違和感
「そいじゃ、今日の活動はしまいや。明日から任務になるから。今日は早めに休むように。以上!解散ッ!」
「了解しました。」
「りょーかーい。」
「・・・了解。」
それぞれが返事をして、ブリーフィングルームから退出していかれました。私はそんな中、
「ロスト隊長!少しお聞きしたいことがあるのですが・・・」
話を聞こうと思い、ロスト隊長を引き留めました。
そのとき、ナルさんから凄い圧を感じましたがいったん気にしないことにしました。
「それで聞きたいことって言うのはなんや?」
「はい、ヴァ―チルさんについてなのですが、その、なんというか、私が知っている戦い方と大きくかけ離れていて、戸惑いというか、違和感があったのですが。何か事情があるのでしょうか?」
「・・・なんでそれを聞きたいんや?ただの興味本位や同情ならやめときい。そんな簡単なもんやないからなぁ」
どこか私を試すように話すロスト隊長。
私は自分なりの答えを考えて話し始めました。
「・・・私はヴァ―チルさんに学生時代戦場で窮地を救っていただきました。その時の彼の強さ、そしてやさしさに触れた私だからわかります。今の彼は正常じゃありません。なにかがあるなら私は助けになりたいと思うのです。だからお願いします、教えてください!」
深々と頭を下げ、ロスト隊長にお願いしました。
「はぁー、まあ及第点ってとこやな。その気持ちがほんまもんと思って話したるわ。」
まぁ立ち話もなんやし、すわりぃや、ちょっと長くなるからな
ええか、今から話すのは全てじゃない。ルイ、あいつがここに入るまでの話や。
ワイはな、あいつが二つ名を持つ前から知っとった。
あいつが所属していたユニットはジャイル・ウィリアムが率いるジャイルユニット。
ここに10歳のころから所属していたんや。
おどろきやろ?
普通ユニットに所属するのは15歳や。あいつは身寄りをなくしてしもうて、そんなところをジャイルさんに拾われた。
少しでも強くなって役に立とうするために今は無くなってしまった飛び級制度を使ってユニットに所属したんや。
ワイが出会ったのはもう7年も前になるか。ワイもジャイルさんのところで最初はお世話になってたんや。当時13歳のあいつは生意気やったからな。
「弱い奴はついてこれない。早めに移籍することをお勧めする。」
なんていいおったから、ワイは後ろからドロップキックをかましてやったんや。
そこからは取っ組み合いの喧嘩や。ジャイルさんにこっぴどく怒られたなぁ。
そして、お互いのことを知っていった。口下手、ポンコツ、甘党。
知れば知るほどガキやった。
けど、戦場ではあいつが後ろにいることがなによりも安心できた。
誰よりも仲間を大切にして、皆を守るその姿にひそかにあこがれておった。
喧嘩ばっかりやったけど、ワイは兄弟のように思とった。
3年間お世話になった後、初のドライバーの隊長になるために、ユニットを離れたんや。
再開したのは二年前や。
二年前の「モルト平原の悪夢」。多くの死傷者がでてしまった。ここ十数年で一番な。その際にジャイルユニットは壊滅。残ったのはあいつともう一人だけやった。
再開したのは、病院にワイが見舞いに行った時でな、心ここにあらずって感じで見ていられん姿やった。
復帰したあいつは所属なしになった。そういう場合はスカウトだったり、国のサポートを受けて他のユニットに入るか、後方職に就くかや。
あいつは二つ名があったし、もちろんワイも誘った。
あいにく新設したばっかのワイのユニットには、権利はなかった。
けど戻ってきたあいつは壊れてたんや。
命令無視の独断専行、今までとは全く違う戦い方。
何よりも仲間を危険にさらすそのやり方から周りから敬遠されていったんや。
あいつがいくつものユニットから追い出されてようやくウチにきよった。
復帰してから久しぶりに見た姿はやつれて、覇気がなかった。
なんとか元気になってほしくて、話しかけたりしても反応は薄くてな。
そして任務の際にまた、ここでも仲間を巻き込む戦い方をした。
ワイはキレた。いくら兄弟のように思ってても限度はある。
ドロップキックをかまして倒れたあいつにマウントポジションとって殴りながら心の内を叫んだんや。
ジャイルさんたちのことが悲しいのはあいつだけやない。ワイかて悲しかった。みんなええ人達やったからなぁ。気持ちはわかるんや
やけど、仲間を蔑ろにする姿に、我慢が出来なくなってしまったんや。
最初は無抵抗だったあいつも途中から反撃してきおった。
今度はだれも止める人がいなかったから一晩中訓練場での大ゲンカ。
やりあった後、今のスタイルを変えるつもりはないこと、だけど、仲間を危険に巻き込まないことだけは約束してくれたんや。
まぁ長い話にはなったがあいつがなんでこうなったかは分かったやろ?
―—―――あいつはな、死にたいんや。死んで仲間たちのところへといくことを望んでる。