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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第三章:生活編
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第二十九話:図書館で線香花火を飛ばすな!

「それでは、開始してください」


 授業の担当教師の言葉で議論は始まった。

 このペアのテーマは、治癒魔術を導入するか否か。

 三人で意見を出し合い、共有し、結論を出すのだ。


「まず僕から。 僕は導入すべきではないと思います。 なぜなら治癒魔術は肉体操作魔術の一種であるため患者が魔力中毒に陥る可能性があるからです」


 ニーアのこの意見は正しい。

 ただミリアからすればその意見は、先延ばしの言い訳にしか聞こえない。

 だって、魔力中毒などいくらでも解決の方法があるからだ。


「…僕も賛成です。 ただ…魔力中毒の、問題は現在の話。囚人をサンプルに、研究すればいい」


 魔力中毒は場合によっては死亡してしまう症状だ。 そのため倫理に反するとして、研究はほとんど禁止されている。

 だが、死刑・終身刑が確定した相手には研究を行っても問題ないとされているため、そういった相手に危険な実験をすることで研究を進めている事例もある。

 実際、ミリアも過去に行ったことがあった。


「…それは倫理的に問題があるのでなくて?」

「あくまで、一つの手段、です。 ネズミを使って、実験する、という手もあります」


 アーディアは質問したことを後悔したような顔でニーアに寄りかかった。


「あなたみたいな本物を見たのは久しぶりよ」

「…ほぼ初対面の、相手に、失礼では?」


 お互いに視線だけでバチバチと線香花火を飛ばし合っている。 同時に空気も張り詰め、教室の意識もミリアとアーディアに吸い寄せられている。

 もはやどちらが正論という話ではない。


「ちょ、ちょっと!二人とも、落ち着いてください!」


 ニーアの言葉で集中力をそがれた二人は、お互いに火花を消した。


「…今回は見逃してあげるわ」

(突っかかってきたのはそっちでは?)


 ミリアは多少の不満を覚えつつも引き下がった。 時間の無駄だからだ。


(大人の対応に感謝してほしいね)


 そう思うことでちっぽけな優越感に浸る、あわれなミリアがそこに居た。


「話を戻しますけど、治癒魔術を導入してしまうと、国内の医術が廃れる可能性があるのではないでしょうか?」


 レティーラ王国の三大名門校と呼ばれる学校の一つには、医術・医学に極振りしているカロライナがある。

 カロライナがあるおかげでレティーラ王国の医術レベルは世界で有数と言われるほど高いのだが、それでもまだ器用貧乏の域を出ない。

 それに対し、治癒魔術は器用万能。 どれほどの難病、状態でも、対処法(魔術式と詠唱)が存在していれば治すことができる。 例え対処法が確立されていなかったとしても、同じ系統の対処法を組み合わせたり除くなどの調整を繰り返せば治すこともできてしまう。

 そのため現在の医術と治癒魔術とでは圧倒的に治癒魔術が優勢なのだ。


 だからこそ、ニーアは、治癒魔術が医術界に進出することで、医術が必要なくなり廃れるのでは、と言ったのだ。

 その視点は実に良く、そして正しい。


(男爵の家系でありながら、いや、だからこそ、思考が回るのか)


「僕も同意見、です。…だからこそ、医術が進歩し、治癒魔術の、危険性の解明・対処も、含め…今から研究し、そのうえで、未来に…託すべきだと考えます」


 * * *


 その後もミリアとニーアは、何分か議論を続けた。

 もう導入するかどうかの話ではなく、導入するためにはどういった条件が必要か、といった話に移り変わっていた気がするが。

 アーディアはずっと議論中も、我関せず、という態度でニーアに寄りかかっていた。


 ちなみに議論に熱くなりすぎて授業が終わった後もつづけた挙句、担当経論に怒られたのは内緒だぞ☆

評価、ブクマなど、投稿の励みになりますので、どうぞよろしくお願いします!

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