第六十二話:準備
ミリアが戻ると、
「……驚いたぞ。
まさか、お前にそんな一面があったとはな」
エリックがからかうように言った。
「まあ、これでミリアさんの落ち着きぶりように納得できましたね」
「だね、ミリアが保護者として年下の面倒を見てたら見につくでしょうね」
ミリアは聞かずに席に座り、書類を取った。
そんなミリアにラークは聞いた。
「アルト監査は昼の魔法戦のことは知っているのか?」
「はい、あいつらが聞いてもないのに、自白してました」
「なるほど。…個人的に気になったのだが、あの二人に魔術を教えたのは君か?」
「いえ、本を与えただけです。勝手に、育ちました」
「そうか。個人的な質問への返答、感謝する」
生徒会室が雑談の雰囲気に向かう前にフィリップが声を出した。
「あの2人とミリア君に関してはこれぐらいにして、本題─三校大会の話をしよう」
フィリップの一言で、生徒会室の空気が切り替わった。
「三校大会は、来月の第一週だ。
準備期間は実質三週間。生徒会としても、もう動き始める必要がある」
机の中央に、いくつかの資料が置かれる。
表紙には簡素に「三校大会概要」と書かれていた。
「今年の開催校はセレスティナ。
競技種目は例年通り――言論、チェス、演奏の三部門だ」
「面倒なのは相変わらずかよ」
エリックが肩をすくめる。
「特に言論は、審査基準の調整が毎回揉める」
「だからこそ、生徒会が介入する必要がある」
フィリップはそう言い切ってから、ミリアに視線を向けた。
「アルト監査。
今回の大会準備、君にも関わってもらう」
ミリアが静かに資料を見ながらフィリップは続けた。
「全体監査。
各部門の運営計画、選手選抜の妥当性、資料の整合性確認」
「分かりました」
フィリップは頷き、次はエリックとモナカを見た。
「チェス部門の出場者はもう決まっている。エリックとオルフェ嬢、それと一般生徒のガーノルド・ヴィンテージ。
言論大会は各学年1人ずつだが候補者か集まった段階で止まっている。
演奏大会は数名を除いて未決定だ。
皆の候補者や選定基準、審査基準についての見解を述べてくれ」
それから大会に向けての話し合いが始まった。
* * *
数十分をかけて話し合いをしていると、いつの間にかチャイムが鳴った。
「そろそろ結論といこうか。
エリックとフェリル嬢は演奏の審査基準を、ラークとメアリー嬢は言論の候補者の選定、アルト監査とオルフェ嬢にキャンベル庶務は全体進行表の再構成を頼む」
全員が頷いたところでフィリップが思い出したように言った。
「期限は三日後。意外と早いから急ぎつつもミスなく気をつけてくれ」
その言葉が解散の合図となり、生徒会メンバーは生徒会室を出ていった。
ミリアは自室で資料を抱えながら、ふと頭の片隅で思う。
(……あの二人、絶対に大会を見に来る。
…大変な時期だから勘弁してくれよ)
嫌な予感を無視するように、ミリアは三校大会の資料に目を落とした。
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