第五十七話:踊り叫び自由な猫ども
夜更け頃、祭りの余韻が残る中、ミリアは寮の窓を静かに開けた。
「……ただいま」
返事はない。
だが次の瞬間――
「にゃあああああああああああ!!」
「ぐぇっ」
黒い弾丸が胸元に直撃した。
「ネロ…」
ネロは勢いそのままミリアの肩に飛び乗り、顔をぐりぐりと擦り付けてくる。
「遅い!遅すぎる!どこ行ってたんだよ!」
「ちょ、ちょっと待て、重……くはないけど勢いが……!」
そこへ、遅れてもう一体。
「……みゃあ」
白猫――メロが、静かに、しかし確実に足元に現れた。
そして無言でミリアの足を踏みつけた。
「……」
「……」
ミリアは悟った。
(これは…怒ってる…何に?)
「……ごめんなさい」
ネロは「ふんっ」とでも言いたげに顔を背け、
メロはじっと見上げてくる。圧が強い。
「ちょっと出かけただけだろうに。お前たちはこんなのにも待てなくなったのか?」
「さっきまでトランプしてたけど暇になってたんだよ!」
「暇すぎて暇すぎて仕方ないって感じだったのよ?」
「ふ〜ん」
ミリアが適当に聞き流しながら靴を脱いで部屋に入ると、今度は別の音がした。
「おかえりミリアー!」
寝間着姿のニナが、なぜかでストレッチをしていた。
「……何してるの?」
「待ちくたびれて体が固まったからほぐしてた!」
「祭り行ってなかったの?」
聞くと、古代魔導具の拳を片付けてからすぐに帰宅したらしい。せっかくなら祭りも見ていけばいいものを。
「てか、待つ必要ない…」
「あるよ!
ミリアが一人でお祭り行くとか、絶対何かしてたでしょ〜!」
「偏見がひどい」
「事実だよ?ね、2人とも?」
ニナが肯定を促すと、ネロとメロが同時にコクコクと頷いた。
「ほら、2人も同意してる」
「裏切り者が二匹……」
ミリアが呟くように言うと、自分の保身が最優先の猫達は逃げていった。
* * *
ミリアが買ってきた本を机に置くと、ニナが即座に反応した。
「えっ、祭り行って本買ってきたの?」
「人にはそれぞれ別の楽しみ方がある」
「祭り=屋台じゃないの!?」
「私は知的なんだ」
「自称ね」
ネロは机に飛び乗り、本の上にどっかりと座った。
「……降りなさい」
「嫌だね。今日からこの本は俺様の便所なんだ。普段のより悪いけど、ここは俺様のテリトリーだ、いいな!」
メロはというと、ミリアの膝の上を確保して丸くなっている。
「ネロ…」
「ん?なんだ?」
「この2冊はグレイシーとフラムへの贈り物なんだ。
後は…言わなくてもわかるね?」
ミリアはネロを睨んだ。
するとネロは諦めたように本から離れた。
「分かったよ」
「いい子だ」
ミリアがワシャワシャしていると、ニナはミリアの顔をじっと見て、疑うような笑みを浮かべた。
「何?」
「今日、何かあったでしょ」
「……」
ミリアは一瞬、言葉に詰まった。
だが、すぐに首を振る。
「別に。
ただ祭りを見て、少し歩いて、本を買って帰ってきただけ」
「ふーん」
「信じてない顔だな」
「だってその割に疲れてるんだもの」
ミリアは猫を撫でながら小さく息を吐いた。
「ちょっと考え事をしただけ」
「ふーん……」
ニナはそれ以上踏み込まず、急に手を叩いた。
「よし!じゃあお風呂!」
「何で?」
「はい決定ー!」
「私に決定権は無いのかな?」
* * *
風呂上がり、ニナが髪を拭いていると、ネロとメロが同時に現れた。
そして当然のように、濡れた髪に突撃した。
「ちょ、やめなさい!」
「乾かしてやるからその手をどかせ」
「人の「逆に濡れるのよ!」
そこへニナ。
「はいはい、ドライヤー持ってきたよー」
「助かる」
風が当たると、ネロは即座に逃走。
メロは耐えたが、最終的に耳を伏せて退散。
「…」
ミリアは猫達の自由さに羨ましがりながら、その日を終えた。
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