「世界史って、OSなんですか?
学食の片隅。野田さんだけ、世界史の教科書を読みながらカレーうどんを冷ましている。
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野田(眉間にしわを寄せながら):
「……カノッサの屈辱って、誰にとっての“屈辱”だったんだろう……神聖ローマ皇帝? 教皇? どっちに感情移入すればいいの……?」
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富澤(唐揚げをつまみながら):
「ねぇ、野田さんって…大学入っても、まだ受験の参考書使ってんの? もうさすがにフラッシュカード卒業しよ?」
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部長(女子力強めの筆箱を開けながら):
「いやいやいや、それすごくいいことよ!世界史って、現代を読み解くための“OS”なんだから!古代オリエントからAI戦争まで、ぜんぶ一本のコードでつながってるの!」
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副部長(静かにサラダを食べながら):
「OSというよりは、時間と空間のフレームワークだな。世界史を学ぶことは、現在の事象に多層的なスキーマを適用可能にする、って意味で…」
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部長(突然ノートをバッと広げる):
「例えばっ!“資本主義の発展”って言葉ひとつ取っても──中世のギルド→商業革命→重商主義→産業革命→帝国主義→グローバリズム!この流れが頭に入ってると、経済ニュースが全部伏線回収に見えるの!!」
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富澤(ぽけっとした目で):
「うーん…なんか、世界ってシーズン7の海外ドラマ見てる気分…登場人物の関係図、多すぎて途中からわかんないやつ…」
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野田(突然立ち上がって):
「そうです富澤さん、それが“歴史の鳥瞰図”です!!地図がなければ、物語を正しく歩けません!私がいま暗記してるこの“ナポレオン戦争”だって、EUの成り立ちにつながって──!」
(手が滑って冷めたカレーうどんを床に落とす)
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副部長(ティッシュを差し出しながら):
「そもそも、“歴史から学ぶ”とは、同じエラーを避けるためのログ解析だよ。ユーザーの意識より、システム全体のアーキテクチャが見えるかどうかが重要。」
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部長(なぜか目が潤んでる):
「そうそうそうなの副部長!だから私たちは、**過去の制度、思想、宗教、経済の“接続関係”**をちゃんと追うべきなの!
パレスチナ問題?ウクライナ危機?みんな“突然起こった”んじゃないのよ!“ちゃんと原因がある!”ってことを…伝えたいっ!」
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富澤:
「…なんか今、世界史って…SFみたいに思えてきた……時間旅行しながら、現在がどうしてこうなったかを解読してる…みたいな…」
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野田(ティッシュで机を拭きながら):
「わかります!過去は固定されてますが、“解釈”は現在の状況で変わります!つまり私たちは、“過去に何を問うか”を更新し続けることで、知的に進化するんです!」
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部長(突然スケッチブックを開いて):
「みんな、今こそ世界史を“内蔵ソフト”じゃなく、“再プログラミング可能な思想OS”として再認識して!!」
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富澤:
「え、でもそのOSって、アップデート来る?自動?」
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副部長(静かに):
「アップデートは、自分で問い直す限りにおいて、発生する。」
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結びの一言:野田さん(うどんの器を片づけながら)
「世界史って、“世界のしくみ”を外から見て、中に生きる自分を理解する方法だったんですね……
私はその地図に、まだ“自分の現在地”を書き加えようとしているんです。」
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