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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第六章:大会編
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第七十一話:感じた違和感

 カイルは大会後の交流会には参加せず、控室で本を読み、自分の気持ちを落ち着かせていた。

 もしカイルがあの屈辱を受けた後に落ち着かせないままモナカのいる交流会に出ればカイルは自制できずにモナカに当たっていただろう。

 そしてローディン教諭にそれを見られて、他校との交流時に問題を起こしたとされ、停学処分が下されていただろうから、カイル的にはこれが最善だった。

 カイルが休んでいると、廊下から走っている足音が聞こえてきた。

 気にせずに次のページを開くと同時に、扉が弱々しく開いた。


「誰です─」

「あっ、カイル…」


 入ってきたのはモナカだった。

 カイルは息切れしながらわなわなしているモナカにイラつきを隠しながら冷たい視線を向けた。


「どうしたんですか?こんなところに来るなんて、珍しいですね」

「う、うん。ちょっと色々あって…」

「何があったんですか?」


 そう聞くと、モナカはこれまで何があったのかを説明し始めた。

 話し終えたところで、モナカは思い出したように声を出した。


「カイル、昔はチェスしてなかったけど…もしかして、今は魔術やってないの?」

「…やっていますよ。チェスは友人から勧められて始めただけです」

(好きでやってると思うな)

「そうなんだ、頑張ってるんだね」

「………」

(相手を下に見るのがそんなに好きなのか)

「…カイル?どうしたの?」


 モナカからの言葉に怒りを我慢するのも限界になった。


「ふざけてるんですか?」

「え?」

「僕は…ゴードンに入る前から魔術に人生を捧げた。七賢者になるためだ。

 そんな僕に、貴方は七賢者になったことを自慢して、本当にお闇が好きな人だ!」

「わ、私、そんなつもりじゃ…」

「貴方は、いつもそうだ。

 何の力も持たないフリをして、積み上げた努力を何の躊躇もせずに踏みにじる。

 あの日も、内心僕を嘲笑っていたんでしょう?」

「そ、そんなこと、おもって、なんか…」


 カイルの喉から冷たい声が出た。


「思っているんでしょう?

 思っているなら、魔術を何も教えていなかった僕に、七賢者になったことを見せつける訳がない」


 モナカが俯くと、カイルは好機と見、更に言葉を重ねた。


「僕は貴方が嫌いなんですよ。

 分かりましたか?」


 俯いたままのモナカに、カイルは聞き分けの悪い子供を叱るような口調で言った。


「さっさと出ていってください」


 * * *


 トボトボとモナカが出ていってから少し経ち、モナカがある程度控室から離れたことを確認した後に、カイルはモナカが出ていった方とは逆の扉を見た。


「さて…貴方は一体何のつもりですか…

 ─カロライナのエリザ教諭」

「あら、ごめんなさいね。

 でも、君達のような若者の起こすことを見るのはとても楽しいのよ」

「こういうことも見るなら悪趣味ですね」

「よく言われます」


 肩をすくめながら答えるエリザを正面に見据えながら、カイルはずっと感じていた違和感を問いただすように言った。


「─で、貴方は誰です?」


 エリザはその問いの意味が分からないとでも言うように困惑した表情を見せた。


「えっと…カロライナのエリザ・ファンドールよ。

 質問の意味が分からないのだけれど?」


 困惑の表情が消えないまま質問の意味を問おうとしたエリザにカイルは答えた。


「僕は過去のチェスの三校大会にも出場していましたが、エリザ教諭は他校の生徒と会話する程陽気ではありませんでした。

 逆に、自校の生徒でも十分な会話が取れていないような方でした」

「それが違和感?

 私はこの1年、克服できるよう頑張ってきたのよ?」

「そういえば、今年の選手は去年の選手よりかなり弱かったですね」


 カイルは思い出したように言った。


「去年の選手はまだ大会に参加できる学年ですし、辞退することはあり得ない人たちでした。

 それなのに、今年はそれよりも弱い選手達が出ている」

「全員体調不良だったのよ」

「ちなみにですが…去年より今年が弱くなったというのは嘘です」


 エリザは苦虫を噛み潰したような顔をした。

 カイルはそんなエリザを嘲笑うかのように告げた。


「反応が分かりやすくていいですね。

 ちゃんと、今年は去年より弱かったですよ。

 …さて、改めて聞きましょう…

 ─貴方は、誰です?」


 カイルがいつでも詠唱できるように構えると、エリザは顔がドロドロと剥がれ落ちながらも、唇の端を上げていた。

評価、ブクマなど、投稿の励みになりますので、どうぞよろしくお願いします!


説明ですが、カイルの『去年より弱くなった』発言は正しいです。去年より弱いと相手に告げた後、『強くなっていた』と嘘を流して、相手が自然と自白するように促す方法です。

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