第二十八話:最悪
あの魔道具の件が話されてから三日が経過した。
ミリアはセレスティナの図書館にいる。
さすがは貴族が集うセレスティナの図書館なだけはあり、あらゆる分野の本が数えきれないほど多くある。
図書館にある本は大体がセレスティナで習うことの延長線に来るものや、社交界で使う者が多い。
ではミリアがなぜそんなところにいるかというと、もちろんここで授業が行われるからだ。 ついでに魔道具探し。
授業は三人一組のペアで、事前に決められたテーマについて、図書館で調べた情報をもとに討論・対話を行う。
ミリアのペアのテーマは、レティーラ王国に治癒魔術を導入するか否か。
治癒魔術は、大きく言えば肉体操作魔術(禁術)の一種に分類される。 そのため、レティーラ王国では現在導入されていないが、それを導入するかどうか、という話だ。
テーマ自体はとても難しいし、魔術をたしなんでいるものでも資料が必要なほど難しいのだが、ミリアには必要ない。
なぜかって? ミリアはレティーラ王国の頂点に立つ七賢者の一人であり、その中でもとびぬけ禁術に詳しいからだ。
「図書館は、なし」
ミリアは資料を探している風に歩きながら、図書館を見歩いて魔道具がないか探していた。
既にミリアが調べた場所は、倉庫、裏庭、図書館の三か所で、もちろんこの短時間で見つかるわけがなかった。
ミリアは進展のない作業に少し焦りを感じつつ、探し続ける。
「貴方、資料を探している様子で、何を探しているのかしら?」
「…何のことで、しょうか?」
急に呼び止められたので振り返って見ると、そこには見るからに暗く憂鬱な、長身栗色の髪をした美女が立っていた。
「今頃、女性は全員…外でお茶会を、しているはずですが…」
「私はこっちに招待という名の強制で来させられたのよ」
「ご愁傷様です」
ミリアは彼女から目を離し、また魔道具探し旅を再開した。
* * *
資料集め・調べの時間が終了したので、ミリアは事前に指定された席に座った。
ペアは直前になるまで伏せられており、席に着き、討論を始める段階で初めて分かるようになっている。
ミリアは残り二人のペアが来たと同時に、内心で驚いた。
(こんなことがあるか?)
「アーディア嬢、今は授業中なので少し控えてください」
「…そうね、ごめんなさい」
残りのペアは、やたらと仲のいい地雷そうな、見るからに暗く憂鬱な、長身栗色の髪をした美女と、ニーアだった。
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