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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第三章:生活編
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第二十七話:契り

 ニーアは資料室の鍵を閉めた。

 これで会議中に誰かが入ってくることはない。

 現在資料室にいるのは、生徒会長フィリップ、運営会長セフィル、生徒会庶務ニーア、監査役員ミリアの4名だ。


「それでは、これから緊急会議を始めます」


 宣言をしたのはニーアだ。

 こういった会議の時では、いつもフィリップではなくニーアが司会を務めている。


「報告になりますが、学園内で魔道具が発見されました」


 魔道具と聞いて思い出されるのは、つい最近ローランから言われた『禁具盗難事件』だ。

 ミリアが開発後、禁忌として厳重に保管されていた禁具の一部が盗み出された事件だ。

 あの事件後、一週間もたたずに学園内で魔道具が確認されるものだろうか?


「現在、その魔道具は、危険物として『結界の魔術師』様が回収されました。

 その時に『結界の魔術師』様から、学園内もしくは学園付近に危険な魔道具を所持しているものがいる可能性があること、また警戒を怠らず、学園内に魔道具所持者がいるかの調査も頼まれました」


 ローランが回収したのであれば、その魔道具に関しては心配しなくていていいだろう。

 しかし、魔道具がなぜ学園内にあったのかは不明だ。


 ミリアはローランからのメッセージを読み取った。

 一つ、ローランが魔道具を危険物と判断したなら、それは単なる魔道具ではなく、盗み出された禁具の可能性が高い。

 二つ、ローランが魔道具所持者がいると明かしたということは、ミリアに魔道具があるかの調査・あった場合の対処をしてほしいというメッセージ。 そして学園関係者に調査を頼んだ意味は、ミリアが動く際のカモフラージュ。


「この事態はできるだけ秘密裏に進めるようにと『結界の魔術師』に言われていますので、今ここにいる四人と『結界の魔術師』様と関係のあるライクネット教諭だけで調査を行います」

「…では、もし学園内で魔道具もしくは保持者を発見した際はどうすればよろしいのでしょうか?」

「その時はライクネット教諭にお伝えください」


 分かりましたわ、と返事したセフィルとは対照的にフィリップは一言もしゃべらない。


「各々、見て回るという…認識で…よろしいでしょうか?」

「はい、情報収集、自分で動く、仕事中に確認する…やり方は規則の範囲内なら問いませんので、少しづつ探してもらいたいです」


 ミリアが自然な方法で探すなら、やはり授業の移動時か、監査の移動時だろう。


「皆さん質問はございますか? …では、以上で緊急会議を終了します。 情報守秘と調査の方、よろしくお願いします」


 ニーアのその言葉で、魔道具の件に関する会議はお開きとなった。


 * * *


 会議終了後、生徒会の仕事も終わらせてから寮部屋に戻ったフィリップは、涼しい顔をしながら、自分の青い留め具を外し、中を開いた。


「ウェン」

「…どうしましたでしょうか、殿下」

「魔道具はどんなものだった?」


 先ほど話題になった魔道具についてだ。

 ローランが至急セレスティナに来た際、フィリップは確認のためにウェンを向かわせていたのだ。


「属性は風、かなり高い魔力反応を感じました。 内包された魔力量も、魔力密度もただの魔道具にしては規格外でしたので、おそらくは禁忌の一種でしょう」

「となると禁具…。 なるほど、『結界の魔術師』の管理下の禁具が何らかの手段でセレスティナに持ち込まれ、彼が直接回収したってとこかな」


 レティーラ王国の禁忌の殆どはローランの管理下にある。 いや、禁忌収容されるような重要施設の殆どは歴代『結界の魔術師』により管理されている、と言ったほうが正しい。


「『結界の魔術師』が来た意味について、どう考える?」


 第二王子であり王座を狙うフィリップにとって、自分を毛嫌いし第一王子派に付く『結界の魔術師』ーローランが、第二王子は筆頭のアズノール公爵の管轄のセレスティナに来ることは芳しくない。


「自作自演で起こし、学園内部の何者かにメッセージを伝えたかったのでしょうか」

「そうだね、僕もそう思う」


 フィリップはローランがセレスティナの結界点検に来る仕事の日は全て記憶している。

 そして、魔道具を回収した日はもちろん記憶になかった。

 なら、学園に潜んでいる誰かにメッセージを伝えたかったと思うのが普通だろう。

 そして『結界の魔術師』が管理ミスをするわけがないというフィリップの考えも、この考えの一つの要因になっていた。


「はあ、暫くはひっそりと隠居生活を送ろうか」


 * * *


 会議終了後、寮部屋に戻ったセフィルは『結界の魔術師』が来た日と、今日の会議を思い返していた。

 『結界の魔術師』の言葉の裏と、あの日の行動の謎を考えると、一つに辿り着いた。


「…『結界の魔術師』以外の七賢者か、それに匹敵する誰かがお兄様と私を護衛するために潜入している」


 セフィルは、自分の頬に熱がこもっていくのを自覚した。


「どうせいるなら、『沈黙の魔女』か『雷鳴の魔術師』、年を考えると『無情の魔術師』様がいいですね」


 セフィルは年に一度しか見ることのできない、七賢者の魔術を思い出した。


「あの魔術を再現するにはどれほど複雑で多い魔術式が必要になるのでしょう…ああ、やはり七賢者様方の魔術は素晴らしい」


 セフィルは魔術の妄想に浸る寸前で止まった。


「あぁいけない。 現実に戻りましょう…

 あの子の出番も、私の表舞台に出る時期も、まだまだ遠い。 ええ、分かっていますわ、それまで場を、駒を、布を、広げましょう」


 セフィルは誰もいないはずの目の前の空間で微笑み、小さくつぶやいた。


「大丈夫、安心して。 私は約束は守るもの」

ふぅ、設定ミス、修正大変だったな。

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