第九十六話:不器用な奴
「ルベリア、プレットのことちゃんと見てなよ」
「プレットを預かっていただいたこと、感謝申し上げます」
ルベリアはプレットの黒髪を整えながらそう言った。
「ていうかルベリア、君いつから妹いたの?」
「ええと…10年前」
「10年前?! 僕全然見てなかったよ? 結構ルベリアの家行ってたはずなのにな〜」
「それは…プレットは別邸で育てられたみたいだから。私もプレットと初めて会ったのは3年前だし、本邸に住み始めたのは去年からだしねぇ」
「そうなんだ」
ミリアは席から立ち上がった。
「もう行ってしまうの?
久しぶりにあったばかりだっていうのに」
「まあね。なんか人を待たせてるっぽいから、それ終わらせたらまた話しに行くよ」
ミリアは外していた仮面をつけ直し、食堂から出ようと歩き出した。
そして何か思い出したように「あっ」と言いルベリアの方に振り返った。
「ルベリア、ガーリックから聞いたんだけど、子を持ってすぐの父親に嫌味とか言うのは止めたら?」
「嫌味じゃないわよ」
「なに、心配しての言葉だったの?不器用だね〜」
「私は女性にしては強すぎるから、不器用っていうギャップが丁度いいのよ」
「プレットにはそれを言わないでよ。プレットは純粋な方がモテると思うし」
「それはそうよね。 ね〜、プレット」
「ん?どうしたのお姉ちゃん」
ミリアは扉を開け食堂を出た。
* * *
「で、さっきから着けてきてどうしました?」
ミリアは食道を出てすぐ右に立っているスーツ姿の男を見た。
見た目的には護衛だろう。問題は誰の護衛かということだ。
七賢者に取り入ろうとする貴族は多い。特に第二王子派の貴族は積極的だ。
七賢者間では、『結界の魔術師』が第一王子、『黎明の魔術師』が第二王子を、それぞれ推していることは有名だ。
また、以前までは七賢者の支持もなく、一人の公爵以外の支持もあまり多くなく、3人のなかで弱かった第二王女が、継承権を放棄したアリエル第一王女が第二王女の支持を勝ち取ることで、やや優勢にもなっている。
今は第二王女、第二王子、第一王子の順で支持が厚い。ただその差は小さいため、新たに七賢者が支持すればパワーバランスは劇的に変わる。
ミリア的には政治に絡みたくないので誰かを支持したくはないし、そのような交渉も受けたくはない。
(大物が来ないといいんだけど)
「我が主から、『是非無情の魔術師殿に会いたい』とのことでして」
「主とは?」
「申し訳ありませんが、ここではお伝えすることができません」
ミリアは付いていくことにした。
多分、ミリアに指示してほしいという交渉だ。拒否することもできなくはないが、相手が大物だった場合、これからに関わる。
(素直に従うか)
* * *
交渉を行うときは、多くの場合、応接室が使われる。
王城の応接室ということもあり、入る前から強い威圧を感じる。だが、その威圧は応接室だけではない。
「『無情の魔術師』様をお連れしました」
「…中へ」
扉の奥から聞こえたその声は、低いのにくぐもっておらず、耳に響く声だった。その声には不快感はいのに、威圧が感じられる。
ミリアは応接室に入ると同時に、鋭い視線を向けられた。
それは、豪華なソファに腰掛ける、金髪が残っている白髪の人物からだった。
「ご足労、感謝する。『無情の魔術師』殿」
「驚きました。
まさか貴殿が私を呼ぶとは思っていなかったもので…アズノール公爵」
中途半端になってしまいました…
明日か明後日でこの章は終わりますので楽しみにしていてください。




