第21話 臨時ボーナス
ちょっと今月中に10万字超えたいので、やっぱり今週は毎日更新します。
俺たちが屋敷の外に出ると、そこには大軍勢。
角が生えたり青黒い肌だったりで、いかにも魔族な感じの連中がひしめいていた。
さっきまで晴天だった空は真っ黒な雲に覆われて、所々が雷で光っている。
「一応、聞いておこう。何者だ貴様?」
マロニーさんが、良く通る澄んだ低めの大きな声音で尋ねる。
すぐに魔族軍団の中心部辺りから、イラッとする感じのチンピラ口調の叫び声が帰ってきた。
「なんだテメエ片目野郎が! このキリヤ様に向かって馴れ馴れしく名前を聞こうとしてるんじゃねえ!」
……バカなのかな?
名前を聞かれるのを怒ってるのに、先にキリヤって自分で言っちゃってるよ。
ていうか、こっちは誰がボスなのかすら分からなかったのに、これで一発判明したし。
声の出どころを見る。
そこには肌が青くて頭の横から角が生えてる以外は、チンピラチャラ男そのものな奴がいた。
見た目は大したことなさそうだったけど、何となく得体の知れない感じがする。
そう思った時、マロニーさんから指示が来た。
「洋児くん、君の解析チートで相手のデータを見れないか?」
「あ、そうか」
そ、そうだった!
こんな時に使わなくて、いつ使うんだよ!
慌ててキリヤと名乗った魔族の男に視線を合わせた。
イ・キリヤ・ロウ(井桐 太郎):レベル887/999
メインロール:ヴィラン
職業タイプ:タンク
特殊スキル:支配(ザ・カンカー)……他者を強制的に従わせて自分の魔力に変える。また、支配した者の能力の使役も強制できる。
これだけ?
つか、なんで名前が二つ表示されているんだ?
しかもチートの説明がちょっとしか出てこないよ!?
「変ですマロニーさん、アイツの情報がほとんど出てきません。名前も二つ出ているし」
「二つ!? どんな名前がどんな風に表示されているんだ洋児くん!!」
「え? えっと、ひとつはイ・キリヤ・ロウって異世界風の名前で、その後ろにカッコで括られて井桐太郎って……」
奴の名前が二つ表示されている事に、えらく食いついて来たマロニーさん。
それに面食らいながら、俺はチートで表示された名前を読み上げた。
それを聞いたマロニーさんはさらに俺に詰め寄る。
「そいつの名前に星マークは付いてないか!? 日本人名のところだ!」
「え? い、いや何も付いてませんけど……」
その俺の返事を聞いて、マロニーさんはキリヤと名乗った魔族を厳しい顔で見つめる。
その真剣な表情に少し不安になった俺。
思わず目の前の片目エルフに尋ねた。
「あ、あのマロニーさん。アイツの名前がどうかしたんで──」
そのとき俺は、例のマロニーさんの右目と左手を奪ったという転生者の弟の事を思い出していた。
マロニーさんのこの表情、もしかして……。
「ビンゴだ! こんな所で賞金首の転生者に出会えるとはな、思いもよらぬ臨時ボーナスだぜ!!」
「へ!? あの〜マロニーさん?」
こちらの予測と全く違う反応。
さっきの顔とは一転、喜色満面で叫ぶ隻眼のエルフ。
臨時ボーナスって……。
という俺の困惑に気付いて、マロニーさんが説明をしてくれた。
「ポンコツ達が作った転移転生機の初期不良事件を経てからな、機能改善後の転移転生者には、名前の先頭に星マークを付けてるんだ。つまり星無しは例の極悪転生者って事さ」
「え? 俺はてっきり、コイツがマロニーさんの目と手を潰した弟さんかと……」
思わず漏れた呟き。
しかしマロニーさんはそれを聞き逃さなかったようだ。
「ミトラは──弟はキッチリ殺した。生き返る事も転生する事も無い。心配すんな」
弟の名前はミトラっていうのか。
しかしその情報を吟味する間も無く、マロニーさんは俺の手に何かを押し付けてきた。
見るとそこには慣れ親しんだ、陰陽道に使う呪符が数枚。
俺はマロニーさんに再び顔を向けた。
「その呪符を中心部の地面に貼れば、結界が発生するんだろう? ちょうどココが中心だ、頼むぜ洋児くん」
「は? いやなんでマロニーさんが俺の呪符を!? っていうか結界張る外周にも呪符を貼らないと……」
「もう貼ってる」
「ええええ、いつの間に!?」
「さっきトイレを探している時に、ちょいちょいとな。まさか使う事になるとは思わなかったが」
あの時か!
やたらトイレの場所にこだわるから、何なんだと思ってたけれども。
しかも知らないうちに俺の呪符を持っていた事といい、油断も隙もねえなこのオッサン!
「吾輩の屋敷にそんな細工をしていたとは……。いや、この状況では今さら詮無き事か」
例の何ちゃらプラガットさんが文句を言っている。
うん、あなたの気持ちはよーく分かります。
……っとと、そんな悠長に考え事をしてる場合じゃないな。
俺は呪符を手に持ち、構えた。
「ったくアンタの事だから、どうせ呪符の配置もキッチリ出来てるんだろ? 見せてやるよ、ウチん家の呪符結界術を!!」
叫んで俺は、渡された呪符のうちの一枚を地面に叩きつける。
すぐに呪符に込められた力が広がり、マロニーさんが配置した外周の呪符が起動。
この屋敷の周囲を、薄く輝く光のドームが包み込んだ。
俺に、俺たちに、敵意を持つ者の呪力・魔力を減衰させて弱体化させる結界だ。
ついでに外部から援軍が来る事も、ここから逃げる事も出来なくなるんだぜ!
思った通り、キリヤも、不快そうな表情を浮かべた。
ざまあみろ。
「チッ、何だこりゃ。こんなチンケな術なんざ消し飛ばしてやるぜ!」
キリヤはそう叫ぶと、右手をグイっと上げた。
途端に引き連れた周囲の手下魔族が何人も苦しそうな顔になって、喉元を掻きむしる。
その時になって初めて俺は、ヤツの両手から伸びる大量の鎖に気がついた。
それが全部周りの魔族の首輪に繋がっている。
「止めろぉぉ!!」
黒澄さんが見た目に似合わない声で叫んだ。
よく見るとキリヤは御輿みたいなのの上に立っている。
その御輿を担いでいるのは……。
辛そうな表情の、たくさんの小さな子供の魔族。
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