第三十五話:泣かすんじゃねぇ!
ミリアはライの寮部屋に連れられた。
ライは部屋に着くと、紅茶を淹れ始めた。
「この部屋の、人に迷惑では?」
「馬鹿言え。ここぁ俺の一人部屋だよ」
「へ~」
不良生徒の代名詞のようなライだが、彼は侯爵令息ではあるし、当然と言えば当然なのだろう。
「あの、なんで、僕を呼んだんですか?」
「あぁ? 簡単だよ」
ライは優雅に紅茶を飲み始めた。
普段の言動は不良生徒そのままなのだが、どうやら、少なくとも紅茶には真摯な姿勢を見せている。
一見よくわからない人物のように見えるだろう。
ミリアも彼のことがよくわからない。
「ま、ず、は。 …こらぁ。何かな?」
ライは机をドンと叩きながら、ある三枚の写真を見せてきた。
「ニナ…嬢に、リア嬢に、ホルン嬢?」
三人ともミリアに面識のある相手だ。
ただ、ニナ以外は特段親しいわけでもない。
この男にとっては大切なことなのだろうが、ミリアにとっては、何を伝えたいのかがまったくもって分からない。
「んそぅだ。 彼女らと親しい関係なんだろう? か、ん、さ、く~ん?」
「特段親しいわけでは、ない、です」
「なぁんだとぅ? それじゃあ、これは何だ! こ!の! ニナ・マイル嬢と仲良さげに腕を組んでいるのはぁ!」
それはニナが組んできたんだよなぁ、と思いつつ、ミリアはよく考えた。
少し考えをまとめていこう。
Q、なんでこの男は興奮しているのだろうか?
A、ミリアが三人と交友を持っているのが気に入らないから
Q、何故この男が三人と交友関係を持っているだけで起こってくるのか?
A、こいつは馬鹿だから
Q、何故こいつは馬鹿なのか?
A、頭が彼女らに焼かれていて、イカレていてもいるから
Q、この状況を脱するにはどうすればいいのか?
A、適当に話を合わせていればいい
ミリアが考えている最中にも、ライは三人の良さを熱弁し、そんな彼女らとミリアがなぜ親しいのかを聞いてくる。
ミリアが適当に相槌を返していると、ようやくしびれを切らしたのか、ライがメランに匹敵する馬鹿デカ声で言った。
「いいな! 君は彼女らに釣り合ってはいぃない! この俺ですら彼女らにはふさわしくないのだ。
それ、なの、に! 君が彼女らと話しているのを見る度に俺は苛ついているのだ!
だからこそ、君は彼女らと必要以上にかかわるんじゃない!
良いな!」
「は、はい。 分かりましたぁ!」
ミリアはおびえたように返事をしたことで、夜ごろにようやくライから解放された。
もう就寝時間だ。
ミリアは自分の寮部屋に帰る途中で思った。
(キャラが濃かった人だな。 かかわるなってことだったけど、まぁ監査の仕事に関わることを言ってこなかったあたり、まあ公私を分けた人だったな)
寮部屋に戻ったミリアが、「心配させるんじゃないわよ!」と、泣きながらニナに叱られたことは言うまでもない。
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