深淵は『愛』を蝕む
急遽作成した、九条桐椰、初の短編小説です。
粗削りですが、ぜひ読んでください!!!
「美咲、今日も家来るの?」
そう、悠君は聞いてきた。
「うん・・・だめ?」
「泊めてあげたいけど、今日親来るから」
「そっか・・・いつもごめんね・・・泊めてもらっちゃって」
私、野々坂美咲は、彼、片中悠生と帰り道についている。
でも、私の家に居場所はない。
両親は出来損ないの私を罵り、追い詰めてくる。
あそこを、家と呼んでいいのだろうか、もう早く
あそこから逃げ出したいよ。
「あ!お前また傷・・・」
「あ・・・気にしないで、大丈夫」
「バカ、ちょっと見せろ」
「あ・・・」
うちの親と比べなくてもわかる。
悠君は優しい。
こんな汚い私と仲良くしてくれる、ああ、駄目、すでに好きになってるのにそれ以上を求めるなんて・・・付き合ってくれたら、シてくれるのかな?
「美咲?」
「ああ、ごめんありがとう」
「お前、もうリスカやめといたほういいぞ」
「いやだ・・・・・・」
「え?」
「私の親に対する苦しみは・・・こんなかすり傷じゃ・・・」
「俺は、美咲がこれ以上傷つくとこ見たくないんだよ!」
「だったらさぁ・・・・・・早く、親殺してよ・・・」
「え?」
「親の罵声を浴びるのが子供の役目なの?・・・奴隷みたいに働くのが普通の子供なの?
親に忠誠を誓うのが子供のするべきことなの?
絶対違うよ・・・もう・・・わかんないよ・・・もう、家族なんて嫌だ!
もう全部、めちゃくちゃにしたいよぉぉぉ・・・・・・」
「美咲・・・」
「悠君は、私の唯一の味方なんだよ?悠君は否定しないよね・・・ねえ、
ねえってばぁぁぁ・・・苦しいよ・・・もう、死にたい・・・・・・。」
「頼むから落ち着いてくれ!美咲!!」
「っ!?・・・悠君・・・」
強引だけど、悠君は私を抱きしめた。
(ああ・・・あったかいなあぁぁ、悠君の体。コート着てるのに、
こんなにぬくもりを感じるの、初めて・・・ああ、このぬくもりは
私だけのもの・・・)
「落ち着いたか?」
「うん・・・ありがとう・・・・・・ねえ」
「これだけ言わせて」
「何?」
悠君はこう言った。
「俺、今日から家戻れないんだよ」
「え・・・・・・」
なんで、悠君はいい子なのに・・・なんで?
「実は・・・さっき、お前の親を殺した。事実だ。これが証拠」
悠君は、スマホで撮った写真を私に見せた。
そこには、私の父と母、そして、私の妹が血まみれで
横たわっていた。
「よかった・・・ははは・・・ははははは!!
やったー!やっと、やっと死んだやっと殺してくれた!!!
はははははははは!!!しかも、私の好きな人が私の親を殺してくれた・・・
嬉しい・・・今日のために、この日のために私は、生きていたんだ・・・
ああ、神様、そして悠君ありがとう・・・・・・え?」
急な朗報に私は狂喜乱舞した。
そのうれしさのせいで、気付かなかった。
悠君は、私の親を殺した時の刃物が、私の背中に刺さっていた。
悠君は、多分、あのときのハグと同時に私の背中に突き刺したのだろう。
遠くなっていく意識の中、私は悠君の言ったことが、うれしくてたまらなかった。
(ああ、神様どうか、私を天国へ連れてって)
「死んだか・・・・・・今行くから
いい子で待ってろ、美咲・・・・・・・・・」