第十六話:焼き鳥にしてやろうか?あん?
監査の仕事は、特にキツくなかった。
最初の2日であるのもあるだろうが、学園側から渡された資料と、生徒会・運営会が間違った表記をしていないかを調べるだけだ。
単純で体が疲れないだけ、精神的疲労が強かった。
単純な問題では、慢心すれば単純な答えも出せなくなってしまう、それと同じだ。
そして何より恋愛脳のオベールが大変よく話しかけてきたことだ。
これがなければ、もう少しマシだった。
「ミリアが帰ってきましたよ〜!」
「いじり倒してやるぜぇ!」
ミリアが寮の部屋に入ると、2匹の猫が寄ってきた。
そして不穏なことを言っていた。
「…お前ら、何をする気だ?」
「簡単よ! 今日オベール?ってやつにいろいろ言われたろ?」
「でも言わなかったでしょ? だからミリアの好きの人を聞き出すのよー!」
この猫達はどうも人の聞きたくないことを聞いてくる。
「…別にいない」
「不貞腐れてるの丸わかりで〜す」
「じゃニナの事はどう思ってんだ〜?!」
痛いところを突いてくる。
「…ニナは家族だよ」
「家族!?ねえ、それってどういう意味?!」
「うるさい」
ミリアは答えると、首にかけたペンダントを弄りだした。
「…ミリア」
「なんだネロ」
「そのペンダント、詳しく見させろっ!」
ネロがペンダントに向かって飛びかかると、ミリアは蹴りをお見舞いした。
普通の猫にはもちろん何もしないが、ネロは猫ですらないので気負う必要はない。
「これに、触るな」
ミリアのその一言は、場を圧するには十分だった。
「す、すまん…」
ミリアはネロの謝罪を聞くと、すぐに圧を解き、酒を飲み始めた。
直後にコツン、と音が響いた。
見ると、小さい鳥がいた。
もしやと思い窓を開けると、その小鳥は部屋に入り、女性の姿に形を変えた。
「『結界の魔術師』が契約精霊、アルファードと申します。 フィーちゃんと気軽にお呼びください」
「後で焼き鳥にしてやる」
アルファードが来た意味を察したミリアは、すぐに終わらせようと答えた。
「わたくしは伝令係です。 この紙に潜入の報告内容を記入してください」
ミリアは紙を取り、重要なことを書いた。
監査になったこと、第二王子と第二王女の接触に完了したことの2つだ。
ミリアが記入し終えた紙を渡すとメロがソワソワし始めた。
「…ミリア」
「なんだ?」
メロの言葉にミリアはコップを置いた。
「裏庭で、2つ、高い魔力反応があるわ。 氷と風ね。 あと、不審な魔力反応もあるわ」
「分かった。 ネロ、ニナを起こせ」
「あいよ〜、ニナー!」
ミリアはネロに、今まで寝ていたニナを起こさせに行くと、自分は準備を始めた。
黒いローブ・フード、腕輪、2つの指輪、そしてペンダント。
それは、これまでのミリア・マイルではなく、
ミリア・アルトの─七賢者『無情の魔術師』の姿。
「アルファード、氷の魔力反応に『沈黙』を向かわせた後、後で準備し終えるニナと共に、周囲を監視。
メロ、案内しなさい。 ネロ、私について来い」
そう言い、ミリアとメロとネロは窓から寮を飛び出した。
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