訓練
ロスト隊の皆さんと交流を果たした次の日
私はロスト隊の皆さんと仮想訓練場の端のほうにきていました。
仮想訓練場には、仮想ターゲットがあり、これを用いて射撃の訓練をすることができます。
「ええか、今日はお互いの実力を知るための訓練や。新しい人もおるんやからな、あんま本気にならんようにな!」
アラン隊長の口調は冗談交じりではなく、声に迫力がありました。
まるでつもりに積もった呪詛のような迫力です。
その声にビクッとなったナルさんを私は見逃しませんでした。
普段からどんなことをしたらそうなるんですか?
呆れていると、ロスト隊長から声がかかる。
「フラン、まずはあんたからや。得意なスタイルで10個のターゲットを撃ち抜いてみい。まあレベルはハードでええやろ」
「わかりました。」
落ち着いて普段通りの実力をだせばいいだけ。集中、集中。
デバイスを起動させ、スタンバイする。
スタートの音と共に駆け出し、コードを立ち上げる。
「イグニコード付与、脚部」
足にマナが溜まり、爆発的な加速を生み出す。
通常の私の戦い方は、長銃型デバイスで近距離は実弾、遠距離はコードを使い、敵を倒すスタイルです。1体目のターゲットを確認すると撃つ。
2,3体目をと続けて倒すと、攻撃が来る。
このシステムは難易度によって、AIのレベルが変わり、打ち返しや連携も取ってくる。
左右からの挟み撃ちをしてくるが、強化した脚力を活かし、右側にスライディングをしながら迫り、片付ける。
右側も正確に撃ち抜き、一息つこうと思ったところで、上からの奇襲が来る。影で奇襲に気づいた私はその場から2歩前に出て、着地してきた相手にデバイスで殴り、蹴りで怯ませたところで撃ち込み、終わらせる。
残りは固まりながら私のもとへと向かっていた。
今のままの火力だと全員を倒すことが出来ずに、攻撃を食らってしまいます。
ならば―—――――
「イグニコード、点火!ガトリングッ!」
火力をあげて、ごり押しするだけ。
デバイスから先ほどとは比べ物にならないほど威力、速度で撃っていく。
残りの敵を一層したことで、終了のブザーが鳴った。
「いやー、いいもんみれたわ。ハードを一発も食らわず、クリアさせるとは。流石は桜炎舞のパトラ・フランメージュや」
「ありがとうございます。ロスト隊長は私の二つ名知ってたんですね。」
「いやまあ、さすがにちゃらんぽらんなワシでもメンバーのことは知らんと行けんからな。しっかり経歴書には目を通してるで。」
私の二つ名は桜炎舞。この髪と踊るように敵を倒すことから名前が付けられました。
気取っているようで少し恥ずかしいのですが、この名に恥じぬよう努力しています。
「コードの流れもきれいで正確。まるでお手本のような戦闘だったわ!」
「ふふふ、そういってもらえて光栄です。」
「今度は本気見れるといいなぁ?」
やっぱり侮れない。
こちらを見るまなざしが一瞬獣ようになったのを感じていましたが本気でないことを見抜かれてしまったようですね。
けれど、あれはあまり出したくないのです。
「・・・さぁ、何のことでしょうか、早く皆さんのお力も見していただきたいですね。」
私が詮索されないように、次を促すとさっきの雰囲気が消え、泣きそうな目でこちらを見てきた。
「やっぱやらんといけんかなぁ?」
「?ええ、ぜひ皆さんのお力も知りたいです。これからの任務でご一緒するのですから。」
「はぁ、オイ、ナル。次はおまえさんや!」
声をかけられたナルさんは満面の笑顔で近寄ってきた。
「おい、フランメージュ、お前中々やるな!強い奴は大歓迎だぜ!それで隊長、私もしていいんだよな?本当にいいんだよな!?」
「落ち着け、落ち着け、いいか、今日は訓練。あんまり派手にやりすぎるなよ!」
「わかった!」
そういうと彼女は走ってスタート地点まで行ってしまったのでした。
あそこまで念押しする理由がわからず、理由を聞いてみることにしました。
「あのー、なんでそこまで彼女に念押しするんですか。多少やりすぎてもこの施設はそう簡単に壊れたりはしませんよ?」
「見とればわかる。ああ、たのむ、今日こそは堪忍してくれぇ」
そこには何かに祈っているアラン隊長がいたのです。
彼女のデバイスは大型の口径にロケットランチャー型のアタッチメントがついていました。
コード使う武器のアタッチメントの類は普通の武器と同じ見た目をしていますが、性能はそれを数倍に引き上げた代物であり、また特別な能力を持っています。
彼女が用いるロケットランチャー型は発射する弾を内部で生成することでき、荷物がかさばらないというメリットもあるのです。
昨日自分でもボマーといっていた通り、彼女の主武装はあのランチャーなのでしょう。確かに凄まじい火力が期待できそうです。
スタートの合図とともに彼女は弾を生成し始めました。
「イグニコード、作成、グレネード」
一回のコードの使用で10個ほどのグレネード弾を作り出し、装填しました。
後は敵に向かって打つのか。そう思っていると
「発射ッ!!」
・・・え?
彼女は作った弾を目測もつけずに、前方に向かって扇状に打ち出したのです。
爆風によって二体ほど敵のアバターがでてきました。
な、なるほど。そこを討ち取るわけですね。
爆風のほうに目を向けていたので、ナルさんに目を戻すとそこにはグレネード弾を大量に生成し、装填している彼女がいました。
・・・えぇ?
先ほどの爆発はほんの小手調べかのように、大爆発が訓練場で起きていました。
先ほどの二体とついでにもう二体もいつの間にか倒されていたのです。
調子が出てきたのか、彼女はさらなる弾を作り出していきます。
「イグニコード作成、ナパーム!」
これをばら撒くとあちこちから火の手が上がっていきます。
スコアは少しずつ増えていきますがそれに対し明らかに規模が大きすぎます。
爆風の中運よく抜けてきた敵が彼女によってきますが、にやりと笑った彼女は
「エレクコード作成、EMP!」
電磁波を発生させる爆弾を作り、相手の動きを止め、さらに
「シルフコード作成、風爆!」
風圧を発生させる爆弾で、敵との距離をとりながら、最後はグレネード弾でとどめ。
・・・すごい技術です。
しかし・・・・
「アハハハハハハハハハハ!!!」
訓練場内は爆風と火の手で大惨事となっていた。
あの爆発を起こしている本人は愉悦に浸りながら、まだ続けていた。
よく最後の敵はいきているなぁと思うことで私はこの現状から現実逃避をしていました
そうすると隣から「あぁ・・・」という情けない声が聞こえてきました。
確かにこれは多少の損害では済みそうに無さうです。
「もうやめてくれぇぇぇえええええ!!!」
「アッハッハッハッハッハッハ!!!!!」