第四十六話:焼き鳥にしたい
地震皆さん大丈夫でした?
ミ リ ア は 両 腕 を ニ ナ と モ ナ カ に 掴 ま れ て い た !
「みリ゙あ〜、なんで!わたし、じゃダメなの〜!」
「わた、しが、ヒック、いるのに〜、他のこ侍れせないでくらさいー!」
「おや、師匠も遂にモテ期が来ましたか」
「ローランちゃんも、昔は全然来なくて泣いてたわよね〜。
主に自分のせいっていう自業自得だったけど」
「おや、私に素行の悪い時期があったとでも言いたげですね?」
ニナは普段の真面目な態度から考えられないほど、飲み過ぎたせいで泥酔しているし、モナカは一杯も飲み干していないくせに泥酔し、暑いからと言い羽織を捨て去っている。
そんな状態のニナとモナカはミリアの両腕を掴んで離さないため、ミリアは動くことができない。
ローランは助けてくれると思ったら酒のつまみにしてニヤニヤしている。
ようやくマリンが助けてくれると思ったらローランに火をつけ、喧嘩を売られたローランは自ら墓穴を掘るようにしてマリンを睨んでいる。
そしてマリンはそれを楽しそうに見ている。
年長者が働かなくてどうするのか。
常識人は自分だけなのか。
どうして腕を離してくれない2人は意味のわからない言葉を吐いているのか。
ミリアの頭はショートしそうな雰囲気だ。いや、もうショートを超えて破裂していた。
(どうしてこうなった)
事の発端は昨日の夜だった。
* * *
「おはようございます」
「おはようございます、何の用ですかこんな時間に。
また『結界』からの面倒事ですか?
ええ、そうでしょね、お帰りください。いや帰れ」
ミリアは早口で言葉を返しそして窓の枠に座っていた小鳥の姿をしていたアルファードを投げ出した後に窓を勢いよく閉めた。
ミリアはアルファードが自分達に伝えようとしたことをある程度予測していた。その上でのこの犯行だ。
つい先日、第二王子暗殺未遂の際に、ミリアは一番面倒臭い結界の修復作業をローランに任せた。
風の噂によると小一時間かかり、定時で帰宅して奥さんに会うことが出来なかったらしい。
ローランの妻への愛は本物だ。一歩間違えていれば美人20代後半男性メンヘラストーカーの出来上がりだ。属性が多すぎる。
そんな彼が妻に時間通りに会えず、更に厄介事を丸投げされたとなれば、一つぐらいとんでもない面倒事を託すことはするだろう。しかも実力がある人物なら尚更。
少なくともミリアがローランの立場なら間違いなくする。
という訳で、ミリアはアルファードから逃げなくてはならない。
窓を閉めた以上は、ひとまず安心と見ていいだろう。
「ふ〜、暫く外出は控えよう」
1週間程でもいい。それぐらいあればローランも諦めるだろう。
そうなればミリアの勝ちだ。
そう思いながらベッドに腰掛けようとしたところで、目の前に飛び蹴りをかましている女性姿のアルファードが見えた。目の前はちょうど室内である。
直後、爆音と共に、木材とガラスのの破片が視界に入った。
* * *
アルファードは窓から飛び蹴りをして部屋に入ってきた。本当に頭がおかしいと思う。いや、精霊と人間の常識は同じでないのだからしょうがないといえばそれで終わる話だが、上位精霊、しかもローランの契約精霊なのに、ここまでになるだろうか?
ちなみにアルファードが部屋を入った後に寝ていたネロとメロが飛び起きて、興奮した様子で騒ぎ始めたので、ミリアですら収めるのに苦労した。
しかもその後に廊下に生徒が集まり、更に教師も来たため何とか誤魔化して戻ってもらった。
ミリアはローランに激しく同情した。
「それで、何の用です?」
「こちらです」
アルファードが封筒を差し出したので中身を取り出して読んだ。
「え〜『師匠、いかがお過ごしでしょうか。私は寝不足のせいであまり元気ではありません。
さて、近々隣町のビリーで祭りが行われることはご存知でしょうか?
年一の開催ですので大盛況となるでしょうが、今年は一味違います。
なんと、今年は古代魔導具を使った奉納を行います。私も出向きますが、このような機会滅多に有りませんので、ぜひ師匠も見に来てください』」
奉納というのは、日々恵みをくださる精霊達に感謝を示す行為全般のことを言う。
今回では古代魔導具を使用した魔術の奉納だ。
滅多にないからぜひ見に来てくれと言うが、つまるところ『あの時こき使ったんだから手伝え』ということだ。
そしてもう一通入ってたので読んでみることにした。
『ミリアちゃんへ─』
クシャ。
もう一通は丸めて窓から放り投げた。
ミリアのことを『ちゃん』付けで呼ぶのはあの魔女だけだ。
「ふぅ〜…
誰を巻き込むか…」
ミリアは思案した。
ただ一人で行くより他の人間を連れて行った方が気が楽になる。
「分かった。
ちゃんと向かうからさっさと帰れ」
「承知いたしました」
アルファードは開いた窓から帰っていった。
ミリアは一人、簡単に直した、すぐに風で剥がれ取れそうな窓を見ながら空虚な気持ちになっていった。
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