第四十話:覚悟
これは、メロ経由でミリアの指示がモナカに伝わったときの話。
「…え?」
メロによって伝えられた情報は、モナカを放心させた。
「なんで…アーネが、暗殺者、なの?」
アーネというのはセリアーネ・サザンドールの愛称だ。
そう、メロ経由で伝えられたミリアの情報の一つは、モナカたちの護衛対象である第二王子フィリップの暗殺を企てる暗殺者の一人がセリアーネであるということだ。
セリアーネは、モナカの友達の一人だ。少なくとも、モナカはそう思っている。
* * *
彼女と初めて会ったのは、生徒会の仕事で、学園内の広い平野に行った時だ。
その平野は馬術の選択授業で使われることが多いため、その分広大な場所だ。
学園にはクラブという、放課後に行われる生徒たちによる特別演習のようなものがあり、その一つに馬術クラブがある。
モナカの就いている会計は、各クラブの消費予算の色々を担当をすることがあり、モナカは馬術クラブの現在までの消費予算を記録しに行ったのだ。
「え、えっと…す、すす、すみま、せん」
モナカはたどたどしく、活動をしている馬術クラブの面々に声を出したが、誰にも聞こえていないようで、全員が練習をしていた。
モナカは大きく声を出すか悩んでいた。
(う~、ここは大声を出したら皆さんに迷惑だし、でもしなかったらしなかったで会計の仕事が進まないし…。 どうしよぉ~)
モナカは内心、仕事を目立って今終わらせるか、目立たないで後で終わらせるかの究極の選択を迫られていた。
そして、モナカはここで目立たず、これが終わった後にこっそり担当の人に聞きに行こうということで決めた。
その選択をしても、予定よりは遅れるが、生徒会が終了するまでには間に合うはずだ。
(よし! それじゃぁ木の端っこに行って待ってよう!)
「ねぇ貴方」
「ひゃばっ!」
モナカは木の端でちぢこまる作戦をしようとしたところで後ろから声をかけられ、それにより人に反応するような返事ではない返事を上げた。
「な、ななな、なんでしょうか?」
「いや、貴方生徒会でしょ?
生徒会の人なら何か用事があるのかって思ったら、困ってそうだったから、どうしたのかなって気になって」
彼女は先ほどまで乗っていたであろう馬から降りていた。
(なんで馬から降りたんだろう?)
馬というのは、直接対峙すると以外に怖い。
(…乗馬されたまま話しかけられたら、もっと怖そう…
あ、そっか。相手を怖がらせないために降りてるんだ)
モナカはそう結論付け、目の前の彼女の気遣いに立派という感情を持った。
気遣いという感情と、見た目がいかにも親切そうで、モナカはいつの間にか緊張が解れていた。
「じ、実は、馬術クラブのクラブ長さんに用があて…
邪魔するのも悪いので、少し待ってようかな〜って…」
「終わるまであと1時間あるわよ?
うちを確認してるだけで生徒会はもう終わっちゃうんじゃない?」
「ふぎゅっ」
モナカは突っ込まれ、こんな時はどう返せばいいのかを頭の中で考えていた。
論理的に返す方法なら─ほぼ言い訳だが─あるが、面白く場を和ませる返しは思いつかないのがモナカだ。
モナカは悩みつつ、それよりも大事なことを思い出した。
(そうじゃなくて、)
「それじゃ私に任せて。
クラブ長呼んでくるから、少し待っててね」
彼女はそう言って馬を走らせていった。
その後、彼女はクラブ長を連れてきてくれたことで、会計の仕事は終わった。
彼女の名前はセリアーネ・サザンドール。
セリアーネとはその後も、お茶会の授業で一緒になったり、選択授業で選んだ馬術の授業でも一緒になって過ごしてきた。
そして、そんなセリアーネのことをモナカは友達だと思っていた。
* * *
モナカは地下室に着いた。噴水下の地下室だ。
ミリアによれば、現在学園には三つの魔道具があるという。
そのうちの一つは現在第二王子のいる第一倉庫に設置されており、ミリアは解除できない。
モナカはその魔道具を無力化するために、子の地下室に来たのだ。
学園には『結界の魔術師』によって張られた結界がある。
この結界は対外に向けられた結界であるため、魔道具を無効化するためには、その魔道具専用に結界を書き換える必要がある。
ミリアによれば、この結界をいじくる基盤があるのは子の地下室で、点検作業を行う噴水は効力を発揮する中心の役割を示しているそうだ。
モナカはその結界を変えるとき、モナカでも気づかないような場合のためにネロが寄せられている。
ネロがいれば対処できるとミリアが判断したからだ。
(私がやらなきゃいけないんだ。
…やらなくちゃ、誰がやるの)
モナカは覚悟を決めつつ、結界の基盤部分を見つけた。
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