衝撃
目を覚ますと、そこには、不安そうな顔をしている茶髪の女性の顔が正面にあった。その人は小さい声で「大丈夫かなぁ」とつぶやいている。
「あの・・・・」と私が声をかけようとすると、それに気づいた彼女はほっと息をなでおろし、ふりかえりながら、
「お嬢さんが目を覚ましたぞぉぉ!」と今までの様子からは考えられないような声で叫んでいた。
その変貌ぶりに呆気に取られていると、奥からダークブロンドの髪色をした男の人が耳を抑えながら顔を出してながら、
「そんな叫ばんでも聞こえとるわ!けが人の前で大きな声を出すな、ボケェ!」
と、怒鳴り返す声が聞こえてくる。
その人は彼女をと入れ替わりで私の前に来ると椅子に座り、
「すまんなぁ、騒がしくしてもうて。もう意識ははっきりしとるか?」
陽気に声をかけてきてくれた。
男性からは明るい雰囲気の中にもどこか野性味を感じる。男性の胸の階級章を確認すると、三本線の上に月桂樹の紋章。これは隊長に与えられるものだ。つまり、この人が
「先に自己紹介しておくわ、俺がこの隊の隊長をしとるアラン・ロストや。よろしゅうな。」
・・・やっぱり。
目の前にいる彼があの問題ばかり起こすこのユニットの隊長アラン・ロストなのだ。
私は慌てて、立ち上がり、敬礼をしながら自己紹介を始めた。
「本日より、お世話になります。ローズユニットより参りました。パトラ・フランメージュ少佐です。
よろしくお願いいたします。」
「ああ、ええてええて。そんな堅苦しくせんでも話は聞いとるから。ローズんとこの秘蔵っ子やろ?
真面目で、優秀だけど、ちょっと固くなりやすいから~っていっとたわ。」
そんな話を聞かされると少し恥ずかしくなってしまう。頬を赤くしている私を見ると笑いながらアラン隊長はからかうような口調で話しかけてきた。
「そんなに固くならんでもええのに。見ての通り、ここには規律や規則なんてものがないんやから。」
「えっ?」
「さっきの爆発が日常茶飯事なんよ。ここでは、常にトラブルが起きるんや。個性が強すぎるメンバーのせいでな。ここには周りとあわない、あわせるのが苦手な尖ったメンバーしかおらん。」
「そ、そうなんですか。」
「ああ、さっきの奴はナル・クライス、爆発を至高として、最高火力を求めるボンバーウーマンや。戦場ではその広範囲の火力が頼もしいが、日常生活でも発揮してくるからな。」
なんだそのトラブルメイカーは。
内心で思わず突っ込んでしまうぐらいにはインパクトが強かった。
もしかすると、他のメンバーもこれほどまでにインパクトがあるのだろうか。
他のメンバーとの邂逅に戦々恐々としていると、それに気づいたアラン隊長が苦笑しながら、
「あんしんせえ。いまメンバーの大半は遠征のサポートに出ているから、会うのはもうちょい先やな。今いるのはナルともう一人のアタッカー、サポーターとオペレーターが一人ずつ残っているかんじや。」
ホッと私は息をついた。ここにきてから何度息をついているのだろうか。
確かにあのレベルの人たちと一斉に交流を図ったらすごい胃もたれをしそうだ。
アラン隊長とこれからのことについて話をしていると、焦げ跡のついたブリーフィングルームの扉が開き、そこから一人の人が入ってきた。その姿を見たアラン隊長は私に声をかけてきた。
「やっと帰ってきよったな、お疲れさん。パトラ嬢、紹介するわ。こいつはうちの中では結構新入りなんやけどなーーーーー。」
途中から話は聞こえていなかった。
だってそこにいたのは、あの日私を救ってくれた恩人の姿だったから。
「名前はルイス・ヴァ―チルっていうてな、こんな見た目やけど、二つ名持ちなんやで。
その名も―――」
私も知っている。いつかお礼を言いたくて調べたその速すぎる弾速と正確な狙撃の腕からつけられたこの人の二つ名は
「「風鳴」」
アランの関西弁がこれでいいのか、不安です。
もう少し話は引き延ばしたほうが良いのだろうか。