第七十三話:キモキモ(助かる〜ぅ)
三校大会にて例の暗殺者が捕縛、連行されてから二週間が経過した。
三校大会最終日に行われるはずだった演奏部門は暗殺者の到来によって急遽中止、学園も休校となった。
その時のニナはかなり不満を持っていたようで、休校中、寮部屋で不機嫌な様子をかなり前面に出しながら、暗殺者への文句を垂れ流していた。
そんなこんなで学園祭が残り二週間に迫り、生徒会や運営会は勿論、生徒達も準備に勤しんでいた。
貴族学園であるセレスティナの学園祭は、普通の学校と、やること自体はあまり変わらない。
セレスティナの学園祭は主に午前の部と午後の部で行われる。
午前の部では、各クラスが出し物を企画して行い、午後の部ではレティーラ王国で最も任期で有名な演劇が行われる。
そして今、教室では何の出し物をするかの会議が行われていた。
* * *
「さて、皆さん。
自由に意見を出し合ってください」
クラスメイト達を仕切るのはユーベルト・ユーメルト。このクラスで最も人気が強く、成績も優秀で頭も回る生徒だ。
「ホラー系はどうかしら?」
「迷路はきっと楽しいですよ」
「クイズもいいのではないでしょうか」
様々な意見が出る中、ミリアは口を閉じていた。
何故か?
(面倒臭いなぁ…案出ないから口出しても意味ないけど。
それにしても、眠い。最近寝不足だったのかな?)
ミリアが眠らないように必死に目を擦っていると、ちょうどユーベルトと目が合ってしまった。
「ミリア君、何か案がありそうな顔をしてるね、言って見ないかい?」
「へっ?」
「さぁ、教えてくれたまえ!」
ミリアは突然のことに驚き、混乱していると、頭の中に何かが思い浮かんできた。
「め、メイド喫茶…なんて、どうでしょう…?」
メイド喫茶、と答えると、周りはしんと静かになった。
(よ、よし!注目されてるけど危機は脱したぞ!)
ミリアがそんなふうに安心していると、生徒達はお互いに顔を見合わせた後、ユーベルトに視線を移した。
ニナとアリエルはミリアを見つめ、感心したように「ほぉ」と声を出している。
「メイド喫茶…意外といい案なのではないでしょうか?」
「準備も楽だし、いろんな人も楽しめる」
「それにうちのクラスは綺麗な女子生徒も多いから、結構いいと思うよ」
教室内がメイド喫茶案に賛同する空気になり、ミリアは内心焦っていた。
(メイド喫茶なんてふざけた案だよ?ホントに大丈夫?!
これ、案出した人が自腹で夜愛するとかないよね!?)
一人だけ費用の心配をする場違いな生徒はいたが、どんどん話は広がっていき、結局メイド喫茶を行うようになった。
そして、今は誰が何を担当するかの話になっていた。
「それじゃ、多数決の結果として、マイル嬢とフェリル嬢が看板メイド、その他の女子生徒達はさっき決めた通りに動いて。
あと…ミリア君にもメイドコスしてもらうからね?」
「………は?」
ミリアはユーベルトが言った言葉に自分の耳を疑った。
「ええ、ミリア君って女子生徒と身長は同じくらいだし」
「それにミリアは可愛いもの!」
アーリアとニナが追い詰めるように言うと、またもや教室は賛同の空気でいっぱいになった。
「確かに…彼って女顔だから初対面だと男女の区別がつかないくらいなのよ!つまり─」
「化粧をすれば女子にしか見えない…!」
女子生徒は感嘆の声を上げ、男子生徒まで興奮したように声を荒げている。
「最初はあまり良くないと考えていたが、よく考えれば男の娘ってめちゃくちゃいいじゃないか!」
「俺、新たな道を開いたかもしれない…」
(うっわ…キモすぎ…)
「見たか聞いたか!今の軽蔑の視線と冷たい言葉!」
「ああ!とても心にクル!」
(コイツら女の格好ならなんでもいけるのか?
変態じゃん…)
「ミリア、声出てるよ」
「え、マジ?」
隣に座っていたニナから声をかけられたことで、ミリアは自分の心の声がダダ漏れになっていた事に気づいた。
そして改めて、先ほどの罵倒で興奮していた男子生徒達に軽蔑の視線を向けた。
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