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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第六章:大会編
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第六十七話:vsカロライナ…ファイッ!

 代表挨拶が終わり、選手たちが控室へと向かった後。会場の一角には来賓用の控え室に三校の引率教師が集まっていた。

 机の上には簡単な紅茶に茶菓子。

 和やかな雰囲気だが空気は張り詰めている。


「さて……今年も無事開催できましたね」


 ロベルトは、紅茶のティーカップを置き、穏やかな口調で切り出した。


「三校大会。

 形式は変わらずとも、生徒の質は年々上がっている」

「ええ、本当に。今年も粒ぞろいですね。どこが勝ってもおかしくはない」


 カロライナ校の教師、エリザが答えた。ゴードン校の引率、ローディンも頷く。


「せっかくです。互いにの注目選手を語り合いませんか?」


 ◇ ◇ ◇


「では、まずはセレスティナからいきましょうか」


 ローディンが視線を向ける。


「注目株とはいきませんが、安定なのはエリック・マージェでしょう。彼は去年も出場し実力の高さを見せつけました」

「確かに彼を選んだ選択は安牌でしょうね。

 それより私が驚いたのは、一昨年に中堅、去年は大将だったオベール・トランペットが今年は参加させなかったことですかね」

「実は今年も誘ったのですが、彼女は自ら辞退しましてね…。ただ、今年は、大将は彼女ではないのですよ。彼女の代打としてエリックが出ましたから」


 エリザは目を開いて驚いた。

 そしてローディンは驚きながら口髭を撫でた。


「セレスティナの無名の大将は実力でオベールに勝ったと?」

「はい。彼、ガーノルド・ヴィンテージはチェスの天才ですね。彼を落とすのは、我々教師陣でも不可能かもしれません」

「厳しいロベルト教諭に、そこまで言わせますか…」


 エリザは感嘆の目を向けた。それに気付いたロベルトは宣言した。


「今年はセレスティナの圧勝ですよ」


 そしてそれを聞いたローディンは鼻を鳴らした。


「それは、まだ分からない」

「カイル・ラックゴール…やはり今年も出ましたか」

「一昨年は中堅でオベール嬢に負けましたが、去年大将戦でリベンジを果たしました。今回オベールとやりたがっていたので…残念に思っているでしょうね」

「彼なら、ガーノルド相手にステイルメイトまでは確実に持っていけると?」

「ステイルメイト?いいや、彼は勝つつもりですよ」

「それは挑戦状と受け取っておきますよ」


 エリザは腕を伸ばした。


「ウチも聞いてくださいね。最後は、カロライナの注目株はダーウィン。

 今年が初参加の一年生です」

「一年生、ですか」


 ロベルトが少し驚いたように眉を上げる。


「ええ。

 まだ粗削りですが……直感が異常に鋭い」

「直感?」

「説明ができない判断を、正解に持っていく。

 感覚で当てるタイプです」

「なるほど、しかし感覚派ですか。意外ですね」

「私も、自分ながら意外だと思っていますよ。

 ただ、彼は単純な感覚派じゃない」

「と言うと?」

「彼は感じ取った機を逃さない。感じ取ったのが狙いなら狙いを的確に潰し、機会なら確実に追い込む。

 彼は感覚派であること以上に技術派ですよ」

「なるほど、エリザ教諭が彼を選んだ理由が分かりました」


 ローディンが相槌を打つと、エリザは少し困ったように息を吐いた。


「ただ、本人が頑固でしてね。本来なら大将になってほしいほどの実力者だったのですが、本人が頑なに、『自分は1年だから』と、先鋒を指名したんです。

 流石に私も驚いてしまいました。

 そんなことですので、先鋒のお2人には悪いことをしましたね」


 エリザが珍しく饒舌になっていると、ロベルトは険しい顔で告げた。


「モナカ・オルフェを先鋒にしたことを、私は後悔していない」

「…なるほど。…挑戦状ですか。

 楽しみですね、どちらが勝つのか」


 * * *


 ミリアは大会の進行を務めていた。

 大会中は観戦する事もできるため、セレスティナの生徒が多く観客席に座っていた。

 そしてゴードンの大将カイルは食い入るように先鋒の席を見ていた。

 最初の試合はセレスティナ対カロライナ。


 試合が始まるやいなや、最初は堅実に指す大将、中堅の盤とは違い、先鋒の盤は早くも攻めていた。


 試合が始まってから5分、観客席で待機している生徒達は先鋒戦の異常性に気づいた。

実力差があるのは大将戦、拮抗しているのは中堅戦だった。

 だが、先鋒戦は互いにレベルが高く拮抗している。

 だからこそ、3試合のなかで一番見どころのある試合が先鋒戦になった。


 モナカの手は早く、順番が回ってから3秒以下で指す。

 そのため、相手に考えを惑わせ、またプレッシャーも与えられる事もできる。


 ダーウィンが攻めるとモナカはそれを捌く。モナカが隙を突き攻めに出れば、ダーウィンもまたそれを捌く。

 先の何手も、またその先の手も、またまたその先の手を互いが読み合う。


「消耗戦だな」


 誰かが呟いた。

 その通りに、互いに駒を消費させながらの戦いになっていった。ただし、ダーウィンの方が減りは大きくなっていった。


 5分後に大将戦が終わった。

 そのまた10分後、勝負は決まった。


「チェックメイト、ですっ」

「…参りました」


 モナカの宣言に、ダーウィンは手に力を入れながら項垂れた。


 その後1時間弱かかった後に中堅戦はカロライナが勝利を収めた。

 結果は2勝1敗でセレスティナの勝ちだった。

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