訓練2
「アホォォォォォウ!!やりすぎや!毎度毎度何回言うたらわかんねぇん!」
戻ってきたナルさんを怒るロスト隊長。悲痛さと怒りが混じった顔からこれまでどれだけ苦労してきたのかがわかります。
「だってよぉ!今日は拡張コードは使ってねえし、理性的だったろぉ!?」
「毎度この火力を訓練で出すのはやめてくれんか?維持費でうちのユニットはかつかつになってしまうんや。お前たちの装備代も給金も無くなってしまうねん」
真剣に言われてしまい、流石にシュンとしてしまったナルさん。
「頑張ったんだからちょっとはほめてよぉ」
ナルさんはボソッと何かをつぶやいていました。
ロスト隊長もなにをいっていたのかはわからなかったようですが、シュンとしてしまったナルさんを慰めるように彼女の頭をなでながらこう言っていました。
「まあなんや、あれこれ言ったけどお前のこと頼りにしてるんやからな?がんばれよ」
そういわれたナルさんは、バッと顔を上げ、元気を取り戻しました。
「なんだよぉ、焦って損しちまったじゃねぇか。まあそんな小さなこと気にするなんてアタシらしくないよな!!」
・・・少し元気すぎる気がしますけどね。
元気になったナルさんを見ながら「わいも甘すぎるかなぁ」とロスト隊長も苦笑しているのでした。
そういえばと、私はナルさんに戦い方を見ていて気になったことを聞くのでした。
「ナルさんは3つほどコードを使っていましたが、トリプルなのですか?」
そう聞くとナルさんとロスト隊長は顔を見合わせ、ばつが悪そうにしていました。
頭をガシガシかきながらナルさんは、私の疑問に答えてくれた。
「いやー、実はアタシは全部のコードが使えるんだよ。」
その衝撃的な返答に私は目を見開いた。
コードをあのレベルの構築速度で作り上げることが出来、あの威力をすべてのコードで!?
その知識量と実力に感嘆しそうになると、ナルさんは手を振りながら
「あー、すまん。言葉が足りなかった。爆発系のコードのみすべてのコードがつかえるんだよ。」
と否定してきたのです。
曰く、最初はどのコードも理解できずに大変だったが唯一作成グレネードだけ人よりうまく構築でき、また他のコードにも存在する爆発する系のコードはうまく扱えるらしい。
また、身につけていくたび、爆発の魅力に引き付けられていき、今更普通のコードを身につけるつもりはないらしい。
「まあだからそれ以外のコードは学生よりもへたくそなんだよな」
アッハッハッハと笑う彼女に私は、目が点になってしまったのでした。。
ボロボロになった訓練場をあとにして、別の訓練場へと移ってきていました。
その際、管理人さんにぺこぺこと頭を下げながら許可をもらいに行く姿に何とも言えない気持ちになってしまいました。
管理人さんは慣れているのか、「後で請求書おくっとくからな」とだけいい、許可をくれたのでした。
「さて、残るはワイとヴァ―だけか。ワイはドライバーやから、今回見せ場が特にはないんよな~。というわけでヴァ―張り切っていって来い!」
「・・・わかった」
ついに憧れの風鳴、ルイス・ヴァ―チルさんの戦いを目の前で見ることが出来ると思うと
興奮してきました。
ヴァ―チルさんはスタート地点で私と同じ長銃型のデバイスを起動させてました。
あの人のスタイルは風を纏わせ、空中から敵を撃ち抜く。まさに蝶のように舞い、蜂のように刺すといった形です。
スタートの合図とともに、コードを起動させていきます。
「シルフコード、付与風の衣」
私の部分的な付与とは違い、体全体を覆い、身体能力を底上げするコードです。その分消費も大きいですが、一気に終わらせるつもりなのでしょうか?
そして、上に飛翔す―—―――
!?いえ、違います!まっすぐ付与で得た推進力を使って、突撃していきます!
そしてそのまま、敵に向かって発砲。マナの弾ではなく、普通の弾であり、やはりここも以前とは違います。
直線的に向かってくる敵に対して、打ち返さないわけもなく、三体がかりによる弾幕がヴァ―チルさんを襲います。
彼らが使う弾は演習用のマナの弾であり、怪我はしませんがしっかりと痛みは発生させるのです。思わず「あぶない!」と言ってしまいました。
けれども、纏った風で攻撃をはじき、しっかりと敵を倒していくのでした。
その後も敵を見つけると一直線に向かいながら撃破していきました。
しかし、その戦い方は私が知っているような華麗で見とれてしまうようなものではなく、嵐のように苛烈で、目を背けてしまいたくなるほど危うさをもった戦い方に見えてしまったのです。
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