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無情の魔術師  作者: 情緒箱
第八章:王城編
101/125

第九十五話:鮮血の魔女

記念すべき合計101話。

ご愛読ありがとうございます。

今日は5時くらいにもう1つ投稿します。

 ミリアが宴会場に来ると、横から何かが飛ぶように現れ、転けた。


「やぁ、アルト。久しぶりだが元気そうで何よりだ」

「そうだな、会ったのは半年ぶりくらいか?

 あと鼻血出てるよ、ほれティッシュ」

「あざす」

「あのさ、そのまま拭くのやめようか」


 転んだままの体勢で鼻血を拭き取った青年が立ち上がっていくと、ミリアの背をどんどん抜いていった。

 この青年の背の高さは…190はあるだろう。

 しかも筋肉質な体。


「ラウル、君20代前半だよね?もう成長期過ぎてるはずだよね?」

「うん、そうだぜ。ぐんと伸びたのはちょうど20までだったけど、今もちょこっと伸びてるんだぜ」

 

 彼とこの前会った時は190行かないギリギリくらいだったが、今は明らかに行っている。

 ミリアは自分の体と比べて呆然としていた。


「ん?どうしたんだミリア?」

「…いや、ちょっと、なんでも、ない。うん」

「なんだよその歯切れの悪い返事」


 ミリアは彼に一発腹パンをかまし、見事にダウンさせることができ─なかった。

 ラウルはその威力の弱さに顔をしかめた。


「あれ?今日のアルト結構温和だけど…どしたん、話聞こか?」

「いつもが温和じゃないみたいな言い方やめてもらえますかね〜?」

「いや、だってそうじゃん。今日元気ないの?」

「あるよ。ここは公の場な上、新年でお祝いムードなんだから、お前をダウンさせて問題起こすわけにはいかないでしょ」

「それもそっか。じゃ、俺は酒飲み行くからまたな!」


 彼はそう言い陽気なステップを踏んで酒がたくさん置いてある別の部屋に入っていった。

 彼は5代目『繁茂の魔女』ラウル・アウラバァラ。


 本来魔術師や魔女の称号は七賢者と引退した人物にしか名乗れないが、国に大きな貢献をした者や家系として数多く功績を残す家には、特別に魔術師、魔女の称号を名乗ることが許されているのだ。

 ちなみに、その家の当主の性別に合わせて称号が変わることがほとんどだが、アウラバァラ家のような初代信仰が暑い家では、性別関係なく初代の称号をそのままに用いられることが多い。


 ラウルを見送った後、ミリアは次の友人がいるであろう場所に向かった。

 ミリアの友人の一人は、いつも魚ばかり食べているのだ。なので、大抵魚置き場に彼はいる。

 ミリアが魚置き場に着くと、よく目立つ人物を見つけた。


「あっ!ミリアじゃんか!」


 青年はは両手に5本ずつ刺身の串を持ち、口に大葉を詰め込みながらミリアに話しかけてきた。

 彼は『歯車鍵の魔術師』ガーリック・ハイムーン。

 現在20代後半で、魔導具や特殊な機械系の仕事をする事が多い、ハイムーン家の当主だ。

 魔導具作りは、国内生産のおよそ7割を占めるほど任されている。魔導具自体高価なものが多く、またそれだけの数を生産しているおかげで、ハイムーン家は国内で有数の貴族たちと匹敵するほどの財を有している。

 そのため屋敷はとても豪華で、食事も豪華らしいのだが、ガーリックは高い食事はあまり好きではないらしく、レティーラ王国では比較的安い魚が好きということで有名な人物でもある。

 2年前には魚を買い占めしたせいで国内の新聞にも載ったこともある。


「久しぶり。娘さん生まれたんだってね、おめでとう」

「おお、祝福感謝するぜ。俺のほとんどの知り合いは、この知らせても祝ってくれなかったからなぁ。ミリアが知り合いで始めて祝ってくれた人だぜ」

「何人に知らせたんだ?」

「う〜ん、大体5人くらいかな?」

「そりゃ人によっては言わないだろ。知らせた数が少なすぎ。

 ちなみに誰に教えたんだ?」


 ガーリックは串を食べながら、う〜ん、と唸った。

 そして、「あっ!」と言う声と共に一本の串の刺身を丸々食べた。


「『結界の魔術師』さんと『鮮血の魔女』さんに、『黄昏の預言者』さん、あとは手紙で国王陛下と『沈黙の魔女』さんだね!」


(メンバー的には、確かにお祝いしなそうだな)


 ローランと『鮮血の魔女』は一方的にガーリックを敵対視してるし、マリンは人柄的にお祝いしそうだが、多分ガーリックが聞かずに帰ったのだろう。

 国王は病の治療があるから見られていないだろうし、モナカに関しては手紙を読む習慣が恐らくない。


「まぁドンマイ。けど僕が祝ったから気にしすぎるなよ」

「大丈夫さ!皆祝ってはくれなかったけど国王陛下と『沈黙の魔女』さん以外は皆僕に

『歯車鍵の魔術師殿が家事なんて出来るのか、そしてやろうとして失敗しないか、奥方に負担をかけないか、心配ですねぇ』とか!

