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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第七章:学園祭編
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第八十四話:歴代最高の演出、そして幕引き

(なに?いったい何が起こっているの?)


 メランに横抱きにされたミディアムはただ混乱していた。

 自分は火薬を倒し、メランに恥をかかせようとしていただけなのに、火は膨れ上がり、崖のセットを焦がした。

 柱が焦げてしまえば崖のセットはいとも容易く崩壊する。

 そうしてミディアムは地面に叩き落とされることを覚悟したが、地面に叩きつけられるものとは違う感触がした。

 ケホケホと煙を出してから目を空けてみると、見えたのは深い青空だった。


「………?」

「ふー、ギリギリセーフっすね!」


 その声はとても近くから聞こえた。そしてそこで、ミディアムは自分はメランに横抱きにされていることに気づいた。


(は?なんなんのよこれ…)

「振り落とされちゃうっすから、しっかり掴まっててくださいっす!」


 どういうことなの、と問いかける暇もなく、メランはミディアムを横抱きにしたまま剣を持ち、暗黒龍に飛びかかった。


「『暗黒龍!これで終わりだ!』」


 剣が暗黒龍の眉間を貫いた。

 暗黒龍を動かしていた者達は、龍の断末魔の声を流しながら舞台袖へと引っ込んでいった。


「『こうして、英雄王バルスは暗黒龍を討伐し、この地にレティーラ王国を築いていくのでした』」


 ナレーターがそう語れば、観客達は歓声と拍手で沸いた。

 前半とは比にならない。全員が舞台に夢中になり、そして熱中していた。

 歓声と拍手で我に返ったミディアムは、まだ自分に最後の台詞があることを思い出した。

 ラストシーンで、シーナはバルスを賞賛し、そしてキスを送るのだ。

 フィリップ以外の男にキスをするなど不愉快甚だしいが、それでも自分がシーナ役になった以上は己の役割を果たさなければならない。

 ミディアムは込み上げ続ける怒りと不快感を押し殺し、美しい笑みを浮かべた。


「…『バルス様に、聖霊の祝福を』…」


 メランに横抱きにされたまま、ミディアムはメランの頬にキスをしようとした。勿論、寸止めにするつもりだ。

 だが、ミディアムが唇を近づけると、グレンはサッと首を傾けてエリアーヌから遠ざかる。

 そうしてグレンは、唖然としているエリアーヌの耳元で小さく囁いた。


「そういうのは、好きな人にとっとかないとダメっすよ」


 ミディアムはサッと白い頬を薄い朱色に染め俯く。

 観客達はミディアムが恥ずかしさから俯いたように見えているだろう。しかし、実際のミディアムの内心は、怒りと屈辱で満ち溢れていた。


(許せない…この私によくも恥をかかせたわね…

 絶対に許さないわ、メラン・バグオール)


 舞台が盛大な歓声と拍手で包まれる中、ミディアムは怒りの炎を、鍋を煮るようにグツグツと燃やしていた。

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