初任務
ヴァ―チルさんの過去を聞いた次の日、ロスト隊の皆さんと私は車両倉庫R-1の前に集まっていました。
私は昨日のことが、頭に残り、彼の顔をまともに見ることはできませんでした。
ちらりと、横目で見る表情は昨日と同じ無気力な表情をしていました。
ですが、私にはその無気力な顔の奥には何かがあると思えてなりませんでした。
そんなことを考えているとロスト隊長が「おーい。」と声をかけ、ミーティングを始めました。
「確認しとくぞー、今回はローズのユニットとの共同作戦や。目的はロナードタウンの奪還や。そして、目標は町の中心部に存在するメインシステムを奪い取るちゅうのが任務やな。ここは二年前まで、ファートム国の領土やったから、地図はある。まぁ細かいところだったりは変わってるから気を付けるように。」
「「「了解。」」」
「そして、動きについてやけど、俺たちが西側、ローズたちが東側から挟み込む形に責める。今回二つのユニットのみで責めることが出来るのは相手側が手薄になっており、中隊が一つだけだからや。ただし、他の町からの増援がくると、任務が困難になる。やから、今回はおとり作戦で行くことが決まった。」
「おとり作戦ですか・・・。では、どちらがデコイをするのですか?」
「それは・・・ワイらや。」
「ッ?!隊長、それは無謀じゃないですか?現在こちらのユニットは前線で戦えるのがアタッカー三人だけですよね。流石に中隊を相手にするのは厳しいのでは?」
「確かにまともに相手をしたらなぁ」
ニヤッと笑うとロスト隊長は、倉庫の扉を開けました。
そこには、威圧感を感じる黒い装甲車両がありました。
「隊長、この車両は何なのですか?すごい威圧感があるのですが」
「あっ、ばか。隊長にその質問は!」
「よくぞ、聞いてくれた!これはワイの愛車、怒裂土や!こいつはな、型こそ古いが、中に積んでるエンジンは最新式とカスタムによって馬力は驚異の5000越えや!更にマナ機構を三台も積んでおってな、スピードは従来の車両の十倍出るんや。その分かかるエネルギーに心配が出てくるやろ?そこは配線を循環型することで消費マナを抑えて、長期戦にも可能に。タイヤにも工夫があってな、このタイプによく使われるゼラニウム配合じゃなくて―—――――。」
ロスト隊長は作戦のことは投げ出し、自分の車両について説明を始めてしまいました。
「あーあ。止まらなくなっちまった。」と、ナルさんが私の横に来てくれました。
困惑している私は彼女に助けを求めました。
「ナ、ナルさん。あのロスト隊長が・・・」
「隊長はなぁ、車両のことになると童心に帰ったみたいにとまらなくなっちゃうんだよ。止めないと三時間は説明と思い出やら、いろいろと話し続ける。それに休みの日は予定がなかったらずっとカスタムか試運転をする車バカなんだよ。」
「な、なるほど。」
流石ロストユニットの隊長。噂は間違いでまともな人なのかと思ったら全然そんなことはなかった。
ただ、ボンバーウーマンのナルさんほどではない。
とりあえず、止めないと。
「隊長、そのお話は置いといて作戦について・・・」
「エンジンのカスタムなんやけどなこれがめっちゃくろうしたんよ、なんせ―—―――」
「あ、あの隊長そろそろ・・・」
「ちゅうことがあってな、そこを改善するために―――」
「たい―—――。」
「そして、二十回目のテストでようやく理想の―――」
だ、ダメです。まったく止まる気配がありません。
けれど、話を続ける隊長にしびれを切らしたナルさんが銃を担ぎながら、隊長の後ろに立つと、「フンッ!!」とスイング一閃。
ゴンっという音と共に隊長は地面に沈みました。
少し経つと隊長は、頭をさすりながら、起きてきました。
「あいたたた、ナル!いきなりなんやねん!」
「なんでじゃねえよ。またアンタのいつもの暴走が始まったから、止めてやったんだろぉ?感謝してくれてもいいんだぜ!」
「誰がするか、あほ!それに俺は聞かれたことに答えてやってただけや!」
「それであそこまで話してたら本末転倒ってやつだろ、ほらほら、作戦の続きをさっさと話せ。」
「ったく。」といいながらこちらに向き直った隊長は、今度こそ作戦の根幹について話し始めました。
「まぁとにかく結局はこいつの機動力を使ったヒットアンドアウェイってところや。引き付けるだけ引き付けてローズたちのシステム奪還をサポートしていくんや。理解したか?」
「「「了解」」」
「そいじゃ、急いで乗り込め。なぜか予定よりも時間が押しているからな!」
それは隊長のせいなんじゃ・・・
その思いを口にすることはなく、私たちは車両に乗り込みました。
全員が乗り込んだことを確認すると、隊長はエンジンをかけました。
「ロスト・ユニット、ロナードタウンに向けて出発やぁ!!」
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