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第四論:ホットスタートとは何か

 さて、前話で、


『ドーン!と激しい爆発音がした。爆風が僕の身体を持ち上げる。

 窓ガラスが全て吹き飛び、オレンジの炎が視界に広がった。』


『女は社畜であった。残業で疲れた脚を引きずりながら、缶酎ハイ片手に自宅へ戻ると、彼女の住む安アパートは爆裂四散していた。』


 のどちらかが小説の1文目にあったとして下の方が受けるのではないかという話をした。

 ちなみにTwitterでアンケートも取っており、約1:3の比率で下の方が好みと言う結果になっている。

 まず上は映像や音が無いから映像とは異なりインパクトが弱い旨は書いた。ではなぜ下の方が良いと言えるのか。


 これに関してはかつて私がとても悩んで意見を募ったことがあって、その私の悩みを言語化してくれた人がいるのだ。

 かつてわたしが書いた作品、


「『無能令嬢』ベアトリクス・ボーデンは溺愛される。」

https://ncode.syosetu.com/n7156gu/


 全10話で19000ptくらい。異世界恋愛ランキングで表紙(5位以内)に入ったくらいには読まれた中編作品である。

 あれ、実は「第5話:ミッドナイト」、アクションシーンのパートを最初にオープニングとして書いていたのだ。

 アクション系ホットスタートの意識である。

 もし良かったら5話だけ読んでみてくれ。まあオープニングとして書くと今投稿されているあれとは多少、文章が変わってしまうけど、そこがオープニングの小説はどうだろうか?


 好きだと言ってくれた人もいる。好きだが異世界恋愛らしくはないと言ってくれた人もいる。

 実はこれ、半年くらい悩んでいたのだが、それらの中で、私がなぜしっくりきていないかを言語化してくれたような素晴らしい意見をくれたのが「朝倉ぷらす」さんであり、それを以下に記そうと思う。


(略)

というのも、私が考える恋愛〔異世界〕でウケるオープニングって、「簡潔に物語の結末を匂わせることと、ヒロインとヒーローの性格や関係を明確化すること」のただ二つで、世界観とか、映像化したら映えそうなシーンとか、その辺は二の次だと思っているのです。

(略)

それだけでなく、結局のところ、ヒロインであるベアトリクスの本当の立ち位置がわからんのです。同時にブライアンもそうですよね。ですから、これが恋愛だとして、そこに身分差はあるのかないのか、その辺も分からんのですよね。

(略)


 である。

 これが異世界恋愛の、しいてはWEB小説全体におけるウケるオープニングつまりはホットスタートに必要な要件の本質を突いていると思う。


 それともう一つ。


「メリリース・スペンサーの苦難の日々」

https://ncode.syosetu.com/n4993fu/


 20000字で17000pt、日間異世界恋愛1位取った作品であるが、あれについてちょうど先日このような意見をいただいた。


 スペンサー老のアレは1話から話が強かったですものねぇ。

 状況説明よりは感情移入の要素が強いというか。


 これらを纏めると、


・簡潔に物語の結末を匂わせる。

・ヒロインとヒーローの関係性を明確化する。

・ヒロインの立ち位置を明確化する。

・状況説明より感情移入させる。


 まあ、朝倉ぷらすさんの意見に関しては中編で異世界恋愛、女主人公というのがわかった上での意見なので、そこを無くして書けば、


・物語の方向性を示す。

・主人公の立ち位置を明確化する。

・主人公に感情移入させる。


 が求められることだろう。

 ヒロインとヒーローについては正直ストーリーやジャンルにもよる。恋愛対象なのかハーレムメンバーなのかは作品によって異なるだろうが、これを登場させるなら早めに出した上でその関係性を早く明確化した方が分かりやすいのは間違いないが必須ではない。

 ただ、恋愛主軸で恋愛対象の登場が遅れる場合、どういった相手になるかはタイトルまたはあらすじに記載すべきであろう。


 この辺りを1話である必要性は無いにしても可能な限り早く成立させるのがホットスタートである。



 つまり話を戻すが、


『女は社畜であった。残業で疲れた脚を引きずりながら、缶酎ハイ片手に自宅へ戻ると、彼女の住む安アパートは爆裂四散していた。』


 こちらの方が良い理由。

 主人公の立ち位置が明確で、感情移入し易いからである。またこの先の話の方向性もなんとなく期待できる方向性があると言うことである。


『ドーン!と激しい爆発音がした。爆風が僕の身体を持ち上げる。

 窓ガラスが全て吹き飛び、オレンジの炎が視界に広がった。』


 それに対してこちらには一切その情報が含まれていないと言うことになる。

 無論、こちらにそれら情報を付け加えることは可能である。

 ただし、その分だけ文章が伸びることを意識せよ。


 アクションシーンは文字数を喰う。この2文章はどちらも同じ60文字程度であるが、その60字使ってアクションを描いたのに対し、もう一方は『爆裂四散』というたった4文字でそこを表現し終えているアドバンテージを無視してはならない。


 バトルも同様。

 バトルで始めていけない訳では無い。ただ、主人公とそのバトルの相手がどういった関係性で、主人公がどういう立ち位置にあり、その先の物語の展開を読者が期待・想像でき、主人公に感情移入できるようなバトルにせねばならない。


 故に開幕バトルやアクションでのホットスタートというのはホットスタートの中でもかなり難度の高い部類になると言える。


 という訳で私の思うホットスタートとは、


・あなたの想定読者層に刺さる。

・物語の方向性を示す。

・主人公の立ち位置を明確化する。

・主人公に感情移入させる。


 この辺りが結論となる。

 ちなみに感情移入のパターンはいくつかあり、主人公に共感を覚えるか、主人公のつもりで楽しみたい、主人公を応援したくなるなどが上げられる。

 ドアマットヒロイン、いわゆる不遇な主人公というのも、実は幸せになるという方向性が強く示されており、さらに応援したくなるという意味で感情移入し易いと言える。

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― 新着の感想 ―
[良い点] すとんときました!すごい!為になります! 感覚的に「女は社畜であった。残業~」かな?わかりやすい?ぐらいだったのですが、言われてみると確かに。すごいしか言えませんが、文章にしてくれてありが…
[一言] 感情移入させる、感情移入できる、その魅力がキャラにあるか、作品にあるか、考えさせられました。
[良い点] さすが朝倉さん! 感想すらも深い! ホットスタート四要件! なるほど! 分かった気がします!
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