第三十四話:嫌いかと言われたら嫌いです。
ミリアが紅茶を運び終えると、ピリピリとした空気で覆われていた。
その原因は、ミリアの真反対に座るライだ。
彼を一目見た感想としては「まず優等生には見えない」だ。
金髪で紫色の瞳という真反対な容姿をしており、侯爵令息というのに彼がまき散らす空気が不良でしかない。
「ど、どうぞ」
「い、いただきます」
「いただきます…」
ミリアは緊張した風に紅茶を出すと、ニーアとギーは「助かった」という顔で紅茶を飲み始めた。ちなみにライは喋らずに紅茶を飲んだ。
「美味しいですね」
「そうだね、さっぱりとしてるのに、味はしっかりと感じる」
当然だ。イザベルの茶葉は味が薄く、さっぱりしているのが特徴。
そんな紅茶は舌が味に慣れた状態では味を感じない。
だから、ミリアは舌が味を感じるまで待ったのだ。それにより、たとえ味が薄くとも、味を感じることができる。
(完璧な作戦だ)
ミリアは内心ほくそ笑みながら自画自賛した。
「…いいね」
「ありがとうございます」
なんとこれまで無口だったライが喋った。
ミリアは少し驚きつつ驚きを出さないように感謝を述べた。
* * *
次はニーアの番だ。
「…味が濃すぎる。 しかも熱すぎるせいで紅茶の風味が消し飛んでいる」
…。
* * *
次はギーの番だ。
「…美味い、が、この場では高すぎる茶だな。 他の人間は侮辱されたと受け止めるぞ?」
…
* * *
今までで合格点が出たのはミリアだけだ。
後の二人は難癖付けられて無事石像のように動かない。
最後はライの番だ。
あまりいいことではないが、現在の空気は「ライがミスしろ!」…ただそれだけである。
「…召し上がれ」
三人は飲んだ。
三人は思った。
(…美味しい)
お茶会の茶は、始めは薄い味で、徐々に味を刻していくというのが常識である。
当然最後であるライの茶は濃い味だと予想した。
濃い紅茶というのは、味の濃さ、風味の良さが良い点として挙げられるが、逆に悪い点として抽出に時間がかかることが多く、その抽出時間の長さにより、風味が削がれ、熱く、雑味の多い茶となることが多い。
ミリアが普段飲んでいる紅茶もそれなりに高いため、知識として知っていた。
こんなに茶を美味しく感じることがあるだろうか。
ミリアは無意識にほっこりした顔になっていた。
* * *
お茶会の授業の後、三人は話し合っていた。
主にギーだ。ミリアは目立ちたくないし、ニーアは人の悪口を言う性格なので当然と言えば当然だ。
「今日のお茶会、ライさんは態度悪すぎましたよね。俺なんか途中で石像になりましたもん」
「僕もです。…紅茶が悪く言われたのはちょっとショックでしたね…」
「ただ、紅茶は、間違いなく、美味しかった」
ギーとニーアは最後のミリアにうんうんとうなずいた。
どうやら全員ライのことが苦手か嫌いでも、紅茶の美味しさだけは認めるらしい。
「ちょっとそこの監査?…だったっけな~」
三人は立ち止った。
この声は…
「ちょっとお話ししたいだけなんだ。もちろん、いいよな~あぁ? 監査、君?」
こうして、ミリアは連行された。
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