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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第二章:監査編
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第十八話:風が舞う日

16:30投稿します。

 ミリアは森の中を走り、遂には花園までたどり着きようやく、オベールを見つけた。


「あなた…誰…」


 ミリアは答えない、正体をわからせないために。


「答えなさい…貴方は、誰!」


 オベールの言葉と共に、彼女の周辺が吹き飛んだ。

 辺りに強風を吹き飛ばす風魔術だ。

 ミリアはそれを難なく後ろに飛び避けた。


「誰って聞いてるの!」


 オベールの声が、響くと同時に、今度は鋭利な風の斬撃が飛んできた。

 ミリアはそれに魔力の斬撃を放ち相殺した。


(…まともに食らっていたらかすり傷をつけられていたな。

 なるほど、オベール・トランペットが得意としているのは風魔術)


 ミリアは一目でオベールの得意を理解した。

 あたりを吹き飛ばすほどの強風、結界強度においては国内二番手の、対魔術結界を張っていたミリアにかすり傷とはいえ確かに『傷』を与えるレベルの威力の風の斬撃。

 この二つを繰り出せるなど、それこそ風魔術を得意としていない限りほとんど見られない。

 勿論、ごく少数には、他の魔術もこれに匹敵する練度で繰り出す化け物もいるが、そんな怪物は七賢者かその候補生だけなので、そのケースを考えるだけ無駄だ。


 ミリアは絶え間なく繰り出される風の斬撃を相殺し続けながら、解決方法を考えていた。


(相手を無傷で、時間をかけず、魔力をこれ以上消費しないで終わらせる方法)


 まず、相手は学生、戦闘とは無縁であるべきはずの、自分とは違う平和に生きるべき人間。

 絶対に無傷で攻略しなければならない。

 そして、これ以上時間をかけては、顔を見られる可能性、第三者に介入・発見される可能性がある以上、できるだけ短期決戦で臨まなくてはならない。

 さらに、これ以上戦えば、無駄に魔力を消費することになる。


 七賢者、そしてその候補者レベルの魔力量の平均帯を数値として表すと200~250~。

 上級魔術師の魔力量の平均帯は170~200。

 中級魔術師の魔力量の平均帯が100~170。

 下級魔術師の魔力量の平均帯が50~100。

 一般人の魔力量の平均帯が~50。


 ミリアの魔力量は数値で表すと53。

 そう、ミリアは魔力量の面だけで言えば七賢者どころか中級魔術師にも及ばない。

 当然、七賢者では最下位の魔力量だ。

 ミリアはそれを、七賢者随一の魔力出力と魔力効率でカバーしているが、それでも魔力の使い過ぎはよくない。


「もういい! 貴方はー」

(…仕方ないか)


 ミリアは中指・薬指・小指をまげ、人差し指をピンと張り、親指を上へ上げる、子供たちが銃をまねするような手の形にした。

 そして、その銃口をオベールに向ける。


「『発動(アザスト)』」



 小さく、されどしかりと発音された詠唱により、ミリアの人差し指の先から放たれたその魔術は、一瞬の間隔さえ無く、ただまっすぐにオベールの眉間を打ち抜く。

 それと同時に、彼女の体を包むように、彼女の周りは輝く三つの線が浮かび上がった。

 音もなく倒れこんだオベールを、サラッと、メロから事前に聞いていた量部屋に跳躍させた。


 ミリアはおベールが倒れたことを思い返しつつ、その周囲を警戒した。


ーオベール視点ー


 私は、両親が嫌いだ。


 私が5~7の年頃までは私をべた褒めしてきたくせに、私が10歳ほどの時ーノエールの才能が開花したころには、私を限界まで窯で我慢させ妹ばかりを甘やかし、いつしか蔑んできたからだ。


 ある夜中に聞いたことがある。


「ノエールがあんなに優秀なら、将来は安定ね。 それに比べて姉のほうはねぇ」

「おいおい、オベールが聞いてたらどう思うと思う?」

「何言ってるの、あなた。 あの子がこんな深夜に起きてるわけないでしょ?」

「それもそうだな。 遠慮なく言うが、ノエールがあんなに優秀なら、別にオベールはいなくてもよかったよな」


 私はノエールが嫌いだ。


 両親に盲目にさせるほど、私の存在を否定させるほど優秀なのに、いつも同級生に私を自慢している。


「私のお姉さまは凄いですのよ。 私が子供のころはよく一緒に遊んでくれたり、今でも私の愚痴を聞いてくれているですのよ」


 私がノエールを意識しすぎて体調が悪くなった日もあった。


「お姉さま、私に何かできることはありませんか?」

「大丈夫。 私はすぐ直るから、自分の好きなことして」

「…それじゃあ、私はお姉さまの看病をいたしますわ!」

「好きなことに時間を使いなさい、と言ったでしょう?」

「私がしたいのはお姉さまの看病ですから!」


 私はあなたのせいでこうなってるのよノエール、などとは口が裂けても言われなかった。


 私は私が嫌いだ。


 こんなにも家族が嫌いで、ノエールを憎んでいるのに、自分から言うことをせず、相手が私を壊す原因を作るのを待っているからだ。


 私はクラリス・ヴァイオリフトが好きだ。


 私を否定も肯定もせず、ただ話を聞いてくれる人は、私の人生には誰一人としていなかった。

 話を打ち明けた人はみんな私に無責任な同情、言葉をかけてきたけど、彼にはなかった。

 そして、彼は私を遊びに誘ってくれた。


 ーあんなにも、心置きなく楽しめたのは何年ぶりだろう。


 私はいつしか、彼のことが好きになった。


 * * *


 私は今、心の黒い感情を魔術として出している。

 心の内を出せるのはクラリスと話すときか魔術を使う時だけだ。


 私は楽しかった。

 私の風魔術が木々を裂き、花を上空に飛ばすことができると知ったら、興奮が止まらなかった。


 楽しんでいると、邪魔者が来た。

 背は低く、黒いローブで体を隠し、黒いフードで顔を見せない不気味な人間だ。


「あなた…誰…」


 解いても答えは変えてこない。


「答えなさい…貴方は、誰!」


 私は強風を吹かせたが、邪魔者は難なくよけた。


「誰って聞いてるの!」


 私がついに風の斬撃を繰り出したと思ったら、斬撃は消えていた。


(え…?)


 私はもう一度斬撃を放った。

 また消えた。

 もう一度放った、消えた。

 放った、消えた、放った、消えた、放った、消えた…


 私が何度斬撃を放とうと、斬撃は相手に当たらずに消えていった。

 いや、消えたという表現は正しくない。

 私は冷や汗をかいた。

 だって、相手がしたのは神業だと、魔術をかじった者ではわかることだからだ。


 この真っ黒野郎は、私の斬撃を、自身の魔術によって、しかも無詠唱で相殺した。

 本来、魔術を相殺することは難しいことではない。

 なぜなら、魔術を使う際には詠唱が必要であり、その詠唱によって、ある程度の位置はわかるし、大体の魔術の的が大きいから、その分その面積と同じか少し大きいくらいの魔術を使えばいいからだ。

 しかし、面積が小さくなると話は変わる。

 斬撃や放射型の魔術は、単なる大きな魔術と比べると、その難易度は倍以上に跳ね上がる。

 例えるなら、射的で動いている缶詰の中心を撃ち、落とすようなものだ。


 私は言い切れない恐怖に震えた。

 その瞬間、相手が右手を銃の形に変えて、私に向けてきた。


「『発動(アザスト)』」


 言葉を聞き終わる前に、私の意識は遠のいた。

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