第九十四話:殴れば大体解決する
ゴリゴリに遅刻したデリックを妖玉の間に連れ戻したミリア。
妖玉の間では、魔術の撃ち合いと口論の喧嘩が起きていた。
それは、ユーベルとローランによるものだ。
「うし、次は3重でやってあげようか。
どうやら君はは4重すら防御できないみたいだからね!」
「言ってくれますね、『弾劾の魔術師』殿。
もうすぐ30代半ばのくせにパートナーを見つけられていないのはそういう喧嘩っ早いところのせいなのでは?」
「はぁ?最初と比べて少しは丸くなったと思ったが、それは俺の思い違いだったようだ」
「私は貴方よりまだ若いので意識しすぎなくていいのですよ」
「君はいつまでもそんなんだったら、生まれてくる娘に嫌われるだろ。意識しとけ」
そんな会話をしながら2人は魔術を撃ち合う。
─ドンッ!ガタン!ガシャン!
イス、机が倒れ、ローランが防御していなかったユーベルの攻撃魔術は壁に当たる。
そんな大惨事中でも、モナカはコーヒー、マリンはのんきに紅茶を飲んでいる。
しかも紅茶を飲みながらチェスをしている。
やはり度胸。
度胸こそ七賢者に必要な能力なのだ。
そしてまだ魔術を撃ち合っている2人に、デリックは近づき、拳で、ゴツン、と殴りダウンさせた。
「もうすぐ式典が始まるっていうのに落ち着きがないじゃないか」
「元はと言えば『黎明の魔術師』殿が遅刻したからこうなったのではありませんか─アガッ!」
「デリックさんがもっと早くに来てればこんなことなってなかったんですよ。
あと拳骨の威力去年より上がりましたね─グヘッ!」
2人はダウンしながら文句を言ったがそれも虚しくもう一度拳骨を食らうことになった。
* * *
式典が始まった。
進行はラーメイ第一王子とその母シェリー妃によって執り行われた。
装飾や規模は去年と何らかわりはしないが、挨拶が少々省かれた。
ミリアからすれば式典はあまり長くないから省略しなくてもいいと思っている。というか逆に長くして宴会の時間を短くしてほしい。
周りを見渡すと、これまでの都市と同じように有名な貴族がズラリと並んで座っていた。
また、ミリアの知り合いである魔術の家の当主もいくらか見えた。
新年の儀には、貴族の他にも魔術の家の者の参加も認められているから、代表して当主が来ることが多いのだ。
(あとで話すの楽しみだな)
* * *
やがて式典が終わると、その流れで宴会が始まった。
新年の儀では女性が少ないため、女性がいるときに行われる舞踏会の感じではなく、どちらかというと立食パーティーのように行われる。
大半の貴族たちは情勢を確認したり、味方や敵を作ったりなどで忙しいが、中には知り合いと飲んで食ってをする輩もいる。
(そこのあんたらだよ)
ミリアの視線の先には、ユーベル、ローランの2人がをデリックに宴会場に連行されていた。
モナカとニナは知らないうちに消えていき、『黄昏の預言者』マリンはなぜだか美少年少女を傍らにワインを飲んでいた。
「ミリアちゃんはどう?一緒に飲まない?」
「結構です。知り合いと会ってきますので」
「知り合い?各家の当主のことねぇ。
そういえば、鍵の家の当主のほうに、新しく娘さんが生まれたそうよ」
「え、マジすか。ありがとうございます」
(ありがたい情報を聞いたな。
おめでとって言うか)
ミリアはマリンに感謝しながら、妖玉の間を出て友人の元へと向かっていった。
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