第六話:屋根裏部屋の七賢者
セレスティナに来て、ミリアは流石だと感じた。
ミリアの通ったゴードンよりも、はるかに立派で美しい施設が揃っていたからだ。
流石は、貴族が通うに相応しい学園である。
この学園は全寮制を採用している。二人一部屋が基本であるが、成績優秀者上位十名・活動実績保持者・多額の寄付金の納金者は、特別に一人一部屋が与えられる。
イザベルは当然、家が多額の寄付金を納めており、西部都市の令嬢のため一人部屋である。
しかし、ミリアとニナは何の功績もないため勿論二人部屋となる。
だが、男女で相部屋というのは基本禁止されている。
そこで、『編入生は学園長に挨拶しなければならない』というルールを利用し、2人を相部屋にさせよう、とイザベルは考えた。
イザベルは対面に学園長が見えるようにソファの片隅に座り、ミリアとニナを両隣に座らせた。
何故2人をなぶる役のイザベルが、2人を立たせず、座らせているのか?
イザベルは2人をなぶる役だが、この場面では編入生を立てなければいけないからだ。
「学園長、わたくしは当、然、個室ですわよねぇ?まさかとは思いますが、この者達と相部屋…なんてこと、ありませんわよねぇ?」
イザベルの親が統べるバルドン伯爵領は、東西南北の四大都市の中でも最も瞬間的な危険度が最も高い領地である。
それは他の都市よりも竜や獣による被害の頻度が低いものの、厄災や翼竜の群れによる被害が瞬間的・持続的に続いていくためである。
故に、三大学園や商会には多額の寄付金を出し、投資することで、バルドン伯爵領に何かあった時用の金集めを行っている。
当然セレスティナにも多額の寄付金をしているので、これは茶番劇と言えよう。
「勿論、バルドン伯爵令嬢に相応しいご部屋をご用意されております」
「まぁ! ご配慮感謝いたしますわ。 そうそう学園長、まさか、この、泥臭い子を別の二人部屋にしようとお考え? あぁ、同室の方が可哀想!
貴方たちなんて、同室で仲良く傷のなめ合いでもしてるのがお似合い。 …でしょう?」
イザベルは立ち、二人に振り返りながらそう言った。
ミリアは喉が焼けて喋れない設定なので、喋らずに首を振った。
ニナもそれに付随するように首を振った。
「本人方もこのように申していますわ」
イザベルは学園長に最後のダメ押しをした。
こうして、2人は相部屋、そして屋根近くで過ごすこととなった。
育ちのいい貴族の子女ならあまりの待遇の酷さに失神すること間違いなしだが、贅沢に暮らしていなかった2人にとってはちょうどいい部屋だった。
学園長室を後にすると、イザベルは声を張り上げて喋り始めた。
「あぁ! なんて、グズグズしているのかしら! これが我がバルドン伯爵家の人間など…。
恥ずかしくて声も出ませんわ! わたくしはこれから入学式に参加しますけど、編入生はクラスに行くのでしょ? くれぐれも、我がバルドン伯爵家の家名に泥を塗らないで頂戴!」
イザベルがこうしてバルドン伯爵家を連呼するのは、2人がバルドン伯爵家に属するものだと示す事で、イザベルの態度が、2人の地位の低さと訳ありであることを示すのだ。
2人はイザベルの嫌われるかも知れない態度に感謝しながら、コクコク首を動かし、クラスへと向かうのだった。
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