第五十話:オカマだ!
─ローラン視点─
私は身重の妻を残し、泣く泣く『黄昏の預言者』─マリン・フォルゼマートの館に滞在し、古代魔導具の封印解除作業を待っていたところ、古代魔導具が暴走したため予定を一時中止し対処していた。
その途中に『黄昏の預言者』が古代魔導具を盗み出したうえに暴走させた犯人そして上空で古代魔導具を暴走及び盗み出した犯人を人混みにいることまで特定し、『無情の魔術師』─ミリア・アルトが監視中だ。しかし、人混みの中では犯人だけを狙うことは困難を極める。
そのため、何らかの手段を使い、犯人を人目のつかない場所に誘導させるか、他人から犯人を見えなくさせるかのどちらかが必要だ。そして後者の場合であれば、幻惑魔術という幻術に分布される魔術を得意とする『夢見の魔女』─ニナ・ミラージェの協力さえ得られれば簡単におこなえるが、彼女は泥酔しマリンの館で寝ている。
その彼女を叩き起こし、現場に連れて行くのが今回の私の役目だ。ちなみに結界は今は付けても効果はないので外している。
「ほら、起きなさい」
肩を叩くが起きない。これは想定内。
次は解毒魔術をかける。
医療系の魔術…治癒魔術や解毒魔術というものは、被術者が魔力中毒になる可能性が高いため禁術指定されているが、治癒魔術と比べて魔力中毒の度が低い解毒魔術は七賢者は使用を許可されている。暗殺を防ぐためだ。
「さっさと起きなさい」
…起きない。何故?
まさかこの小娘、酔いが覚めているのに寝るつもりなのか?
私は肩を揺らしたがコイツは起きなかった。
「一回締めますか…覚悟なさい」
私は拳に結界を乗せ、その状態で『夢見の魔女』の頭を殴った。
「いぃったぁぁー!」
「ようやく起きましたか、『夢見の魔女』殿?」
「な、何ですか!後輩が先輩に手を出すなんて、捕まえますよ!」
「捕まえられるなら捕まえてご覧なさい」
「クッ!コイツ…!私じゃ自分に勝てないと下に見て…その通りだけど!」
「心の声のつもりですか?全部聞こえていますよ」
私は呆れながらもまた拳を構えた。
「はい!何をすればいいのでしょうか!」
「話が早くて助かりますよ。実は古代魔導具が盗み出された上に暴走しましてね。その犯人を捕らえるために、あなたの協力が必要なのですよ」
「その内容は?」
「簡単です。空から犯人周辺の人物たちに幻術を使い、犯人が見えないようにしてほしいのですよ」
「了解です。…私空飛べないので、運んでください」
「お二方とも後輩使いの荒い」
お前がな、と聞こえた気がしたが、飛行魔術で師匠のもとまでとんで行った。
* * *
「師匠、少し遅くなりました」
「いやいいよ。ニナ、早速だけど頼んだ」
「オッケー!」
ニナは二つ返事で了承し、街を見た。
「…誰、をやればいいの?」
「あそこ」
犯人を指指すと、犯人は見えなくなった。
「ついでに固定しておいたから、あそこだけ空中に飛ばせばいいよ」
街を見ると、先ほどまで犯人がいた場所に、後ろの人がぶつかって頭を痛そうにしていた。
「分かった。『結界』は結界を機動、『夢見』は『沈黙』を起こしに行ってくれ」
ミリアは跳躍魔術で空まで犯人を飛ばし、犯人にかけられた魔術を解除した。
「チッ」
ミリアは回避した。
同時に、先程までいた場所に光の矢が放たれていた。
(高難度の魔術を行使するなんて、少々見くびっていたかもしれない…)
「『あら、避けるなんて凄いじゃない、褒めてあ、げ、る。たっぷり、いたぶってあげるからねぇ!』」
「…あはははははははは!
出来るもんならやってみなよこのオカマ!」
左手に装着された古代魔導具に体を吊ったまま、無数の光の矢を放った。
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