『貴方のような能天気が親となると、娘さんが心配になるわりますわ』とか!

『娘ちゃんと奥さんに迷惑かけないようにねぇ』だったり!

 とにかく色々エール送ってもらったからさ!」


(それはエールじゃないんだよな…)


 ミリアは思い出した。

 そういえばコイツはバカだったと。

 どんな嫌味でもポジティブに変換する系のバカだったということを。


「そ、そっか…ま、まあ、育児、奥さんに教えてもらいながら頑張りなよ」

「心配ありがとう!でも大丈夫さ!なんだって僕は小さい頃から家事をしてきたんだからね!」


 アハハハハハハー!と笑いながら串を口に突っ込んでガーリックは消えてった。


「本当に大丈夫かな…」


 * * *


「あいつどこいったんだ?」


 ミリアはもう一人の友人に会おうと王城内外を探し回ったが見つからず、最後に食堂を探していた。

 ミリアが探しているのは『鮮血の魔女』。

 彼女は15歳という若さで3代目『鮮血の魔女』の当主になり、元も含めた七賢者の武闘派に匹敵する魔術師だ。

 ちなみに現在17歳で、ミリア達と同年代だ。


「はぁ…やっぱりいない。何処にいるんだよ…

 少し休みますか」


 ミリアは昼食を食べようと食堂のおばさんに注文し、席で待っていると、黒髪の女の子を見つけた。

 女の子はトコトコと歩きながら、周りをキョロキョロ見回している。


「ねぇ君。君…お父さんとか、お母さんは?」

「っ!」

「あ、ちょっと待って!」


 逃げようとした女の子を掴むと、女の子は目尻に涙を浮かべた。


「ちょっと話そうか」

「グ〜」

「…ふふっ」

「笑わないで!」


 女の子は「恥ずかしぃ…」と呟きながら手で赤くなった顔を覆った。


「取りあえず、ご飯食べよっか」

「…うん」


 * * *


 昼食を食べ終わると、ミリアは女の子に喋りかけた。


「お父さんとかお母さんは来てない?」

「…来てない」

「来てないんだ」


 ミリアは驚きながら女の子を観察した。

 ミリアは大体の貴族は覚えているから、女の子の特徴と貴族たちの特徴を比べたが、合う貴族は全く思いつかない。

 女の子はまた目尻に涙を浮かべ泣きそうになったため、ミリアは少し焦った。


(な、何を話せばいいんだ…

 あ、そうだ)


「そういえば自己紹介してなかったね。

 僕はミリア。君は?」

「わ、私はプレット…」

「プレットちゃんか」

「…」


 女の子はボートした様子でミリアを見ていた。

 そして手を出した。


「あの…どうしたの?私に何かついてた?」

「ちょっと、その仮面取って…」

「ええ?!」


 ミリアが大きな声を出すとプレットはビクッと震え、手を引っ込めた。


「わ、分かったから…でも、あまり長く外せないからね?」

「うん。

 ぁ………」


 ミリアが仮面を外すと、プレットは凝視し、少しすると小さな声を出した。

 ミリアがどうしたのか聞こうとすると、プレットはミリアの顔を指した。


「ミリアさんって、何処かで聞いたことあって…」

「そりゃ、私は有名だからね」

「そ、そうじゃなくて」

「?」


 ミリアがどういうことか疑問に顔をしかめると、プレットは思い出したかのようにその言葉を出した。


「ミリアさんのこと、お姉ちゃんがよく喋ってた。

 それに顔、お姉ちゃんの部屋の写真で見たことある」

「え?お姉ちゃん?」

「うん、お姉ちゃん」

「お姉ちゃん…あ!もしかして、ルベ…」


 ミリアがお姉ちゃんという単語から連想した名前を出すと、頭に柔らかい何かが当たった。


「あ、お姉ちゃん!」

「プレット…もう、探したのよ」


 声、ミリアの両脇に見える赤い長髪、そしてさらに押し付けられる柔らかいもののおかげで、ミリアは誰が後ろにいるかが分かった。


「ルベリア、やめてくれないかな?」

「あら、嫌よ。久しぶりに貴方に会ったんだからもう少し、ね?」

「やだ。プレットに構ってやれ」

「ふふ、それもそうね」


 そう言い、彼女はミリアから離れて、プレットの隣の席に座った。

 彼女は、かつて鮮血女王と称され、世界大戦でレティーラ王国を圧勝に導いた『鮮血の魔女』の5代目、ルベリア・スカーレット。

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