが来た理由に心当たりもないため、首を傾げていると、一つ心当たりが思い浮かんだ。


「舞踏会楽しめた?」

「…楽しめるわけないでしょ」

「?どうしてさ」


 ニナはミリアの手を握った。


「今夜の舞踏会、一緒に踊らない?」

「…ニナ、僕以外にも沢山踊る相手くらいいたでしょ?」

「確かに、私を誘った人は居たわ。けど全部断った」

「どうして」


 ミリアは純粋な疑問を投げかけた。

 ニナは少しばかりの沈黙の後、呟くように語りだした。


「ミリア、ゴードンの時、私を助けてくれた時のこと、覚えてる?」

「…うん。しっかり覚えてるわけじゃないけど」

「そう。

 …私はね、学園でイジメられてたときは、毎日地獄みたいな気分だった。毎日物を隠されて、買ったノートは破られて、毎日いわれもないことを言われて…

 私の人生は、ミリアに助けられてから大きく変わった。ミリアの後ろをついて行って、ミリアの優しさと強さと弱さを知って、対等に立って、支え合いたいと思ったの」


 だから、と前置きして、暗闇のなかでも分かるほど顔を赤く染めて、ニナは告げた。



「私は、ミリアが好き」



 ミリアは目を丸くして驚いた。

 まさか、告白されるなんて思わなかったから。

 ニナもモナカと同じく、自分から離れ成長していくものだと思っていたから。


「だから、私はミリアと踊って?

 私を惚れさせた責任を取ってよ」


 ミリアはニナの手を握り返した。

 特に意味はないはずなのに、何故か強く握ってしまった。

 ミリアは力を緩めてから、ニナに言った。


「ニナ、本当に僕でいいの?」

「うん…ミリアじゃないと嫌」


 * * *


 2人は校舎の外、表庭に出た。

 そろそろ終わる時間に近づいてきているようで、人もあまり多くはない。


「もう少し早く来てれば、見せびらかせたのに」

「ははは…でも人がいたら緊張してたかもだしよかったんじゃないかな」


 そんな痴話話をしながら、2人は踊り始めた。

 ダンスにおいて、男性は女性をエスコートするのが当然だ。

 だが、今回ミリアはニナのダンスに合わせる形で踊った。

 ニナはダンスが上手いから、ミリアが変にダンスを踊らない方がいい。


「ねぇ…楽しい?私は楽しい」

「僕も楽しいよ」


 ミリアが楽しいと感じるものには2種類ある。

 1つは一人で楽しむもので、もう1つはみんなで楽しむものだ。

 ミリアはダンスは得意ではないが楽しいと感じている。相手が親しい人物ならなおさら楽しい。

 ミリアが流れで踊っていると、曲が終わった。

 ニナはもの惜しそうに手を離した。


 * * *


 ミリアとニナが部屋に戻り、寝る準備を始めた。

 ミリアは準備を終えると、ニナにこういった。


「今日はありがとう」

「私こそ…ありがとう」


 ミリアがプライベートゾーンに入ろうとすると、服の袖が掴まれた。

 振り返ると、ニナが恥ずかしそうに顔を半分隠しながら言った。


「もうちょっと、甘やかして」

「いいよ」

「それじゃあ、今夜、一緒に寝させて」

「…分かったよ」


 ミリアはニナを自分のベッドに入れた。

 ミリアもベッドに入ると、ニナは体を擦り寄せてきた。

 ミリアはそれに何かを言おうとしたが、やめた。


(少しぐらい甘やかしてもいいか)


 ミリアはそう思いながら、すやすや眠るニナの寝顔を見た。


(…良かった…あなたを見てくれる人は、まだここに居たよ…


 …お兄ちゃん)

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