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不器用な俺は相棒の手を借りて成り上がる~前世厨二病は知識チートで目立ちたい~  作者: 酒本アズサ


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3.トレイン

 冬支度をする小動物が視界の隅を横切る森の中、俺とジョンは薬草の群生地を目指していた。

 カサカサと音を立てる落ち葉を踏みしめながら進んで行くと、小さな池の周りにたくさんの草が生えている場所に出る。

 洗礼式を受けた時には冒険者登録をする事を決めていたからと、周りから少しずつ情報を集めていた成果だ。



「ここだ……! よし、この辺りに薬草が生えているはずだから探そう」



「待ってリッキー、初心者セットに手袋があったはずだから使おうよ。中には触っただけで痒くなる草もあるって父さんも言ってたし」



「おっと、そうだな。手袋とナイフ……っと。採取袋もだな」



 俺達が思い描く冒険者の姿にはまだまだ程遠いけど、これが冒険者としての第一歩だ。

 ジョンと二人で薬草を選別しながら採取していく。

 群生地といえど、点在するように生えいているせいで十束作るのにも二時間ほどかかっている。



「リッキー! とりあえず依頼の数は確保したよ!」



「わかった! 間違った草が混ざっているかもしれないから、予備としてもう一束だけ作ろう」



「うん!」



 最後の薬草束を作って立ち上がる。ずっとしゃがみがら移動して採取していたせいで、腰が痛い。

 


「ジョン、それが終わったら今日のところは帰ろうか。……ジョン?」



 ジョンに話しかけるが、池の向こうを見たまま動かない。

 意識を向けて耳を澄ませていると、草叢(くさむら)を掻き分けて何かが近付いて来る音がしてきた。

 もしかして魔物がこっちに向かっているのか!?



 採取用に使っていたナイフを逆手に持ち替え、いつでも動けるように身構える。

 しかし草叢の向こうから姿を見せたのは、冒険者ギルドでトラヴィスさんにひっくり返されていた冒険者だった。



「ハァッハァッ、クソッ、こんなはずじゃ……! おいガキども! ポーションを持っているならよこせ!」



 肩と太ももから血を流しているところを見ると、あの時のトラヴィスさんの忠告を無視したのだろう。

 お人好しのジョンはすぐに初心者セットのリュックからポーションを出そうとしたが、俺はそれを止めた。



「冒険者の行動は全て自己責任だろ。せっかくトラヴィスさんが忠告してくれていたのに、それを聞かなかった自分が悪いんじゃないか。なんで俺達がそんな奴の尻拭いしなきゃならないんだよ。しかもそれが人にものを頼む態度か? 行こうジョン」



 あの言い方だとポーション代も払いそうにないしな。

 (きびす)を返して村へ戻ろうとすると、冒険者は怪我した足を引きずりながら追いすがって来る。

 


「ま、待て! 頼む!! 赤猪(レッドボア)が……うわぁっ」



 叫び声に振り返ると、大型バイクサイズの赤猪が冒険者をはね飛ばした瞬間だった。

 宙に舞う冒険者、そのままこちらに突進して来る赤猪。

 スローモーションのような視界の端にジョンの青ざめた顔が見え、走馬灯が脳裏を駆け巡った。

 その中に理科の実験で水を分解して水素と酸素を作り出し、水素がヒュポッと音を立てて燃えた映像があった。



「『着火(イグニッション)』!!」



 ドォン!!



「プギィィー!!」



「「うわぁぁっ」」



 池の水を利用したせいか、水素と酸素が混ざり合い、思ったより大規模な爆発が起こった。

 火球のような爆発系魔法ではなく、着火魔法なせいか、火だるまのまま赤猪は木にぶつかり、そのまま動かなくなる。

 その直後、赤猪の火が木に燃え移り、メラメラと火柱が立ち昇った。



「ウワァァーーー!! ヤバいっ!! どどどど、どうしようっ! みっ、水っ! えっと、クリエイト……」



 魔法にはイメージが大事だとわかっているのに、慌てて頭が真っ白になってしまった。

 その間にも炎は上へ上へと伸びていく。



「『竜巻(トルネード)』!」



 ジョンの風魔法で池の水が上空に巻き上げられ、雨のように降り注ぐ。

 俺もビショビショになったけど、木に燃え移った火は見事に鎮火した。



「ありがとうジョン、助かったよ」



「はぁ、上手くいってよかったぁ~!」



 焼け焦げた赤猪を爪先でつつく。



「し、死んでるよな?」



「うん……、すごいよリッキー! 赤猪を単独討伐だなんて! 着火魔法なのに凄かった!」



 ハッ!

 そういえば俺とした事が、慌てたせいでカッコイイ詠唱するのを忘れた!

 後悔の念にかられ、頭を抱えてうずくまる。



「くぅ……っ!」



「どうしたの!? もしかして凄い魔法だったから魔力が尽きたとか!?」



 俺を心配してオロオロし出すジョン。

 安心させようと俺が口を開く前に、冒険者の男がうめき声を上げた。



「うぐぅ……っ、クソッ、イテテテ」



 怪我はしているだろうが、どうやら無事だったようだ。

 ジョンは冒険者を心配そうに見ているが、ああいうタイプは甘やかした分つけ上がると前世の知識が教えてくれる。



「ジョン、俺は大丈夫だから、赤猪に縄をかけて運ぼうぜ」



「う、うん……」



「おい待てっ! そいつは俺の獲物だぞ! 横取りはルール違反だろう!」



 初心者セットの鞄から取り出した縄を赤猪にかけていたら、冒険者が草叢の中でもがきながら文句を言い出した。

 


「何言ってんだ。無傷な赤猪をトレインしてきたのはアンタだろ! 俺達がいなきゃ死んでてもおかしくなかったんだぞ! ギルドに報告するからな! 行こうジョン! 力の奔流よ、我が身に宿れ『身体強化』(パワーブースト)



「あっ、それもカッコイイ! 力の奔流よ、我が身に宿れ『身体強化』(パワーブースト)



 満面の笑みで俺の詠唱をマネしたジョンと一緒に、二人で赤猪を引きずってギルドへ向かった。

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