「人間って、進化してるの?してないの?」
大学の中庭、手影絵サークルの昼休み
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野田(真顔でノートを開きながら):
「人間って、5万年前から進化してないって知ってました? 脳の大きさも、形も、DNA的にも。」
富澤:
「え、マジで?じゃああたしって…旧石器女子?」
副部長(やや鼻で笑いながら):
「まあ、身体的にはそうかもね。脳の大きさとか、基本スペックは変わってない。でも、人間社会のほうが進化したって話よ。」
部長(目を輝かせながら身を乗り出す):
「そう!それがいわゆる“文化的進化”ってやつ!火の使用、農耕、貨幣、法律、インターネット、AI──全部“脳そのもの”じゃなくて、“脳の使い方”と“外部記憶装置”が進化してきたんだ!」
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野田(ノートに真剣に書きながら):
「つまり、人類は脳を改造しなかったけど、“制度”や“言語”や“虚構”で補った…?」
富澤(口にパンくずつけたまま):
「え、ちょっと待って、“虚構”? なにそれ、怖…」
副部長(淡々と):
「神話、宗教、国家、法律、通貨。全部、人間が“本当じゃないけど信じることにしたもの”。実体より“合意”の力ってことね。」
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部長(嬉々として語る):
「そしてそれを可能にしたのが、5万年前の“認知革命”だよ!脳のハードは変わってないけど、ソフトが突然アップデートされた──言語、象徴操作、ミームの継承!」
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野田(やや震え声で):
「でもそれって…怖くないですか? もしソフトがバグったら、みんな同じ間違いを繰り返すってことですよね…?」
副部長(静かにうなずく):
「実際にそうなってるじゃない。戦争、差別、陰謀論。進化してるどころか、**“制度が崩れれば、中身は旧石器”**ってこと。」
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富澤(空を見ながら):
「うちら、脳みそスペックは5万年前と同じで、スマホとかAIとか使ってるんだ…やばくない?」
野田(真剣に):
「だから私は、次の進化は**“倫理”のアップデート**だと思います。共感とか、思考とか、“暴走を止める装置”としての…文化。」
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部長:
「DNAの時代は終わった。これからはメモリーとプロトコルの時代…人間という旧石器マシンに、どんなソフトを入れるかが問われてるんだ。」
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富澤(パンの包み紙を丸めながら):
「とりあえず、進化ってより…アップデートなんだね。で、私まだiOS旧バージョンかも。」
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野田(突然立ち上がって):
「私は、歴史というOSをハッキングして、“未来の倫理”を再設計したいです!」
全員(沈黙)
富澤:
「え…それってレポートの話?」
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